金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

良い本がつくれれば売れなくても満足かー出版翻訳者のジレンマ

出会った言葉:
私は売るために本を作っていない。一人でも多くの人に読んで欲しいという思いでつくっています。1万部よりも100万部の方が価値が高いという倒錯した価値観は間違っていると思います。
(「時空を超えて言論を育む 藤原書店社主 藤原良雄さん(71歳)」2020年3月21付朝日新聞Bee)

『古くて新しい仕事』(新潮社)の著者島田潤一郎さんと同じ覚悟だ。僕だって書籍の翻訳をしている時にはそう考えていませんが、それは実務翻訳という生活の糧があって書籍の翻訳はあくまでも「余暇」と割り切っているから(だから休みがなくなちゃうんですけど・・・例えば今取り組んでいる本はすでに700時間を超えている)。

もちろん実務翻訳だって、仕事を取るまではギリギリ条件交渉をするけれども、仕事を始めたら時間制約の中で全力を尽くすのは同じ。ただやっぱり、文字通り出してみないとどうなるかわからない書籍出版に関しては、藤原さんとか島田さんのような腹の括り方はできません。

でも翻訳が終わった後は別だなあ。「1万部よりも100万部の方が価値が高いという倒錯した価値観は間違っていると思います」。僕の場合、出版された後はアマゾンのランキングは見るし、増刷の連絡を受ければ、読者の増えた喜びと同時に、皮算用をしている我利我利亡者の自分もいます(ほとんど売れたことがないので滅多にないのですが)。藤原さんの仰ることはわかるけど、やっぱり売れて欲しいです。