金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

一つの文書を複数の機械翻訳ソフトに英和翻訳させてみた(あくまでも個人的な感想です)

ちょっと関心があって同じ文書(新聞記事)を実験的に四つの機械翻訳に訳させている(英語の記事の日本語への翻訳:パラグラフ単位)。現段階で、いずれもお試し版をつかってでの個人的感想です(2023年3月2日時点)。

①チャットGPTは数字を間違えることがあるがおおむね正しく英文をつかんでいる。ただ、情報検索をしている割には、訳語を検討できるまでの新しさ(実用性)には欠けるとの印象。

②DeepLは訳文の日本語がとても自然。ただし訳抜けが多いという印象。おそらく訳文の自然さを優先させるつくりになっているんのだろうが、できあがりの日本語があまりに自然なために訳抜けや誤訳に気づかないリスクが高いと思う。

Google翻訳は英文解釈的で訳抜けはないが、文章の構造そのものの把握を間違える頻度が高いような気がする。

④四つの機械翻訳の中で相対的に最も高い翻訳力があるという印象を抱いたのは「みらい翻訳」ではないかな。かなり使えるという印象。

いずれも、今の機械翻訳は「ポスト・エディット」をする前提では使えると思う。ただし、使う側に成否を判断できる程度の英語力と日本語力が必要だと思った。ではどの程度の英語読解力(日本語表現力)か。それはやはり独力で翻訳できる程度、ということではないだろうか。

あまり英語力(および)日本語力のない人が機械翻訳された日本語を読むと、現段階のレベルでは日本語に引っ張られて誤読/誤訳する可能性がある。この意味で翻訳された日本語に誤訳が含まれる確率が最も高くなるのは②(DeepL)だと思う。

③(Google翻訳)は「明らかな間違い」をしてくれるのでかえってチェックに使えるとの印象を抱いた。

もう一つ思ったのは、機械翻訳は使い方次第では自分以外の目による翻訳者として機能し得る、という点である。それぞれの翻訳者(機械翻訳)の癖を把握しておけば、自分の英語の誤読を矯正できるツールにはなり得るということ。機械翻訳に明らかな間違いが見つかれば、それはその部分に関しては自分の解釈が正しかったことを確かめられるしね。

以上のことはすべての種類の文書に当てはめるのかどうかはわからない。ただし発注者の側からすれば、機械翻訳をうまく使えば翻訳スピードの向上とコスト削減には使えるはずだという印象である。これは裏を返せば、今の翻訳者は自分の役割と立ち位置をよくよく見直さないとお先真っ暗。それを見極めて機械翻訳の全く使えない分野に活路をもとめるか、機械翻訳をうまく使うことによって自分の付加価値を高められる可能性はあるなと思った。