今日は、来月刊行予定の訳書をご紹介させていただきます。
『ベンチャーキャピタル全史』トム・ニコラス (著), 鈴木 立哉 (翻訳)(新潮社)
「ベンチャーキャピタル元年」と言われる今年、本書はこの手の歴史書としては本邦初のもので、ベンチャーキャピタルやスタートアップの経営者、アナリストやそれぞれを目指そうと思っている学生・社会人の皆様にとってはもちろん、そもそも企業経営とは、ひいてはビジネスとは何を目指しているのかを考えておられる多くの皆様にも参考になるのではないかと自負しております。
刊行まで1カ月を控え、本日書影が公開されました。現在予約受付中です。
ご検討のほどどうぞよろしくお願いします。
目次
はじめに 歴史を知る重要性
第一章 はじまりとしての「捕鯨」
「ロングテール」モデルだった捕鯨産業
捕鯨ビジネスの「成功」と「失敗」
捕鯨スタートアップの組織モデル
捕鯨スタートアップのファイナンス
シンジケートとパートナーシップの拡大
仲介業者としての捕鯨エージェント
捕鯨産業がもたらした莫大な富
インセンティブとエージェンシー問題
リスク分散の失敗
3つの補完要因
第二章 「リスク資本」の起源
綿織物業におけるイノベーション
高まるイノベーションの気運
初期アントレプレナーと投資家の契約を読み解く
キャッシュフローと経営支配権
リスク資本のさらなる需要拡大
金融仲介機能を通じてリスク資本を展開する
イノベーションの〝ホットスポット〟
資本とガバナンス
アントレプレナー・ファイナンスの起源
添付資料1 サミュエル・スレイターとモーゼズ・ブラウンの手紙
添付資料2 サミュエル・スレイターとジェデダイヤ・ストラットの契約
添付資料3 サミュエル・スレイター、ウィリアム・アーミー、スミス・ブラウン間の最終契約
第三章 立ち上がる「プライベート・キャピタル」
洗練される「インフォーマル」なファイナンス
ファミリー・ウェルスとファミリー・オフィス
ローランス・ロックフェラーが果たした役割
投資主体の構造の変化
J・H・ホイットニー&カンパニーと東西両海岸の企業群
前途洋々の始まり
第四章 市場か、政府か
スタートアップ企業の資金難
ARDの設立
ARDの組織構造
ARDの投資アプローチと手法
ジョルジュ・ドリオの投資アプローチ
ロングテールの有効性を証明したDEC
準政府組織との競争
中小企業投資会社プログラムが果たした役割
リミテッド・パートナーシップへの移行
第五章 「リミテッド・パートナーシップ」の構造
初期のリミテッド・パートナーシップと法制度の整備
石油と天然ガスのリミテッド・パートナーシップ
ドレイパー・ゲイサー&アンダーソンの登場
グレイロック・パートナーズ
ベンロック・アソシエイツ
政府の後押し 年金基金とベンチャーキャピタル
キャピタルゲイン課税の変更による影響
機関化の拡大
第六章 シリコンバレーの勃興と投資スタイルの多様化
シリコンバレー型ベンチャーキャピタルとスタンフォード大学の蜜月
軍からの需要拡大
シリコンバレーという「カルチャー」
「人に投資する」アーサー・ロックのスタイル
デイビス&ロック
インテルへの投資
アップル・コンピュータとダイアソニックス
「テクノロジーに投資する」トム・パーキンスのスタイル
タンデム・コンピュータズの場合
ジェネンテックの場合
「市場に投資する」ドン・バレンタインのスタイル
セコイア・キャピタル
投資、哲学、リターン
「離陸」の準備が整う
第七章 テックビジネスの隆盛とエコシステムの深化
ハイテク・セクターの活況と停滞
ベンチャーキャピタルとIPOの合流
コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)
「官民連携」のベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタル業界の階層化とパフォーマンスのベンチマーク形成
「規模拡大の壁を乗り越える」ニュー・エンタープライズ・アソシエイツ
新世代の投資家たち
「多様性」問題の起源
規律の崩壊の予感
第八章 「ドットコム・バブル」の教訓
一九九〇年代のICT革命
インターネットの登場
ベンチャーキャピタルのリターンと報酬
重要な投資群 ネットスケープ、ヤフー、グーグル
デューデリジェンスの欠如
Eコマース界の泥仕合
歴史的視点を持つことの大切さ
正当性の危機
金銭的な価値と社会的な価値の両立
エピローグ ベンチャーキャピタルの未来
裾野の長いリターン
組織構造と戦略
シリコンバレーは生き残れるか?
政府の重要性
多様性という課題
最後に
謝辞
解説(井潟正彦)
索引 原注