金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

AI(機械)翻訳

言語変換は翻訳ではない——生成AIが可視化した構造的誤認(2026年1月20日)

翻訳は直訳ではなく、ましてや誤変換ではない——これは我々翻訳者にとっては常識である。ところが、この常識が、母語から外国語への翻訳においては十分に自覚されていないのではないか。そう思わざるを得ない出来事が、最近二つあった。 一つ目は、先日ある人…

Claudeは「文系女子」、ChatGPTは「理系男子」(その2) ――大量処理で見えてきた“危うさ”と付き合い方(2026年1月12日)

「ChatGPTは仕事を端折る。プロンプトでかなり入念に監査をさせているつもりでも無理なので、人間がかなり入念にチェックする必要がある。一方のClaudeは愚直なまでにプロンプトの指示に従おうとする。結果として形式主義に陥り融通が利かない傾向がある。ど…

翻訳AIに投資相談してみたら、性格の違いが如実に出た件(2026年1月6日)

いやはや参った。 翻訳チェックで使っていたClaudeに 「ちょっと一服。僕は配当重視の長期投資家です。A社とB社、君ならどちらを購入する?」 と尋ねたらさ、「お疲れさまです、一服ですね。ただ、申し訳ございませんが、私は投資助言を行う立場にありません…

Claudeには根拠のない捏造がない(2025年12月16日)

翻訳関連の仕事でClaudeを使用する限り、存在しない情報源の創作や、事実と異なる内容の捏造といったハルシネーションは確認されていない。翻訳上の判断ミスや訳語選択の誤りは発生するが、根拠のない情報を作り出すことはない。有料サービスを半年間利用し…

生成AIの「忖度」と「判断の妥当性」は分けて考える――ChatGPTとClaudeの翻訳議論から見えたこと( 2025年12月15日)

生成AIとやり取りをしていると、相手がこちらの意見に同意してきた瞬間に、ふと次のような疑念が浮かぶことがある。 「これは生成AIの私(利用者)に対する忖度ではないのか。信用してよいのだろうか?」 とりわけ、専門的な内容や判断を要する場面では、AI…

「生成AIで自分のブログ記事を『検索』できた」話( 2025年12月13日)

今朝、僕にとっては驚天動地(?)の発見よいうか、気づきがあった。 生成AIへのプロンプト: 一つ質問があります。(この「金融翻訳者の日記」のトップページを見せて)これは僕のブログ記事のトップページです。この僕のブログ記事の中を検索して、ある話…

Claudeは「文系女子」、ChatGPTは「理系男子」:これまでの付き合いで見えてきたそれぞれの性格( 2025年12月5日)

某社のホームページ英訳に生成AIを使って作業している中で、Claude と ChatGPT の「際立った特徴」がはっきり見えてきた。 Claude は国語に強いが数学・理科・社会に弱い、基礎力重視の、慎重でまじめな、でも少し融通が利かない「文系女子」。ChatGPT は数…

字面だけ見て文脈を忘れた―AI翻訳の根本的欠陥と教訓(Claudetとの対話から)( 2020年12月4日)

思わず笑った、本日の私とClaudeとのやりとり(ある和文英訳案件の表現につきChatGPTとClaudeでクロスチェックさせながら翻訳チェックに取り組んでいる) (Claudeによるある点について誤りを指摘した上で)(鈴木)「きみはまた形式主義に陥っていないか?…

ChatGPTの"ポカミス"とClaudeの"忖度"——翻訳AI(有料版)を2年半使って見えたこと(2025年11月19日)

主に翻訳および翻訳チェックを目的として、ChatGPTの有料版を約2年半、Claudeの有料版を半年ほど併用して使ってきた。そのうえで、現時点での私の印象をまとめると、以下の通りである。 (1)(おそらくハルシネーションに起因する)"ポカミス"は、ChatGPTの…

「TOEIC700レベルがNYTをしっかり読めるようになる勉強用プロンプト」(試作中未公開)をかなり「政治的なX投稿」に適用してみた(2025年11月16日)

今試作品を試験中の「TOEIC700レベルがNYTをしっかり読めるようになる勉強用_スキーマ定義(Web検索あり)」を次のXの投稿に当てはめた時の回答=この政治的なX投稿をTOEIC700レベル(=語学力)の、外国にいったことのない日本人中学生(=スキーマ)に読ま…

プロンプトは母語(日本語)の方がいい(?)( 2025年11月15日)

日本語で書かれていたプロンプトを修正する過程で、英語が混じっていたので質問したところ返ってきたチャットGPTの回答がこれ: 「あの部分を英語で残していたのは、AIモデル(生成系言語モデル)の構文理解層が日本語より英語命令の方を正確に実行するとい…

AIはどこで間違え、どう気づき、どう学ぶのか——ChatGPTとClaudeの翻訳対話から( 2023年11月9日)

同じプロンプトを使って、ChatGPT-5 と Claude Sonnet 4.5 に翻訳チェックを依頼した。 作業は ChatGPT とのやり取りを中心に進め、判断が難しい箇所は Claude にも同じプロンプトでチェックさせたところ、両者の間で見解が大きく分かれる場面が何度かあった…

『戦争に代わるもの――平和の中で勇気と規律を育てる』(チャーリーの金融英語【第19回】【第20回】)( 2025年11月6日)

1910年に発表されたウィリアム・ジェームズの論文『The Moral Equivalent of War』(戦争の道徳的等価物)の日本語訳をお届けします。初の邦訳ではありませんが、私の調べた限りでは、全編を通して日本語で現在読める媒体はこれまで見つかっておりません(19…

【試作版】『ニューヨークタイムズ』紙をTOEIC700レベルの英語力でサクサク読みこなすためのプロンプト(2025年11月1日更新)

使い方 このプロンプトをAIに貼り付け、英文を入力してください。 入力した英文は、TOEIC 700点(英検2級〜準1級)レベルで自然に理解できる英語に書き直されます。 各文の重要語・背景・構文ポイント、そして段落全体の要約が英語で提示されます。 目的 …

【試作版】難しい英文を自分のレベルに書き直すAIプロンプト(TOEIC700版) 英文読解力養成プロンプト(教育 × 実用)( 2025年11月11日更新)

【最終安定版】英文書き直しプロンプト ver.5.3g-Enhanced “Balanced+ JP-Loop Edition (Error-Free Spec+Educational Integration+Schema Spec-Jr+Loop-Lock)” (段落単位+文単位ループ命令を完全明示したエラー防止・教育統合・スキーマ設計)________…

【試作版】難しい英文をサクサク読みこなすためのプロンプト(TOEIC 900レベル)(2025年10月31日更新)

【最終改訂版】英文書き直しプロンプト ver. 5.5-Lite JP-S (TOEIC 900版・段落全体提示+文単位処理明示+要約付き簡潔仕様)英文読解力養成プロンプト(上級教育 × 実用速読版) 使い方 このプロンプトをコピーしてAIに貼り付け、英文を入力します。 TOE…

100年前の論文をAIと訳して見えた、『理解』の正体 ――翻訳者が体験したパラダイム転換( 2025年10月15日)

先日、100年以上前(正確には115年前)に書かれたおよそ5000ワードの哲学論文を、複数の生成AIの助けを借りて翻訳した。かかった時間はわずか100時間。近々発表する予定だ。僕はこの体験を通じて、AI翻訳における「理解」の本質を、身をもって知ることになっ…

ビジネスに役立つ経済金融英語 第32回:BNPL(後払い決済)

ビジネスマン向け英語教育を手掛けるQ-Leap様でこの連載を始めて4年3カ月。最近になってシリーズの名前を「今さら訊けない経済金融英語」にすればよかったかなと感じています(記事を下までスクロールしていただくと、バックナンバーをすべてお読みいただ…

「忖度不要」と指示してもAIは忖度する――Claude翻訳チェックの落とし穴(2025年9月15日)

あるエッセイの英日翻訳について、有料版Claudeにチェックを依頼したところ、少し気になる点があったので念のため確認してみた。なお、事前に提示したプロンプトには『忖度不要』と明記してある。 以下は、そのエッセイ中に出てきた strenuous honor をどう…

【対訳】パウエルFRB議長 記者会見(質疑応答⑪)(2025年7月30日)-2人の反対票と政策スタンスの分岐:雇用・物価・中立金利をめぐる不確実性(作成日:2025年8月29日)

(原文)米連邦準備理事会(FRB)ホームページ https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250730.pdf MICHELLE SMITH. Nancy.ミシェル・スミス(司会)ナンシー、お願いします。 NANCY MARSHALL-GENZER. Hi, Chair Powell. Nancy Mar…

AIに翻訳をさせて改めてわかったこと②——生成AI翻訳の「訳抜け」を防ぐには(2025年8月25日)

以下のプロンプトを ChatGPT5に提示し、Copilot/Perplexity(ともに無償)での修正案も交えてクロス検証した結果をまとめます。 プロンプト先日、パウエルFRB議長による4,000ワード超の演説を君に一括翻訳してもらい、その後 Copilot で段落ごとの訳文を精…

AIに翻訳をさせて改めてわかったこと①(2025年8月24日)

昨日、仕事の合間の3時間を使って、AIに4,000ワード超の翻訳を任せてみた。結果は見事に完了。ただし、これはあくまでも暫定版であり、私はまだ訳文を確認していない。ここから見直し・修正(いわゆるMTPE)に入ると、この内容ではおそらく20時間はかかるだ…

【対訳】パウエルFRB議長 記者会見(質疑応答⑨)(2025年7月30日)-統計と制度の独立性:CPIの信頼性・ドル相場・政治的圧力をめぐって(作成日:2025年8月19日)

(原文)米連邦準備理事会(FRB)ホームページ https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250730.pdf MICHELLE SMITH. Claire.ミシェル・スミス(司会)クレア、お願いします。 [ドル相場、FRBと財務省との役割分担]]CLAIRE JONES. C…

【対訳】パウエルFRB議長 記者会見(質疑応答⑧)(2025年7月30日)-利下げの行方を左右する条件:リスクの均衡とタイミングの見極め(作成日:2025年8月18日)

(原文)米連邦準備理事会(FRB)ホームページ https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20250730.pdf MICHELLE SMITH. Chris.ミシェル・スミス(司会)クリス、どうぞ。 CHRIS RUGABER. Hi, Chair Powell. Thank you. Well, can you …

生成AIの訳文と似た“既視感”――ある訳書を読んで(2025年8月16日)

今日、電車の中で生成AIに関するある訳書(書評を見て購入しましたが、あえて書名は伏せます)を読んでいて、「あれ?」と感じた。日本語としては一見すっきり読める“気”がするのだが、冷静に論理展開を追うと、どうも辻褄が合わない。 ChatGPTに長めの翻訳…

生成AIの“翻訳の揺れ”はなぜ起きるか――Aさんとの対話から(2025年7月28日)

生成AI翻訳では「どのモデルを使うか」に注目が集まりがちだが、実は“同じモデル・同じプロンプトでも、訳文がその時々で変わる”という現象の方が、翻訳実務でははるかに重要かもしれない――。 昨日、ベテラン翻訳者のAさんと僕との間で、生成AI翻訳をめぐる…

機械翻訳の“違和感”はどこから来るのか?(2025年7月21日現在)

(これは、7月19日の「美女と野獣の金融翻訳ナイショ話」セミナー資料23ページ、「生成AI(機械)翻訳の特徴と向き合い方」の「3. 最終的には、自分の読解力以上の訳文はできあがらない」の補足として、当日お話しした内容を再構成したものです。セミナーに…

「AIの効率化が奪うもの──翻訳における“考える力”とは」(2025年7月17日)

昨日の朝日新聞と本日(7月17日)の日本経済新聞に、よく似た視点の記事が掲載されていて、興味深く読んだ。 朝日新聞に載っていたのは、「AIを使う誘惑 効率求めるほど浅くなる思考」(コラムニストの眼/デイビッド・ブルックス)。これは、7月3日付『ニュ…

生成AIの構造的欠陥(2025年7月15日)

ここに紹介するのは、今朝の私とChatGPTおよびPerplexityとの対話内容である。 簡単に背景説明をしておこう。現在ある論文の翻訳をChatGPTにさせ、それをPerplexityにチェックさせて、随時私が疑問点を入れながら両者の見解(つまり訳文)が一致するまでやり…

「生成AIで誰でも高収入」は眉唾――語られない前提と限界(2025年7月2日)

生成AIは、「とてつもない効率化をもたらし、時給何万円、何十万円の仕事を一瞬で生み出す」といった宣伝文句とともに語られることが多い。だが、それは本当に現実を正確に反映しているのだろうか。 現在、私は20世紀初頭の英語論文を生成AIを活用して翻訳し…