金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

翻訳全般

1本の記事の「ポストエディット」(機械翻訳の結果を用いた翻訳)を経験して思ったこと(2023年3月10日)

今回必要があって(また興味もあったので、自ら申し出て)複数の機械翻訳のお試し版を使いながら1本の記事(雑誌4ページ分程度)を訳しみた。その結果、今後もしこういう作業、つまり「ポストエディット」が仕事の中心になっていくと、おそらく自分の英語力…

機械翻訳が容易な文章、難しい文章

翻訳者と校閲者が随時入れ替わるプロジェクトに参加して6年目になる。 翻訳者と校閲者の間で「どうして著者はこの表現を使ったのか?」「これは市場のどの動きを説明しているのか?」「なぜこのロジックになるのか?」というやり取りが毎月行われる。その上…

機械翻訳が容易な文章、難しい文章

翻訳者と校閲者が随時入れ替わるプロジェクトに参加して6年目になる。 翻訳者と校閲者の間で「どうして著者はこの表現を使ったのか?」「これは市場のどの動きを説明しているのか?」「なぜこのロジックになるのか?」というやり取りが毎月行われる。その上…

機械翻訳(英和翻訳)のレベル(2023年3月8日時点での肌感覚)

語彙力は英検1級クラスで、英検準1級レベルの構文把握力があり、 やや稚拙ながらそこそこ読める(=日本人の読者には理解できる程度の)日本語を書けるものの、 訳抜けも散見され、 そして、何といっても 書かれている原文の意味(含む文脈)をまったく分か…

「串刺し検索」はもはや死語?(2014年3月8日)

昨日の飲み会で、英和は研究社と三省堂とアルク(英辞郎)で有料サービス受けていると話し、内容を説明したら、「鈴木さん、それって串刺し検索をオンラインでやっているのと同じだと思う」と言われた。 確かに専門辞書は紙なのですが、「もうそれ(有料オン…

一つの文書を複数の機械翻訳ソフトに英和翻訳させてみた(あくまでも個人的な感想です)

ちょっと関心があって同じ文書(新聞記事)を実験的に四つの機械翻訳に訳させている(英語の記事の日本語への翻訳:パラグラフ単位)。現段階で、いずれもお試し版をつかってでの個人的感想です(2023年3月2日時点)。 ①チャットGPTは数字を間違えることがあ…

「グリーンウォッシュとトム・ソーヤ」(「ビジネスに役立つ経済金融英語」連載18回)

ビジネスパーソン向け英語教育Q-Leap様「ビジネスに役立つ経済金融英語」連載18回は「グリーンウォッシュ(Greenwash)」事始めです。最近、マスコミ等で頻繁に報道されるようになった「グリーンウォッシュ」の周辺情報をまとめました。 副題は(最後までど…

「reskilling」は「学び直し」ではない

ここに来て「リスキリング」ということばがにわかに注目されているようです。 実は昨年3月にこの言葉について記事を書きました。どうも、今の日本語としての「リスキリング」の使われ方は、記事の最後に懸念したように、本来の意味から遠ざかっているようで…

「批判」はグッと我慢してまず受け入れたい。

書籍へのコメントに対する著者の反応に2種類ある。①「こいつは何もわかってない!」と切り捨てる人と、②「ありがとうございます」と謙虚に構える人だ。誰でも褒められたい。(著者・訳者である)僕だって持ち上げられたい。 そして、自分の成果物を批判され…

従来型の産業翻訳者の未来は風前の灯

客観的に言って、従来型の産業(実務)翻訳者の未来は危ういと思う。 皮肉なことに、ルールが厳しければ厳しいほど、扱う専門用語が多ければ多いほど、また多岐にわたればわたるほど、AIに取って代わられる可能性が高い。 職人て昔っから技術革新とのいたち…

自分の欠点を認めることはつらいが必要(2013年1月)

あるヘッジファンドのレポート。 「なんて分かりにくい英語なんだ!」=「なんてヒドい英語なんだ!」とズーッと思ってきたが、最近、問題は英語の方ではなく私の英語力の方にあるのではないかと気づき始めた。 くやしいがこれを認めないと進歩しない。 (後…

柴田クンと土屋クン(なんちゃって):両巨頭の違い(2018年1月)

柴田元幸先生は翻訳を手書きで行い、奥さんがワープロに清書しているのは有名な話。 さて。 ここから先は8日の飲み会で直接お聞きした話なので書いていいと思うのだが。ただ酔っ払っていたので不正確かもしれず、ご参考的メモということで(文章責任は私にあ…

ビジネスに役立つ経済金融英語 第11回 ーPandemicからEndemicへ |

皆さんもそろそろ宴会もコロナ前の水準に戻りつつあるでしょうか。今回は、意外と誤解されているEndemicについての記事を書きました(実はアメリカ人も誤解しているので要注意、という話です)。 Epidemic、Pandemicの違いとともに整理しておくよい機会かも…

「書き起こし原稿」と「翻訳」の違い(2022年5月)

その月のテーマを漠然と決めて材料を集めているうちに一つに絞れてくる。結論(というか仮説というか)らしき物がぼんやり見えたものをその月のテーマにする。そこからまずは書き始め、書いているうちに構想(というか結末までの流れ)が明確になっていき、…

「自分で調べる」(2013年4月)

先日の新田順也さんのマクロセミナーで印象に残った言葉の一つは 「自分で調べてみなさい」だった。 確か別のマイクロソフトMVPの方の言葉を紹介されたのだった。講義中に質問を受けるとそのMVPの方は直接答えずに「ご自分で調べて下さい」と言ったという…

DeepLのハイブリッド利用法

クルーグマン氏のエッセイを英語で読んでいくとところどころ分からないところがある。その原因は主に僕の英語力にある。そして、クルーグマン氏ぐらいの書き手になると、皮肉や諧謔をかましてきてそれについて行けないところが良く出てくる(こちらも要する…

ビジネスに役立つ経済金融英語 第9回:Reskilling

ビジネス英語教育界をリードするQ-Leap様連載の9回目。 ここに来てググッとバズワード化した言葉のご紹介です。 Reskilling. この手の言葉や考え方は英米から2~3年後れぐらいで、今後もっと広がる可能性もありますが、日経新聞がつけた日本語の訳語(また…

訳文を暗記する②(使える表現と、使いづらい表現)

翻訳書の中から「参考になりそうだな」と思った訳文を、原文と一緒にメモして残している翻訳者の皆さんは多いと思う。 その作業自体には意味がある。しかしそれをノートにして残しておいても、意外と役に立たないのではないか、というのが僕の実感である。 …

著書と訳書

これまで訳書を18冊、著書を1冊経験しただけですが、その差を一言で言えば: 訳書は「地道に積み上げていくもの」 著書は「産みの苦しみの後は一気に動かすもの」 という感じでしょうか。 『金融英語の基礎と応用』は、それまで地道に積み上げていたものをど…

飜訳会社はまず、自社をきちんとプレゼンせよ

先日ある翻訳会社からアプローチがあって、トライアルに時間を費やしている時間はないと答えたら「登録します」と。ついては、希望単価と職務履歴書を送ってもらえませんかと来た。 こういうことは初めてではないので、「職務履歴書を送るのはやぶさかではな…

「過去訳を参照?」

他の方の翻訳を拝見していて「過去訳を参照しました」という申し送り事項をみることがあるが、過去訳に対する評価をしないでただなぞるのは無責任だと思う。

「1語で落とす」(2013年11月)

どこの業界にでもある話だとは思うんですけど・・・・どんな辞書にでも載っている簡単な単語どの業界でも、一般的にも普通に使われる普通名詞 なのになぜか金融業界では「ある言い方」でしか使われない用語がある。根拠はわからない。きっと誰かが、「そうい…

AIに奪われやすい分野

20年前の辞書と文例集で仕事が進む翻訳分野ほどAIに奪われやすい(具体的根拠なし。直感です)。

アメリカ人が英語で描いた日本料理店に置いてある日本酒の bottleをどう訳す?

同業者の方には改めて説明するまでもないことですが。 (A)アメリカ人が生まれて初めて日本料理屋に入って酒を飲み、徳利をLiquor bottleと英語で表現し、それを日本語に訳す場合、 (B)日本料理店にある程度慣れたアメリカ人が日本料理屋に入って酒を飲み…

『通訳翻訳ジャーナル 2022年冬号』(イカロス出版)

テーマは「産業翻訳で求められる日本語力とは?」 でも、別に金融翻訳で求められる特別な日本語力があるとも思えないし、もしあるとすればそれはかなり特殊な業界用語や言い回しになってしまうもので、それは仕事の中で覚えておけばよいと考えます。そこでも…

本当に大事な記事は紙で残せ

僕は必要があって購読紙/誌誌を検索して記事を探すことがあるのですが、見つからないことが結構ある。「スクラップブックに残るような記事」を目指しているという日本経済新聞ですらそうだ。恐らく何らかの事情で記事が削除されているのだろう。それは仕方…

「お砂糖使いますか?」

出会った言葉:「砂糖をお使いになりますか」という表現にも慣れることができない。砂糖は道具でも召使いでもない。コーヒーの中に入れる以外は使い道がないのに、わざわざ「使う」と言って、他の使い方のある可能性を確保しているところがおかしい。 (多和…

実務翻訳と書籍翻訳では時間の流れ方が違う。

書籍の翻訳って、期間には追われるけど時間には追われないので、実務から書籍に切り替える時って、時間の流れ方を変えないとできない。そこにちょいと時間がかかる。

今年何日休んだっけ?

2日ほど前にふと思うところがあって、 あれ?俺何カ月休んでないだろう?と一瞬思ったが、考えるのやめた。 とツイッターとフェイスブック(お友だち限り)に書き込んだところ、お友だちのお一人から、 「じっくり考えるべきじゃない?」 とのコメントをいた…

「産業翻訳イントロダクション」(上智大学文学部英文学科 2021年春の講義)を公開します。

本日より、上智大学で私の行った授業(Youtube)を次の要領で公開いたします。 科目名 上智大学文学部 英文学科Translation Theory 1 (輪講)(2~4年生が対象のオンデマンド授業) 開講学期 2021年度春学期 6月10日(木)講義分の授業動画(96分) 担当教…