金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

ホームページ翻訳(和文英訳)から見えてくるもの④:ネイティブチェック(2020年12月)

ホームページの翻訳(和文英訳:ただし訳すのはネイティブ翻訳者で、僕はPM)を受注すると、参考資料として別ページの英訳をいただくことがある。

「ネイティブチェック済みです」と言われて見ると、あきらかに「てにをは」的なチェックしかしていない、いやそこまでも行っていない、冠詞と前置詞ぐらいしか直していないのではないかと思われる英文が多い。当初は腹を立てていたのだが、最近はこのネイティブチェックご担当に同情の余地もあるのではないかと思うようになった。ネイティブチェック料金が「馬鹿安」なのではないかと。

「ネイティブチェック」には3種類あると思う。
①いわゆる「てにをは」チェック。内容理解が浅くても英語として文章が通っているだけをチェックしてもらう。日本語がわからなくてもいい。理解できなければその点だけメンションしてもらえばよい。報酬は翻訳料金の10分の1または時間で交渉。ただし私が経験した「ネイティブチェック」はこのレベルにさえ達していない、単なる「アリバイ」だと思った。

②ネイティブの目からみて自然な英語としてきちんと読み内容を理解できるかをチェックしてもらう。内容まで踏み込んでもらう。必要に応じて原文も見てもらう(したがって日本語力が必要)。報酬は翻訳料金の4分の1ぐらいがフェアではないか。

③英語を母語とする人たちによる校閲。日本語と英語を両方参照してもらう。したがって報酬は翻訳料金の半額がフェアだと思う(言うまでもないが、英和翻訳における校閲者の料金も翻訳料金の半分であるべきだ)。

私がこれまで見た日本企業の英語版ホームページは、日本人がまず訳して上記①のレベルにすら達していない「ネイティブチェック」がされているものが大半で、③に達している翻訳はほとんどないのではないように思う。

私が①~③で指摘した、英米人の利用者や投資家という視点になった文書になっているものはなお少ない。

(後記)ChatGPTの登場で、今やこの手の「ネイティブチェック」は、上の①も②も③もすべて不要になりました。①②は当然としても、③も人を介する必要がなくなったことが大きいと思う(2023年12月4日記)。