金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

英語がペラペラになるとはどういうことか?(翻訳ストレッチの英文暗唱からわかってきたこと)

翻訳ストレッチで使っている『表現のための実践ロイヤル英文法―英作文のための暗記用例文300』は綿貫陽/マーク・ピーターセン著『表現のための実践ロイヤル英文法』の付録で、「翻訳ストレッチ」の教材としては最も古くから使っているものの1つ。僕はテキストに取り組んだ日を書き込んでおり、今日付を見ると一番古いのが「2010年」と書いてあるのでもう11年間使っていることになる。英文暗唱の位置づけはこの10年試行錯誤してきた中でかなり変わってきたが、ここ半年ぐらいは、他の英文暗唱用テキスト2冊とともに、3日に1度、5~10分取り組んでいる。

昨日から最初のページに戻ったのでメモしてある日付を数えてみたら、現在9周り目に入ったところ。さすがにこれだけ繰り返すと日本語の一文字目を見たただけでほとんどの英語をスラスラ言えてしまう。その一方で毎回間違える、あるいは出てこない英文もある。僕の頭になじむ英文となじみ難い英文があるということかと思う。9回目はそこだけを復習しているので従来の4分の1ぐらいの時間で終わりそうな気配だ。つまり、この本に出てくる日本語表現に関する限り、僕はほぼネイティブ並み(「この場合は、こういう言い方をする」レベル)になっているといってよいだろう。

さて、今の僕の英会話能力はどの程度か。時たま英米人と英語で話すと、極めてスムーズに(あたかもネイティブのように?)話せる時と、頭の中で英作文をしながら話している時で大きく差がある。それは、会話の内容が自分の体の中に完全に入りこんでいる分野(テーマ)とそうでないものの場合では、かなり差があるということだ。たとえて言えば、丹下段平から手渡された「あしたのためにその1」の指示通りに練習して試合に出たら、「ジャブだけプロ並み(あとはど素人)」と力石を驚き呆れさせた矢吹ジョーの左ジャブみたいなものである(たとえが古くてスマぬ))。

さて、ネイティブ並みに英語がしゃべれるようになるにはどういう方法がよいだろう?もちろん、英語が母語の国に行って朝から晩まで英語漬けになるのがベストだ。では我々のように日本に済み、普段は日本語を使っている人間、しかも朝から晩まで会話をしている暇のない人間がネイティブに一歩でも近づくにはどうしたら良いだろう?僕は、それは毎日ネイティブスピーカーと「毎日練習する」ことではないと思う。毎日英文を暗唱していて最近思いを強くしているのは、「ネイティブ・スピーカーのように話せるようになる」とはつまり、今、完璧に僕の頭に入っている「300」を400、500、1000と増やしていくことではないか、ということ。ドタ感だが、その量は3万とか4万ぐらいではないだろうか。そうして時たま練習するのだ。インプット(暗唱)9割、アウトプット(英会話の実践)1割って感じ?現在の僕は、限られた時間の中で英会話を上達するにはその方が効果が高いという仮説を持っている。あと2冊暗唱しているので、それに目途がついたら英会話教室(オンラインで十分そうだ)に通おうかなと考えている。

英文の暗唱を通じてもう一つ明確に実感したこと。それは、例えばこの本で1文字の日本語を見て英語をすらすら言ってしまえるようになると、「なぜ、こう言うのか?」に対する意識が低下していることだ。理屈なしに口から出てくるのだからこれはこれでよいのだが、その分だけ文法構造に意識が回りにくくなるわけだ。小倉弘さんの本『例解 和文英訳教本(文法矯正編)』は「そこ」を丁寧に解説してくれている本、という感じである。