金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

出版翻訳

著書と訳書

これまで訳書を18冊、著書を1冊経験しただけですが、その差を一言で言えば: 訳書は「地道に積み上げていくもの」 著書は「産みの苦しみの後は一気に動かすもの」 という感じでしょうか。 『金融英語の基礎と応用』は、それまで地道に積み上げていたものをど…

アメリカ人が英語で描いた日本料理店に置いてある日本酒の bottleをどう訳す?

同業者の方には改めて説明するまでもないことですが。 (A)アメリカ人が生まれて初めて日本料理屋に入って酒を飲み、徳利をLiquor bottleと英語で表現し、それを日本語に訳す場合、 (B)日本料理店にある程度慣れたアメリカ人が日本料理屋に入って酒を飲み…

「まずは図書館」で十分

「自分は出版書籍を手がけているのだから図書館で借りるのではなく書店で買う」という話を聞いて以前はなるほどと思い、そうしていた時期もあるのだが、ここ5年くらいで考えが変わった。 自分が気になる本があるとまず図書館で借りて読み、面白いと返却して…

ゼロから作り出す苦しみ

「少なくとも10個ぐらいは『これは発明だ』と思えるアイデアがないと、1本の映画にならないんですよ」 新海誠さん(My Story 2019年11月10日付日本経済新聞より) 「これは発明だ」とおっしゃった言葉の意味がほんの少し分かるような気がするのは、『金融英…

ノンフィクションの読者は、翻訳か否かを区別するのか

文学の場合には日本文学か翻訳かを分けて考えるのは理解できる。でもノンフィクションの場合に、読者はわざわざ翻訳書か否かを区別して読み、選ぶのだろうか?「ノンフィクションの翻訳書で今年はどれがよかったですか?」というアンケートが来る毎年この時…

「産みの苦しみー著書と訳書の違い(2015年10月)

昨日は朝からぶっ続けで書籍(予定通り11月に出ます)の2校ゲラの修正。昨日が締め切りで出版社からは受け取りに払いの宅配便の送り状をもらっていたのだが、腰を据えて取り組める最後の日が昨日だったので初校に引き続き昨日も自分で持っていくことに。2校…

実務翻訳と書籍翻訳では時間の流れ方が違う。

書籍の翻訳って、期間には追われるけど時間には追われないので、実務から書籍に切り替える時って、時間の流れ方を変えないとできない。そこにちょいと時間がかかる。

僕が喰えた理由

(何回ぐらい見直しますか?という質問に対して)「5、6回ぐらいかなあ。英語と日本語を付き合わせながら見直して行かないと原文から離れてしまう。しかしそうすると文脈、というかパラグラフの視点がなくなってくる。日本語だけで見直すとその点が是正され…

良い本がつくれれば売れなくても満足かー出版翻訳者のジレンマ

出会った言葉:私は売るために本を作っていない。一人でも多くの人に読んで欲しいという思いでつくっています。1万部よりも100万部の方が価値が高いという倒錯した価値観は間違っていると思います。(「時空を超えて言論を育む 藤原書店社主 藤原良雄さん(71…

下訳について②

「下訳使うなんて信じられない」 (柴田元幸著『僕は翻訳についてこう考えています 柴田元幸の意見100』アルク社、p130) これは結構有名な発言で、その後に「何で他人に自分に代わって遊んでもらわなきゃいけないのか」と続く。村上春樹さんも同じだと。こ…

「一に給料、二に配偶者、三、四がなくて五に資産」>翻訳ストレッチの教材から

おはようございます。 出会った言葉: 翻訳というのはとても根気のいる仕事だ。時間も手間もかかる。集中力も必要だ。そして特殊な場合を除いて、それほど多くの収入が見込めるわけでもない。あくまで裏方の手仕事なので、脚光を浴びるような機会も希だ。言…

『金融英語の基礎と応用』の目次のアイデアは確かに降臨した

出会った言葉: 「着想は長い夜に差し込む一条の光にすぎないが、この光こそがすべてである」ボアンカレ(『良き社会のための経済学』p87) 「メッセージを見つけるには、『考え抜く』しかない。すると、ある時啓示がある」(『超文章法』野口悠紀雄著p31)…

リーディング:レポートではなく口頭試問で出版決定

昨日は某社でこれから訳す書籍の打ち合わせ。リーディングを始めたものの他社の入札が入ったので急遽編集長との「口頭試問」(本の感想を編集長の前で述べ、質問に答える)で決まった案件だ。考えてみると入札で勝ち取った案件を手がけるのも、出版前の書籍…

「リーディング」について

*久しぶりにリーディングをやっています。「翻訳することになったら翻訳者。翻訳しないことになったら2万円。期間は2週間」が当初のオファーでしたが、原書が300ページを超え、しかもコピペもマークもできない出版前PDF。「2週間は無理です」とまず答えた。…

緊張 vs リラックス(2018年12月)

実務翻訳は色々な意味で、まずは「緊張」の要素が強いのだけれど、書籍翻訳は、緊張よりも「リラックス」が先にないとうまくいかない気がする。

出版翻訳雑感

ここ3日ほど、書籍中心の生活を送ってきた(要するに、実務翻訳が暇だったということです)。毎日5~6時間やっていて、なるほどこのペースなら3カ月で1冊は行けるかなと思いました。ただ勝手知ったる(調べ物は確認が多い。調べるポイントも分かっている)実…

コツコツ訳す

「こんなにぶ厚い本(『ティール組織』)どうやって訳したんすか?」 昨日の勉強会に来られたTさん(放送関係者)に献本するとこう尋ねられた。 「え~コツコツと訳しただけなんです」「・・・そうですよね~。コツコツ訳すしかないっすよねー」と感心された…

署名本の行く先

(以下引用)本にサインを求められたときは、表紙を開けると左側にあらわれる見返し(表紙の裏に貼ってある紙の続き)に署名する。 見返しは本文とは別の紙で、この一枚を切り取っても綴(と)じには影響しないから、著者から為書きを添えて謹呈された本でも…

翻訳者は裏方

昨日知り合いの経営者Kさんにある用向きがあって1年ぶりにメールし、その末尾に『ティール組織』を出したことを添えておいた。すると今朝返事が来て 「『ティール組織』を訳していたの鈴木さんだったのですか!人事組織関連では話題の書で当社でも何人もの役…

出版翻訳幻想その2 ー 出版翻訳の怖さ 

出版翻訳についてあと2点(経験者の方はよくご存知の話だと思います)。 1.今やっている仕事が金になるのは(訳し始めてから、僕の場合早くて)1年後。 1 月に出た『ティール組織』の初版分の印税が支払われたのが3 月。 ここだけ見ると「支払いサイトが2…

出版翻訳幻想その1 ー 出版翻訳の入り口 

「書籍の翻訳って5万ワードから10万ワード(ちなみに『ティール組織』は約13万5000ワード)をお一人に任せるので、どうしても経験者を優先せざるを得ないんです」と先日飲んだOさんは仰っていた。 だから現実問題として、出版翻訳経験ゼロの人がいきなり1…

出版翻訳の入り口(と下訳について)

「書籍の翻訳って5万ワードから10万ワード(ちなみに『ティール組織』は約14万ワード)をお一人に任せるので、どうしても経験者を優先せざるを得ないんです」と先日飲んだOさんは仰っていた。 だから現実問題として、出版翻訳経験ゼロの人がいきなり1冊を…

出版翻訳の孤独とお金(出版翻訳の入り口②)

出版翻訳についてあと2点(経験者の方はよくご存知の話だと思います)。 1.今やっている仕事が金になるのは(訳し始めてから、僕の場合早くて)1年後。 1 月に出た『ティール組織』の初版分の印税が支払われたのが3 月。 ここだけ見ると「支払いサイトが2…

編集者も翻訳者とおんなじ

出会った言葉:「時間がない」と感じるのはあなたの勘違い。まずは「忙しい」と言うのを完全に止めてしまおう。(『週40時間の自由をつくる 超時間術』メンタリストDaigo著 実務教育出版より) 『ティール組織』を僕に紹介してくれたOさんへのお礼食事会(実は…

出版社はどこまで本気で出版翻訳者を育てる気があるのか?

2018年3月10日付け日本経済新聞読書欄「活字の海で」27面は「非英語圏の翻訳者どう確保 コンクールで新人発掘も」は、視点は面白かったが新味がなかった。 タイトルから想像される内容だが、最後の段落だけ引用する。 (以下引用) こうした中、新たな動きも…

書店に置いてもらった本、置かれるようになった本(2018年1月)

以下は、つい2時間ほど前の、今晩の夕食時の会話である。 「ほい、これが見本。おじいちゃんの仏壇にお供えしよう」「わ~、スゴいわねーお父さん、表紙がきれいじゃない!」「だろ?」「しかもとても厚いのね・・・」「ま、まあな。なんたってお前、2年半だ…

翻訳業と「採算」(2017年12月)

実務翻訳の時は頭の中の3分の1ぐらいは採算を考えている。締め切りが比較的近い(長いものでも一カ月ぐらい)こともあって時間あたりWord数(と売上高)が常に頭の中に残っている。1カ月単位で売り上げも計算します。単価交渉もする。 しかし書籍は別だ。 最…

翻訳業と「採算」②(2017年12月)

思わず担当編集者にメールして印税率と初版部数を確認し、時給1000円を切る事実にめくるめく快感を覚え、「ヒットしてくれい!」と祈りすがる卑しいアタシ。

金子靖翻訳教室(2017年春の公開教室)のノートから

(以下引用)いつもそうですが、翻訳は基本が大事ですが、どういうわけか実際に翻訳の仕事をしている人たちの中にはそれが自分には間違いなくあると強く思い込んでしまっている上に、この講義でわれわれが膨大な時間を捧げて打ち込んでいるようなトレーニン…

本文の訳だけで643時間(2016年11月)

昨年10月から始めて6月末の予定が4カ月と1日延びて本文校了。643時間ですよ、643時間。 本が出るまで一銭にもならず、出たからと言ってヒットするとは限らない(ヒットしない可能性の方が高い)643時間。しかもまだ終わっていない。キツかったー。かなり難解…