金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

出会った言葉

「翻訳を読むのは何か損をした気がしてしまうのだ」柴田元幸さん(2月29日に出会った言葉)

(1)2020年2月29日 翻訳を読むのは何か損をした気がしてしまうのだ。(柴田元幸著『僕は翻訳についてこう考えています 柴田元幸の意見100』アルク社、p156)本日の言葉:同業者の方には思わず頷いてしまう文章ではないかな。ただ、僕は「将来はどうせ英語…

「生きることにこつというものがもしあるとするなら・・・深刻にならないことよね」2月7日に出会った言葉

(1)2023年2月7日 「生きることにこつというものがもしあるとするなら、それはやっぱり全面的には深刻にならないことよね」川上未映子著『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)pp137-138*本書の主人公はフリーランスの校閲者。 (2)2019年2月7日 ……サー…

「書き写す」から<かき込む>へ:日能研の広告:1月9日に出会った言葉

(1)2021年1月9日 翻訳をする外国人は、逐語的に直訳をしようなんて考えは、はじめからこれっぽっちもないんです。文章を丸ごと全体受け取る。そしてそれを、自分の知っている日本語を総動員して表現する。その結果、こういうものができあがった。だから全…

「役に立つ」ことが事前に容易に分かっていることにはたいした価値はない(鹿島茂さん)12月30日に出会った言葉

(1)2020年12月30日 読書に限らず、大切なものほど事後性が高い。逆に言えば、「役に立つ」ことが事前に容易に分かっていることにはたいした価値はない。すぐに役立つものほどすぐに役立たなくなる。事後性の克服は人生の一大テーマといってよい。では、ど…

「ユーモアって、どうにもできない状況に対して唯一できること」 宇多田ヒカル(12月7日に出会った言葉)

(1)2019年12月7日 ゴールを想定せず、十分に時間をかけ、撮れたものから番組をつくるスタイルを貫く。(「取材の対象に『タブーはない』― 阿武隈勝彦さん(東海テレビゼネラルプロデューサー」本日付朝日新聞より)この文章を読んで、『ティール組織』を…

「本当の断捨離とは、心の混沌を整理すること」12月3日に出会った言葉

(1)2019年12月3日本当の断捨離とは、心の混沌を整理することだと専門家は教えている。(「春秋」 本日付日本経済新聞より) (2)2018年12月3日大企業の社長たちが特定候補の支持や推薦を決める。……三菱グループのある会長は「批判的なことを言うのは…

「初心者をバカにするな。新しい事に挑戦しようとしてる人のどこにバカにする要素がある?」12月2日に出会った言葉から

(1)2019年12月2日「1000人に1人、障がい者が生まれる。ですからその1人を999人が支えるのは当然のこと」 横浜市の重度障がい者施設の日浦美智江施設長(「池森賢二 私の履歴書 (29) 次の人生舞台 若者が活躍できる場作る 奨学財団を創設 起業家支援も」 1…

「電話代を借りても必ず返す」 11月26日に出会った言葉

(1)2022年11月26日私は小学生のときに気づいたんですが、本は閉じるときに音がします。「パタン」と。それも一冊一冊、全部音が違います。私は子どもの頃からこの音が好きでした。この本はどんな音がするだろうと、とても楽しみでした。(松居直著『絵本…

狂信の時代:玉音放送をめぐって(『深代 惇郎の天声人語』 (1976年)より)

今朝の翻訳ストレッチから(以下引用) 激論昨日につづけて「八月十五日」を書く。昭和二十年八月十五日午前四時ごろ藤田侍従長は天皇の書見室にはいった。天皇の無精ヒゲが目立った。飾りだなには、リンカーン大統領と科学者ダーウィンの胸像が置かれてあっ…

「自分が理解した内容を、自分が最もわかりやすいと思う日本語で」(村井章子さん):7月13日に出会った言葉

(1)2020年7月13日 (72歳の島田謹二教授は)おそらく、その場に居合わせたどの若い学生よりも若々しい情熱に燃えておられたと思う。ご自分の学問、研究、思想を若い私たちにぶつけずにはいられない一途な情熱に。そして相手が、それを受けとめる能力があ…

寝て居ても団扇のうごく親心 :7月9日に出会った言葉

(1)2020年7月9日 その時点で話題になっていることを「ネタ」にするにしても、ビートたけしは必ずそれを自分の「視点」を通して表現する。本当に面白いのは彼の「視点」で「ネタ」ではない。ここに「芸」の正体がある。「ネタ」は真似できても、「芸」は真…

人生、顔じゃない。顔になっていくのが人生なんだ。 田村隆一さん:7月6日に出会った言葉

(1)2019年7月6日 死は生ではないが、死にいたる時間は生にほかならない。とすれば、死ぬことは、その最後までいかに生きるかということなのではないか。 先日、ドイツの哲学者ハイデガーの書いたものを読んでいたら、次のような文章にであった。人間が「…

「翻訳は基本的に原作に隷属すべき」6月29日に出会った言葉

(1)2019年6月29日 ·「翻訳は基本的に原作に隷属すべき」であり、事象を足したり引いたりせず、取りこぼしを少なく、という著者の潔さが印象的だ。(「精緻でしなやか 余白を掬う」『井上陽水訳詩集』西崎文子 本日付朝日新聞) (2)2018年6月29日 ある…

「普通の家族なんてないですよ。」:6月22日に出会った言葉

(1)2021年6月22日 「普通の家族なんてないですよ。」(「生きるとか死ぬとか父親とか」で「ウチの家族は普通じゃないから」と言った主人公のトキコに出版社の編集者が答えた一言) (2)2020年6月22日 「服作りなど何も知らないまま、途中のプロセスより…

「あたり前にまず物事を考えないと、あたり前に自分が成長していかない」樹木希林さん:6月20日に出会った言葉

(1)2019年6月20日 あたり前にまず物事を考えないと、あたり前に自分が成長していかない。(児童文学作家、灰谷健次郎さんとの対談で、私生活において自分でできることは自分でやるということについて語って)(『樹木希林100の遺言』P66)*樹木さんは「…

「好きな絵画作品を選んだら、これをまずは逆さまにしてみよう」(佐宗邦威さん):6月14日に出会った言葉

(1)2019年6月14日 好きな絵画作品を選んだら、これをまずは逆さまにしてみよう。……意味のない線や色の集まりに見えてくるはずだ。目に見えた物が既知のカテゴリーで理解できるとき、僕らはすぐに言語脳になってしまう……しかし、これを倒立させてしまえば…

お父さん、コミュニケーションって、相手の話に耳を傾けることから始まるの。それが出発点だとアタシは思う。 (妻より):6月11日に出会った言葉

(1)2020年6月11日 ·ウイルスは Go Toの隙 ねらってる」―コロナ対策東京カルタ(東京都のキャンペーン)(「春秋」2020年6月9日付日本経済新聞) (2)2019年6月11日 De-Sign=概念を壊してつくり直すこと…そもそも「デザイン(design)」という言葉は、ラ…

「否が応でも仕事のことを忘れざるを得ない趣味があるのは、自分にとってはとてもいいことだと思います」小松栄一郎さん(6月9日に出会った言葉)

(1)2019年6月9日 ·「研究者はみんなそうでしょうが、寝ても覚めても研究のことを四六時中考えている。でもピアノ演奏にしても野球にしても、その最中にほかのことが頭にあるとミスタッチしたり空振りをしたりしてしまいます。否が応でも仕事のことを忘れ…

「水族館でおいしそうと言っていいんです」青森県の県営浅虫水族館 久保真司さん

(1)2019年6月7日 「水族館でおいしそうと言っていいんです」。青森県の県営浅虫水族館 久保真司さん(「天声人語」5月31日付朝日新聞より)*今日紹介した言葉は、気にかかってメモしておいたのですが、今日の天声人語の最後の文章「前の時代の常識が続か…

「人生の主役は自分」:6月5日に出会った言葉

(1)2020年6月5日 昨今、日本ではさまざまな企業によるコンプアイアンス違反が続出しています。この現象は一般的には「日本企業のモラル低下」を示していると考えられがちですが、ことはそう単純ではありません。もしかしたら、今まで隠蔽されて闇に葬られ…

「誰でも急に大人になったのではなく、子どもの時間からつながって今日があります」辻村深月さん:6月3日に出会った言葉

(1)2020年6月3日 ·(1)締め切りに遅れる(2)悪筆(3)生意気というのは作家が編集者を泣かせる三大要素と言っても差し支えないだろう。僕は(3)に関してはかなり心覚えがあるが、(1)と(2)についてはまず潔白である。(『〆切本』(左右社)p…

「心っていう漢字ってパラパラしていていいと思わない?心は乱れて当たり前」。五味太郎さん:6月1日に出会った言葉

(1)2021年6月1日いたるところに異民族や異教徒や他言語を話す人間が共存している社会では、万人に「迷惑をかけない」ことを求めるより「他人の逸脱に寛容である」ことの方が現実的になる(小田嶋隆著、武田砂鉄撰『災間の唄』(株式会社サイゾー)p162)…

「コンピュータの下した決定を人間がチェックするのは、多くの場合に適切といえる」『プラットフォームの経済学』(5月24日に出会った言葉)

(1)2019年5月24日 ·「工学は具体的な課題を解決しようとする。批評家はモノを作らない。でも、アートは個人的な問題にフォーカスすることで文化的に深掘りすることもできる。考えるだけじゃなくて手を動かして身体で感じる方が、考えが奥までいく」(「令…

「隣に引っ越してきてほしくない人ほどテレビに出せば面白い」(テリー伊藤さん)  5月21日に出会った言葉

(1)2023年5月21日「英語を中高6年やっても全然しゃべれない」「日本の英語教育はだめだ」という批判は常にありますが、中高6年間の学習時間は1千時間にも及びません。全く足りていない状況があるわけで、教育内容を責める以前の問題だ、というのが私の考…

「うらやむこと」「ねたむこと」:5月20日に出会った言葉

(1)2019年5月20日 ……あくまで私の個人的意見だが、次の三つの理由から「政治にコミットする知識人」に双手を挙げての賛成はしかねる。 第一に、政治的意見を表明する学者は、たちどころにレッテルを貼られることになる。……政治にコミットして色眼鏡でみら…

「好きだと思ったことは、続けても絶対に損はない」:5月11日に出会った言葉

(1)2019年5月11日 ·「好きだと思ったことは、続けても絶対に損はない」(5月5日TBSテレビ「明石家さんまの『熱中少年グランプリ』より」 (2)2018年5月11日 どんなに正しくても柔軟さがなければ人々の共感は得られない 文在寅韓国大統領(「文在寅の1…

「子どもの愛国心がないと足りないと嘆く前に、子どもに愛されるに足る国をつくってはどうか」(神代健彦さん):5月1日に出会った言葉

(1)2021年5月1日 ·子どもの愛国心がないと足りないと嘆く前に、子どもに愛されるに足る国をつくってはどうか。(神代健彦著『「生存競争(サバイバル)」教育への反抗』集英社新書P10) (2)2020年5月1日 ·「新聞は2紙以上、紙で読め」「本を速読する…

「30代は来た球を全部打て」:4月26日に出会った言葉

(1)2020年4月26日 是枝 渥美さんは軽みの中によくわからない悲しみがありますよね。(是枝裕和著『希林さんといっしょに』(株式会社スイッチ・パブリッシング)p259)本日の言葉:『希林さんといっしょに』の音読も、いよいよ是枝さんの弔辞(是枝さんは…

「怖いのは善意に基づく流言飛語の拡散です」:4月22日に出会った言葉

(1)2019年4月22日 ·……僕も創業者なので、会社に関わるみんなの幸せを実現したいとか、自然に乗っ取った経営をしたいという思いがある。 でも、それを理念として掲げたら、僕のエゴをみんなに押しつける事になってしまう。 僕は自分なりに会社のことを考え…

「自分の言葉に違和感を抱いているという君は、見込みがある」(田村隆一):4月21日に出会った言葉

(1)2021年4月21日 ·自分のアタマで考えてものを言う人は、周囲の顔色を読んで発言する人間と比べて、浮いた言葉を発する確率が高い。でも、世の中が混乱しているとき、指針となるのはそういう人の言葉なのだと思う。(小田嶋隆著、武田砂鉄撰『災間の唄』…