金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「ChatGPT(チャットGPT)」は英語教育をどう変えるのか?、という記事を読んで(2)(2023年6月11日)

今日の朝日新聞、「英語教育、チャットGPTで変わる? 誰もが英語“使える”ツール登場――専門家に聞く」という記事に、京都大学の金丸敏幸・京都大学准教授のインタビュー記事が載っていた。

英語教育、チャットGPTで変わる? 誰もが英語“使える”ツール登場――専門家に聞く:朝日新聞デジタル

金丸先生は、6月6日付日本経済新聞に「生成AI、英語学習に見直し迫る 柔軟な教え方が重要に」という論考を書かれていた方。

生成AI、英語学習に見直し迫る 柔軟な教え方が重要に - 日本経済新聞

チャットGPTをはじめとする生成AIは加速度的進歩が進行中で、数カ月後には僕らの見えている景色が大きく変わっている可能性もあるのだが、とりあえず今の時点で僕が知っていることをベースに感想を思いつくままに書いておく。

(1)「英語力」とひとくくりに語ることに無理があるのではないか。
金丸先生は、チャットGPTの登場によって、教科としての英語にかける時間を他に振り向けることが可能になると述べておられる。今の日本における英語教育の時間数が多いか少ないかと言う問題を横に置くと(これは「ChatGPT(チャットGPT)」は英語教育をどう変えるのか?、という記事を読んで(1)」でも示唆した)、もはや「英語力」と全体を語ってはおれないのではないかという気がする。

(2)今後必要な「英語力」とは何か
これまで僕がチャットGPTの無償版を使って感じた経験を基に素直な感想を述べるならば、英語の「読む、聴く、話す、書く」能力のうち、今後は①英語を読んでその場で理解するという意味での「読解力」と②「聴解力」、③「会話力」を伸ばす教育が必要になると思う。

(3)チャットGPTにしっかりした英語を書かせるための「作文(国語)力」
同時に、「日本語を④読み⑤書き⑥話す能力」(=一般に「国語力」と呼ばれている能力。ただし文学鑑賞力は除く)が重要になると思う。なかでも、自分の主張したいことを日本語で主張できる作文力の重要性が高まるのではないか?しっかりとした日本語の主張、手紙、論文が書ければ、それをチャットGPTで英語にして確認すればよい。

(4)「つなぎ」はチャットGPTに任せた方がはるかに効率性が高い。
その一方で、⑦①で理解した英語の文章を日本語で書く、⑧自分で主張したい日本語を英語に訳す作業はチャットGPTに任せる方が効率がよい。ただし、現段階では(この状況が変わるかもしれないのだが)、⑦で出来上がった日本語、⑧で出来上がった英語が原文(または自分)を評価し、それぞれが原文(または自分の)主張通りかどうかを確認する必要があるので、①と④と⑤の能力は一段と高めておく必要がある。

ChatGPTで英文をつくってわかったこと。 - 金融翻訳者の日記

(5)直接のコミュニケーションに役立つ会話力
②と③と⑥は、今後はオンライン等で外国人と直接コミュニケーションを取る必要がどんどん増えるはずなのでやはり必要だと思う。

以上が先日の日経新聞と本日の朝日新聞を読んで感じた感想である。それにしても、これを語っている金丸先生の勤務先である京都大学の入試問題が、現在も(内容に変化があるとはいえ)明治以来の伝統の「英文解釈」(英語を与えて日本語訳を書かせる)と「英作文」(日本語を与えて英語を書かせる)だけである、というのは、一種の皮肉なのだろうかとも思いました。 

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