金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「外国語を使う人は余所の家にお客に行った様なもの」(斎藤秀三郎の残した言葉)(2019年11月30日)

(以下引用)

西洋人、殊に米国人は”shall”, “will”の用法が乱暴で、少しも構わず使うから……といって我々日本人も構わずに使うと言う申し分は立たぬ。自国語を使う人は言わば自分の家に居住するようなもので、我が家にありては無礼講は当然のことである。しかるに外国語を使う人は余所の家にお客に行った様なものだから、その家の家風に従うことは何よりの心掛けで、小心翼々としてその国の習慣を守るのは当然のことである。
(『斎藤秀三郎伝―その生涯と業績』p232、大村喜吉著、吾妻書房)
*漢字と句読点は読みやすいように私(鈴木)が修正しました。

ちょっと引用としては長いですが、もはやほとんど出回っていない書籍からのものなのでご勘弁を。斎藤秀三郎氏の正則英語学校の講義録を書籍にしたもの(『動詞講義録第2巻』)からの孫引き。要するに、文法は大事だよ。ネイティブが言っているから正しいのじゃないのだよ、と主張しているわけ。

アマゾンkindleで斎藤さんのお書きになった「教科書」をいくつか買うことが出来ます。値段も100円ぐらい。1つ買ってみて驚いたのは、日本の中学生(今の高校生)用の英文法教科書が、英語で書かれている点。最近の安易な「コミュニカティブ・イングリッシュ」礼賛の風潮に対する痛烈な批判になり得るその達人の斎藤さんの言葉だけにズシリと来る。本書なぞ復刻したら売れると思うのだけれど。