金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

翻訳全般

生成AI辞書:Consult a Dictionary

生成AI形式の辞書(説明に使われる用語は検証された辞書の範囲内)ができると爆発的に売れるかも。対話型で引けるから。 すでに電子辞書があるんだから、出版社はその気になったらAI辞書つくれますよね。そうなったら今後は辞書は「引くもの」ではなく、「相…

重い『ケインズ』(写経は大変)

村井章子さん訳のケインズの伝記『ジョン・メイナード・ケインズ 1883-1946(上)(下)経済学者、思想家、ステーツマン』の原著、John Maynard Keynes 1883-1946: Economist, Philosopher, Statesmanの原文と訳文の手書き写し(「写経」に取り組み始めて1カ…

『ジョン・メイナード・ケインズ 1883-1946』の"写経”を始める。

『ジョン・メイナード・ケインズ 1883-1946(上)経済学者、思想家、ステーツマン』ロバート・スキデルスキー (著), 村井章子 (翻訳)(日経BP 日本経済新聞出版) の原著と訳書の手書き写し(いわゆる”写経”)を本日から始めました。 本は買ってあったのです…

某社「翻訳グランプリ」広告のうさん臭さ

詐欺と明らかにわかる翻訳講座って時たま話題になるじゃないですか。あれは詐欺が明白なのでみんな気軽に叩くんですけど、ザっと見た限りでは、この広告で明らかになった待遇の悪さを指摘する声はあっても、その姿勢を非難する投稿は見当たらない。 だけど僕…

「フリーランスの実務翻訳者を目指せ」なんて無責任に言ってはいけない(2023年7月7日)

ChatGPTの登場によって、そもそも「翻訳者の仕事は何か?」の定義さえ曖昧になっている今の時代に、まだ翻訳者でない人たちに向かって「あなたも実務翻訳者になれる」とか「フリーランスの翻訳者を目指そう」といった誘いをかけるのは無責任だ。 思い出すの…

「ChatGPT(チャットGPT)」は英語教育をどう変えるのか?、という記事を読んで(2)(2023年6月11日)

今日の朝日新聞、「英語教育、チャットGPTで変わる? 誰もが英語“使える”ツール登場――専門家に聞く」という記事に、京都大学の金丸敏幸・京都大学准教授のインタビュー記事が載っていた。 英語教育、チャットGPTで変わる? 誰もが英語“使える”ツール登…

チャットGPTの登場で英語の相対的優位性が一気に高まる/The Emergence of ChatGPT: A Surge in the Relative Superiority of English(6/4/2023)

生成AIの登場で英語の相対的優位性が加速度的に高まり、日本語がますます不利になる時代に突入したのかも。 チャットGPTが出たことで翻訳者(通訳者)不要論が出ています。 そういう面も確かにあるのですが、今後は、たとえばこれまではせっかく日本語で立派…

英語ができなくても、自分の言いたいことを正確に英語で表現する方法

英語をあまり書けない人が、自分の意図をなるべく正確に伝える見事な英語を書く一方法。1.日本語でしっかりした文章を書く。2.チャットGTPに英語に訳させる。3.その英語をチャットGPTに日本語に訳させる。4.あとは、3.の日本語が1に近づくまで2…

化けるか、しぼむか?「グローバルサウス」

記念すべき連載第20回のお題は、「グローバルサウス」。最近よく見聞きするけれども、あれ、なんだったっけ?という方も多いかも。 先進国の民主主義勢力、中ロを中心とする権威主義勢力に伍する中立国勢力としての地位を築けるのか、それとも超大国間の政治…

チャットGPTを(産業)翻訳にどう生かすか?

直接訳させて批判的に検討するという考え方を僕は否定しないが、自分の英語力が落ちていくことは間違いない。今後翻訳者として仕事を続けていく中で、今言った意味での「英語力が落ちていく」ことがプラスかマイナスかはわからないが、少なくとも僕はそうな…

「ビジネス法令、AIで英訳加速」(2023年3月27日付日本経済新聞)の記事を読んで

本日(2023年3月27日)の日本経済新聞に次のような記事が載った。 (以下引用)法務省は2023年度から人工知能(AI)による法令の自動英訳を始める。ビジネス関連の法律や政省令を中心に従来の4倍となる年間320本の翻訳をめざす。海外企業が日本で投資や事業…

1本の記事の「ポストエディット」(機械翻訳の結果を用いた翻訳)を経験して思ったこと(2023年3月10日)

今回必要があって(また興味もあったので、自ら申し出て)複数の機械翻訳のお試し版を使いながら1本の記事(雑誌4ページ分程度)を訳しみた。その結果、今後もしこういう作業、つまり「ポストエディット」が仕事の中心になっていくと、おそらく自分の英語力…

機械翻訳が容易な文章、難しい文章

翻訳者と校閲者が随時入れ替わるプロジェクトに参加して6年目になる。 翻訳者と校閲者の間で「どうして著者はこの表現を使ったのか?」「これは市場のどの動きを説明しているのか?」「なぜこのロジックになるのか?」というやり取りが毎月行われる。その上…

機械翻訳(英和翻訳)のレベル(2023年3月8日時点での肌感覚)(2023年3月8日)

語彙力は英検1級クラスで、英検準1級レベルの構文把握力があり、 やや稚拙ながらそこそこ読める(=日本人の読者には理解できる程度の)日本語を書けるものの、 訳抜けも散見され、 そして、何といっても 書かれている原文の意味(含む文脈)をまったく分か…

「串刺し検索」はもはや死語?(2014年3月8日)

昨日の飲み会で、英和は研究社と三省堂とアルク(英辞郎)で有料サービス受けていると話し、内容を説明したら、「鈴木さん、それって串刺し検索をオンラインでやっているのと同じだと思う」と言われた。 確かに専門辞書は紙なのですが、「もうそれ(有料オン…

一つの文書を複数の機械翻訳ソフトに英和翻訳させてみた(あくまでも個人的な感想です)

ちょっと関心があって同じ文書(新聞記事)を実験的に四つの機械翻訳に訳させている(英語の記事の日本語への翻訳:パラグラフ単位)。現段階で、いずれもお試し版をつかってでの個人的感想です(2023年3月2日時点)。 ①チャットGPTは数字を間違えることがあ…

「グリーンウォッシュとトム・ソーヤ」(「ビジネスに役立つ経済金融英語」連載18回)

ビジネスパーソン向け英語教育Q-Leap様「ビジネスに役立つ経済金融英語」連載18回は「グリーンウォッシュ(Greenwash)」事始めです。最近、マスコミ等で頻繁に報道されるようになった「グリーンウォッシュ」の周辺情報をまとめました。 副題は(最後までど…

「reskilling」は「学び直し」ではない

ここに来て「リスキリング」ということばがにわかに注目されているようです。 実は昨年3月にこの言葉について記事を書きました。どうも、今の日本語としての「リスキリング」の使われ方は、記事の最後に懸念したように、本来の意味から遠ざかっているようで…

「批判」はグッと我慢してまず受け入れたい。

書籍へのコメントに対する著者の反応に2種類ある。①「こいつは何もわかってない!」と切り捨てる人と、②「ありがとうございます」と謙虚に構える人だ。誰でも褒められたい。(著者・訳者である)僕だって持ち上げられたい。 そして、自分の成果物を批判され…

従来型の産業翻訳者の未来は風前の灯

客観的に言って、従来型の産業(実務)翻訳者の未来は危ういと思う。 皮肉なことに、ルールが厳しければ厳しいほど、扱う専門用語が多ければ多いほど、また多岐にわたればわたるほど、AIに取って代わられる可能性が高い。 職人て昔っから技術革新とのいたち…

自分の欠点を認めることはつらいが必要(2013年1月)

あるヘッジファンドのレポート。 「なんて分かりにくい英語なんだ!」=「なんてヒドい英語なんだ!」とズーッと思ってきたが、最近、問題は英語の方ではなく私の英語力の方にあるのではないかと気づき始めた。 くやしいがこれを認めないと進歩しない。 (後…

柴田クンと土屋クン(なんちゃって):両巨頭の違い(2018年1月)

柴田元幸先生は翻訳を手書きで行い、奥さんがワープロに清書しているのは有名な話。 さて。 ここから先は8日の飲み会で直接お聞きした話なので書いていいと思うのだが。ただ酔っ払っていたので不正確かもしれず、ご参考的メモということで(文章責任は私にあ…

ビジネスに役立つ経済金融英語 第11回 ーPandemicからEndemicへ |

皆さんもそろそろ宴会もコロナ前の水準に戻りつつあるでしょうか。今回は、意外と誤解されているEndemicについての記事を書きました(実はアメリカ人も誤解しているので要注意、という話です)。 Epidemic、Pandemicの違いとともに整理しておくよい機会かも…

「書き起こし原稿」と「翻訳」の違い(2022年5月)

その月のテーマを漠然と決めて材料を集めているうちに一つに絞れてくる。結論(というか仮説というか)らしき物がぼんやり見えたものをその月のテーマにする。そこからまずは書き始め、書いているうちに構想(というか結末までの流れ)が明確になっていき、…

「自分で調べる」(2013年4月)

先日の新田順也さんのマクロセミナーで印象に残った言葉の一つは 「自分で調べてみなさい」だった。 確か別のマイクロソフトMVPの方の言葉を紹介されたのだった。講義中に質問を受けるとそのMVPの方は直接答えずに「ご自分で調べて下さい」と言ったという…

DeepLのハイブリッド利用法

クルーグマン氏のエッセイを英語で読んでいくとところどころ分からないところがある。その原因は主に僕の英語力にある。そして、クルーグマン氏ぐらいの書き手になると、皮肉や諧謔をかましてきてそれについて行けないところが良く出てくる(こちらも要する…

ビジネスに役立つ経済金融英語 第9回:Reskilling

ビジネス英語教育界をリードするQ-Leap様連載の9回目。 ここに来てググッとバズワード化した言葉のご紹介です。 Reskilling. この手の言葉や考え方は英米から2~3年後れぐらいで、今後もっと広がる可能性もありますが、日経新聞がつけた日本語の訳語(また…

訳文を暗記する②(使える表現と、使いづらい表現)

翻訳書の中から「参考になりそうだな」と思った訳文を、原文と一緒にメモして残している翻訳者の皆さんは多いと思う。 その作業自体には意味がある。しかしそれをノートにして残しておいても、意外と役に立たないのではないか、というのが僕の実感である。 …

著書と訳書

これまで訳書を18冊、著書を1冊経験しただけですが、その差を一言で言えば: 訳書は「地道に積み上げていくもの」 著書は「産みの苦しみの後は一気に動かすもの」 という感じでしょうか。 『金融英語の基礎と応用』は、それまで地道に積み上げていたものをど…

飜訳会社はまず、自社をきちんとプレゼンせよ

先日ある翻訳会社からアプローチがあって、トライアルに時間を費やしている時間はないと答えたら「登録します」と。ついては、希望単価と職務履歴書を送ってもらえませんかと来た。 こういうことは初めてではないので、「職務履歴書を送るのはやぶさかではな…