金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

某社「翻訳グランプリ」広告のうさん臭さ

詐欺と明らかにわかる翻訳講座って時たま話題になるじゃないですか。あれは詐欺が明白なのでみんな気軽に叩くんですけど、ザっと見た限りでは、この広告で明らかになった待遇の悪さを指摘する声はあっても、その姿勢を非難する投稿は見当たらない。

だけど僕は、今回の募集広告の本当の問題は、そのかなりの「うさん臭さ」の方にある、と思います。しかもそれを出しているのが、それなりにしっかりした(ように見える)会社なので、なおさら質が悪い。

念のためホームページを見たら
「プロフェッショナルな表現で自分の思いを伝える」???
えーーーーーーーーーーーーーー?
このミスリーディングな広告が?
「プロフェッショナルな表現」=「いかにも賞金を思わせる、誤解を招きやすい表現を使って」
「自分の思いを伝える」=「なるべく安く翻訳者を雇いたいという本音を曖昧に伝える」と読める。

これって要するに

コミュニケーションの大切さを売りにしているはずの翻訳会社が、歪んだコミュニケーション手段を使って、低賃金による新人翻訳者の募集をしている

てことですよね。メーカーのマーケティング担当者の勇み足ならともかく、あんたたち、いったい何考えてんの?!!!・・・と僕は思った。

インタビューを受けている「審査員」の方も含めて、関係者の皆さんはこの手法がいかに歪んでいるか、自分の仕事、会社、業界を貶めているかに気づいていないのではないか。経営者の方はご存知なのだろうか?

単価が安いことよりも(よく見たら1ワード8~10円と書いてあった)何よりも、そういうことに気がついてこの思わせぶりな企画を止めようとしなかった関係者の皆様の意識や姿勢の方がはるかに深刻な問題だと僕は思う。