金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

出版翻訳

『Q思考』はプロンプトエンジニアリングに関する最高の副読本だ!(1万5千部突破記念)

『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』5刷決定!!先ほど編集部からご連絡ありました。2016年に出た本が、コツコツ売れてきて累計で1万5000部突破しております。これはジワーッとうれしいです。生成AIブームで質問の重要性が大きく見直された結果な…

フリーダム・インク――「自由な組織」成功と失敗の本質(本日発売!)

『フリーダム・インク――「自由な組織」成功と失敗の本質』本日発売です。 経営者の仕事は、企業理念(自社は何のために存在するのか=パーパス)を明らかにし、それを社員に浸透させていく努力を重ねながら、徹底的に「自由な文化」を作り上げ、それを推進す…

時代は「ティール」&「フリーダム」へ!

本日の日本経済新聞に注目すべき記事を見つけた。 「権力格差」を壊せるか アサヒビールや宝島社の問う力 編集委員 中村直文 日本社会はこれまで強固な組織が自慢だったが、日本も今は社員一人ひとりの個を重視する時代に入ったという趣旨の記事です。 (以…

フリーダム・インク――「自由な組織」成功と失敗の本質(2024年1月24日発売)

来月発売です。 本書では、トップがパーパスを明確にした上で、経営においては社員の自由を何よりも重視する多くの組織が、経営者の人となりや人生経験とともに紹介されています。成功事例が大半ですが、失敗事例も紹介し、その理由も探求します。 その意味…

先生からのお墨付き(?)(2023年11月24日)

昨日は半年ぶりに金子靖(研究社編集部)先生主催の公開翻訳教室(補講=飲み会付き)に参加し、金子先生の熱意と学識に触れることができ大いに感動した。 どんなに有名になっても、生徒に「教える」のではなく、生徒の翻訳から学ぼうとされる謙虚な姿勢には…

「本1冊を3カ月で訳す」実体験

某書籍、本文と訳注で78,000ワードの一次訳が終了しました。ノンフィクションで、訳書としては22冊目になります。 編集担当者の方からは「多く見積もって9万ワード」とお聞きしていたので、「1日1000ワードで90日」を目標にしましたが、終わってみれば7月1…

翻訳業界の「やりがい搾取」

(1)日本経済新聞の特集「『やりがい搾取』を許さない」2023年2月20日(月)~24日(金)まで、日本経済新聞の最終面で、「『やりがい搾取』を許さない」という5回の特集が組まれた。概要は以下の通り。 ①文化芸術「やりがい搾取」続く 性被害告発、対策進…

柴田クンと土屋クン(なんちゃって):両巨頭の違い(2018年1月)

柴田元幸先生は翻訳を手書きで行い、奥さんがワープロに清書しているのは有名な話。 さて。 ここから先は8日の飲み会で直接お聞きした話なので書いていいと思うのだが。ただ酔っ払っていたので不正確かもしれず、ご参考的メモということで(文章責任は私にあ…

訳者、著者、そして(たぶん)編集者にできるはずの、ささやかなこと(2022年12月11日)

本日の読売新聞書評欄の件を僕に教えてくれたのはツイッターで私の書き込みをご覧になってくれていた方で、本書の関係者でこの書評の事を知っている人は今朝の午前6時過ぎ段階では誰もいなかった。 @tatsuyaakiko おはようございます。本日付読売新聞朝刊文…

『ベンチャーキャピタル全史』ができるまで

私は、ブログでは、「後になって振り返る」のではなく、「この先どうなるかわからないけれどもその時にどう思っていたか」のビビッド感を大切にしています。 『ベンチャーキャピタル全史』についても、リーディング(出版社が翻訳権を取りに行くかどうかを判…

高校の同期会で『ベンチャーキャピタル全史』をセールス

昨日は高校の同期会。22日に『ベンチャーキャピタル全史』が出たので、近況報告の時に宣伝してもよいかと幹事にお願いしたらどうぞどうぞと。 今週号の『週刊新潮』に出た堀内勉さんの書評(A4で1ページ)を出席者全員分コピーして持っていくと参加者用資料…

発売初日に1万4000歩(丸善丸の内本店に感激し、その勢いで書店3軒をはしごする)

昨日は『ベンチャーキャピタル全史』の発売日。 編集ご担当のKさんから、丸善の丸の内本店で書店での展開が始まったとうかがっていたので仕事を午前中に片付け、昨日午後に店頭を訪ねてみた。 お、写真で拝見した通りだ。大きく展開しているんだーと感激し、…

『ベンチャーキャピタル全史』トム・ニコラス (著), 鈴木 立哉 (翻訳)(新潮社)予約受付中

今日は、来月刊行予定の訳書をご紹介させていただきます。 『ベンチャーキャピタル全史』トム・ニコラス (著), 鈴木 立哉 (翻訳)(新潮社) 「ベンチャーキャピタル元年」と言われる今年、本書はこの手の歴史書としては本邦初のもので、ベンチャーキャピタル…

プロ中のプロから教えを受ける

9月に出る書籍の解説をお願いしたAさんから一昨日「解説」が届いた。その電文に 「訳文について、何か所か加筆修正を検討された方がいいのでは、という箇所があり、どこかで対面・オンラインでお話したい」 との一文があった。すぐがいいということになり、…

本1冊訳すのにかかった時間

書籍1冊8万4300ワード、本文、序文、付録、推薦文等々含めて本日すべて翻訳終了。所用時間:570時間。本書の場合、編集担当者とのやりとりはほぼ終わっているし、校正刷りのチェックもほとんどないはずなので、あと10時間もかからない(はず)。僕がこれまで…

「ドラマより地味にスゴい!!!S社校正部」

昨日11時半に地元のロイヤルホストでS社編集部のKさんとお会いし、初校刷りの修正をお渡しする。チェック期間は3週間。原注も含めると500ページを超えるので、1回目は先週に300ページまで。昨日が残り200ページを直接手渡し、レストランで1ページずつ確認…

訳者あとがき

「あ、それから」と打ち合わせの席で僕は言った。 「僕は『訳者あとがき』は書きません」「え」 「僕が仮に英文学の専門家で、専門に研究している分野あるいは作家の翻訳をしたのなら、『訳者あとがき』はありだと思います。いやむしろ入れるべきだと思いま…

訳者から上がってきた翻訳原稿

あるビジネス書の翻訳での話。同じ著者による同じテーマの本が何冊かすで出ていて、訳書を参考として渡されていた。訳語、言い回しともに大いに参考になったので、編集者と会話した時に、 「あれ、大いに助かってますよ。訳文も読みやすいし・・・」 と言っ…

アマゾンのレビューの”歪み”を直す方法

アマゾンのレビューに代表される、一般読者が投稿する書評では、少なくとも次が明らかになっていることが必要だと思う。 ①評者は自分でその本を買ったのか、著者または関係者から寄贈されたのか。あるいは寄贈され、かつ購入したか。②評者は著者の個人的な知…

「出版翻訳の現実ー日経で書評が出てもこんなもの」(2016年1月)

昨日S社から届いた拙訳書『〇〇〇』の販売印税明細書の一部印刷部数第1刷 5,000 (2014/04/00)第2刷 1,500(2014/07/00)第3刷 2,000(2015/03/00)合計 8,500出庫数 7,354実売数累計(2014/06/00) 4,120期間実売数 530 実売数累計(2015/12/00) 4,650在…

著書と訳書

これまで訳書を18冊、著書を1冊経験しただけですが、その差を一言で言えば: 訳書は「地道に積み上げていくもの」 著書は「産みの苦しみの後は一気に動かすもの」 という感じでしょうか。 『金融英語の基礎と応用』は、それまで地道に積み上げていたものをど…

アメリカ人が英語で描いた日本料理店に置いてある日本酒の bottleをどう訳す?

同業者の方には改めて説明するまでもないことですが。 (A)アメリカ人が生まれて初めて日本料理屋に入って酒を飲み、徳利をLiquor bottleと英語で表現し、それを日本語に訳す場合、 (B)日本料理店にある程度慣れたアメリカ人が日本料理屋に入って酒を飲み…

「まずは図書館」で十分

「自分は出版書籍を手がけているのだから図書館で借りるのではなく書店で買う」という話を聞いて以前はなるほどと思い、そうしていた時期もあるのだが、ここ5年くらいで考えが変わった。 自分が気になる本があるとまず図書館で借りて読み、面白いと返却して…

ゼロから作り出す苦しみ(2021年11月)

「少なくとも10個ぐらいは『これは発明だ』と思えるアイデアがないと、1本の映画にならないんですよ」 新海誠さん(My Story 2019年11月10日付日本経済新聞より) 「これは発明だ」とおっしゃった言葉の意味がほんの少し分かるような気がするのは、『金融英…

ノンフィクションの読者は、翻訳か否かを区別するのか

文学の場合には日本文学か翻訳かを分けて考えるのは理解できる。でもノンフィクションの場合に、読者はわざわざ翻訳書か否かを区別して読み、選ぶのだろうか?「ノンフィクションの翻訳書で今年はどれがよかったですか?」というアンケートが来る毎年この時…

「産みの苦しみー著書と訳書の違い(2015年10月)

昨日は朝からぶっ続けで書籍(予定通り11月に出ます)の2校ゲラの修正。昨日が締め切りで出版社からは受け取りに払いの宅配便の送り状をもらっていたのだが、腰を据えて取り組める最後の日が昨日だったので初校に引き続き昨日も自分で持っていくことに。2校…

実務翻訳と書籍翻訳では時間の流れ方が違う。

書籍の翻訳って、期間には追われるけど時間には追われないので、実務から書籍に切り替える時って、時間の流れ方を変えないとできない。そこにちょいと時間がかかる。

僕が喰えちゃった理由(2020年8月2日)

(何回ぐらい見直しますか?という質問に対して)「5、6回ぐらいかなあ。英語と日本語を付き合わせながら見直して行かないと原文から離れてしまう。しかしそうすると文脈、というかパラグラフの視点がなくなってくる。日本語だけで見直すとその点が是正され…

良い本がつくれれば売れなくても満足かー出版翻訳者のジレンマ

出会った言葉:私は売るために本を作っていない。一人でも多くの人に読んで欲しいという思いでつくっています。1万部よりも100万部の方が価値が高いという倒錯した価値観は間違っていると思います。(「時空を超えて言論を育む 藤原書店社主 藤原良雄さん(71…

下訳について②

「下訳使うなんて信じられない」 (柴田元幸著『僕は翻訳についてこう考えています 柴田元幸の意見100』アルク社、p130) これは結構有名な発言で、その後に「何で他人に自分に代わって遊んでもらわなきゃいけないのか」と続く。村上春樹さんも同じだと。こ…