金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

翻訳全般

朝型フリーランスの優雅な(?)1日

2012年に(ほぼ10年前)「日本翻訳ジャーナル」に寄稿させていただきました。当時は「翻訳ストレッチ」を「翻訳筋トレ」と言っていました。 読んでいただくとお分かりになるように、細かな内容は今とかなり違っていますが、 ①仕事前のストレッチ的な軽い作業…

英語がペラペラになるとはどういうことか?(翻訳ストレッチの英文暗唱からわかってきたこと)

翻訳ストレッチで使っている『表現のための実践ロイヤル英文法―英作文のための暗記用例文300』は綿貫陽/マーク・ピーターセン著『表現のための実践ロイヤル英文法』の付録で、「翻訳ストレッチ」の教材としては最も古くから使っているものの1つ。僕はテキス…

「座右の書」としてのご紹介に感謝

本日の日本経済新聞読書欄に『世界でいちばん大切にしたい会社』(ジョン・マッキー著、翔泳社)が紹介されていました。 (以下引用)『世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー』はうちの役員連中にも薦めています。変化が激しく課題が噴出…

チームで翻訳/校正というプロジェクトから学んだこと(2021年1月)

A、B、C, Dさんの翻訳を僕が校閲し、Eさんの翻訳をBさんが、そしてFさんの翻訳をCさんが校閲し、最後にA~Fの校閲済み翻訳の最終チェックを僕がやる、というチーム制の翻訳プロジェクトがスタートして4年目に入った。 分野は金融。A~Fさんともかなりの経験…

妄想「英文読解教室」(まだ構想段階です)(2021年1月)

以下はすべて、先月60歳を過ぎた僕が、いつかやってみたいと思っている「英文読解教室」の現段階での概要です。ただしこういうのができたらいいな~という妄想にすぎず、やるかやらないかもわかりませんし、(かなりやる方に傾いていますが)、内容も変更に…

マイクロソフトのエクスプローラー「最近使用したファイル」は超便利

マイクロソフトのエクスプローラー「最近使用したファイル」って、野口悠紀雄さんが『超整理法』で提案されていた「押し出しファイリング」をそのままPC上に実現したもので超便利だ。そのことに最近気がついた。 押し出しファイリング - Wikipedia

ネイティブ翻訳者とは?(2021年1月)

英語関連の翻訳の場合は、主に日英(日本語→英語)翻訳の分野で「ネイティブチェック」とか翻訳会社の求人広告で「ネイティブ翻訳者に限る」という場合には要するに英語のネイティブ翻訳者のことを言っているが、業界では結構曖昧に使われている模様である。…

新型コロナ危機は「ブラック・スワン」か?

新型コロナウイルス勃発後ほぼ1年ということで、会議通訳者協会向けに「ブラック・スワン」に関する考察をまとめました。 「COVID-19はブラック・スワンではなかった」というのが専門家の常識のようです。何らかのご参考になれば幸いです。 www.japan-inter…

ホームページ翻訳(和文英訳)から見えてくるもの④:ネイティブチェック(2020年12月)

ホームページの翻訳(和文英訳:ただし訳すのはネイティブ翻訳者で、僕はPM)を受注すると、参考資料として別ページの英訳をいただくことがある。 「ネイティブチェック済みです」と言われて見ると、あきらかに「てにをは」的なチェックしかしていない、いや…

ホームページ翻訳(和文英訳)から見えてくるもの②:誰のための英文?

現在、某サービス会社(A社)のホームページ/パンフレット/取扱説明書/利用規約等の和文英訳をほぼ全面的に請け負っている(最初にコンタクトいただいてから2年ほどになる)。 今、サービスの利用規約の英文をチェックしているのだが、それでつくづく思う…

ホームページ翻訳(和文英訳)から見えてくるもの①:ホームページ情報管理統括責任者を置くべき時代

僕の本業は金融翻訳(米国のマクロ経済や市場動向に関する英文和訳翻訳)なのだが、取引先の関係やご紹介で企業のホームページ翻訳(和文英訳)を請け負うことがある。2~3年に1回ぐらいだろうか。 むろん、受け取った日本語を英語に翻訳するのは僕ではなく…

実務翻訳(産業翻訳)サービスのあり得べき姿(2020年11月)

実務翻訳って、翻訳を切り口にお客様の文書全般に適切なアドバイスを提供するサービスだとつくづく思う。そのことを自覚している翻訳者はいったいどれだけいるだろうか。

翻訳について語ることの難しさ(おまけ)

さっきの鴻巣さんのエッセイに関する文章で「訳文として表出するかどうかは、ソース言語(原文)とターゲット言語(訳文)の文化的背景の違いによると思う(文芸とノンフィクションで違いはあるかもしれない)」と書きましたが、分かりやすい例を挙げて若干…

翻訳について語ることの難しさ

この記事について思ったことを二つ。 ①(以下引用)A pleasant if awkward fellow, Hatoyama was Japan’s fourth prime minister in less than three years and the second since I’d taken office ー a symptom of the sclerotic, aimless politics that had…

僕が喰えちゃった理由(2020年8月2日)

(何回ぐらい見直しますか?という質問に対して)「5、6回ぐらいかなあ。英語と日本語を付き合わせながら見直して行かないと原文から離れてしまう。しかしそうすると文脈、というかパラグラフの視点がなくなってくる。日本語だけで見直すとその点が是正され…

特別ルートなんてない

出会った言葉:ぼくが見習いでまだ何もできずにいる頃、……「シェフになる人には、ぼくとは別ルートがあって、苦もなく何でもやってのける特別な人なんだろうなぁ」と感じていました。だけど、フランスで出会った最高の人たちは、ふつうの人でした。(斎須政…

巣ごもり生活から見えてくる、フリーランス翻訳者への「向き」「不向き」(2021年5月20日)

英語がそこそこ得意な(英検1級またはTOEIC900点を持っている)ので、フリーランスの翻訳者になりたいな、と思っている学生、サラリーマン、または主婦(夫)の皆様。 4月7日の緊急事態宣言以来の1カ月と2週間、どのようにお過ごしですか? 少しでも「あ…

翻訳ができないのは、日本語力よりも英語力の問題(2020年4月8日)

「この英語の意味は分かっているのだが単に自分の日本語能力が足りないから訳が間違っていたのだ」 と思っていたことの多くが 「そもそも英語が読めていなかった(誤読していた)のだ」 ということに気づく。 『英文解釈考』『思考訓練の英文解釈』『英文解…

「国語」って何?

出会った言葉:……少なくとも小、中学の教育の場では、英国では英語、フランスではフランス語として母語が学習されるのと同じように、「国語」ではなく「日本語」として学ぶ方がいいと思っています。(ロバート・キャンベルさん(国文学研究資料館長)「『日…

良い本がつくれれば売れなくても満足かー出版翻訳者のジレンマ

出会った言葉:私は売るために本を作っていない。一人でも多くの人に読んで欲しいという思いでつくっています。1万部よりも100万部の方が価値が高いという倒錯した価値観は間違っていると思います。(「時空を超えて言論を育む 藤原書店社主 藤原良雄さん(71…

日本語メディアへの不信感(2020年3月)とDeepL(今日)

出会った言葉:Long story short: the best thing you can do to keep yourself from catching the virus is to wash your hands regularly and aovid touching your face. (要するに、新型コロナウイルスに感染しない最善の方法は、頻繁に手洗いをし、顔に…

下訳について②

「下訳使うなんて信じられない」 (柴田元幸著『僕は翻訳についてこう考えています 柴田元幸の意見100』アルク社、p130) これは結構有名な発言で、その後に「何で他人に自分に代わって遊んでもらわなきゃいけないのか」と続く。村上春樹さんも同じだと。こ…

ネイティブ翻訳者の簡易(?)判定法(2020年2月)

翻訳でも通訳でも、仕事の要件としてよく「ネイティブスピーカー」とか「母語が英語(日本語)であること」とか言うけど、むしろ「卒業した中学と高校がいずれも現地校であること」とした方が適材が集まりやすいのではないだろうか? tbest.hatenablog.com t…

翻訳者だからわかること(2020年1月)

出会った言葉:手分けして訳したと思われるが、心血を注いだに違いない彼(ら)の個人名を、表紙に書いてほしかった。(「読むも良し、引くも良し ― 『英文詳説世界史』書評 ロバート キャンベル」2020年1月18日日付朝日新聞読書欄) *本日の言葉: 評者は…

「仕事においてこそ好き嫌いがものを言う」(翻訳者への向き、不向きを見分ける3つの基準)(2020年1月)

(以下引用)「普通の人」にとって、センスは継続的な錬磨の賜物である。余人を持って代えがたいほどそのことに優れているのは、それに向かって絶え間なく努力を投入し、試行錯誤を重ねてきたからに他ならない。当然にして当たり前の話だ。(『室内生活 スロ…

「外国語を使う人は余所の家にお客に行った様なもの」(斎藤秀三郎の残した言葉)(2019年11月30日)

(以下引用) 西洋人、殊に米国人は”shall”, “will”の用法が乱暴で、少しも構わず使うから……といって我々日本人も構わずに使うと言う申し分は立たぬ。自国語を使う人は言わば自分の家に居住するようなもので、我が家にありては無礼講は当然のことである。し…

翻訳勉強会の効用

3年ほど前から、K社編集部K先生の主催される翻訳教室の卒業生(1期につき半年のコース2期1年で「卒業」、それ以上は受講できない)による勉強会に参加している。分野は文芸。教材は原文、先生の試訳、学生訳、講義録、そして講義を録音した音声ファイルを…

機械翻訳できる文章はつまらない(2021年11月)

(以下引用)いい加減な言葉は人類に発達をもたらした。(引用ここまで)(坪内稔典「半歩遅れの読書術 ― 言葉はなかなか伝わらない……いい加減さの先に広がる共感」2019年11月2日付日本経済新聞読書欄) * いい加減な、多義的な、曖昧な文章ほど面白い、と…

翻訳業務もティール組織化できそう

僕はあくまでもフリーランス翻訳者で、ティール組織の語る「組織のあり方」が自分の業務に直接関わることはないだろうと思っていたのだが、今回Teal Journey Campusに参加して、一見「個人作業」に見える翻訳業務(ここでは一応実務翻訳を念頭に置いている)…

「一に給料、二に配偶者、三、四がなくて五に資産」>翻訳ストレッチの教材から

おはようございます。 出会った言葉: 翻訳というのはとても根気のいる仕事だ。時間も手間もかかる。集中力も必要だ。そして特殊な場合を除いて、それほど多くの収入が見込めるわけでもない。あくまで裏方の手仕事なので、脚光を浴びるような機会も希だ。言…