金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

出版翻訳

出版社(アスク出版)の丁寧な対応に感動と感謝(2019年12月3日)

3日ほど前に『ヘミングウェイで学ぶ英文法』の出版社アスク出版宛にツイッターでメッセージを送った。本の一部に疑問があった。要するに本が間違っているのではないかと思って、その点を問いただしたわけ。最初は本に挟んであった葉書に書いて送ろうと思って…

「一に給料、二に配偶者、三、四がなくて五に資産」>翻訳ストレッチの教材から

おはようございます。 出会った言葉: 翻訳というのはとても根気のいる仕事だ。時間も手間もかかる。集中力も必要だ。そして特殊な場合を除いて、それほど多くの収入が見込めるわけでもない。あくまで裏方の手仕事なので、脚光を浴びるような機会も希だ。言…

メッセージを見つけるには、『考え抜く』しかない。すると、ある時啓示がある(野口悠紀雄さん):5月19日に出会った言葉

(1)2019年5月18日 ·「着想は長い夜に差し込む一条の光にすぎないが、この光こそがすべてである」ボアンカレ(『良き社会のための経済学』p87) 「メッセージを見つけるには、『考え抜く』しかない。すると、ある時啓示がある」(『超文章法』野口悠紀雄著…

リーディング:レポートではなく口頭試問で出版決定(2019年4月)

昨日は某社でこれから訳す書籍の打ち合わせ。リーディングを始めたものの他社の入札が入ったので急遽編集長との「口頭試問」(本の感想を編集長の前で述べ、質問に答える)で決まった案件だ。当初予定では3週間ほどもらえていて、仕事の合間に2週間で2回ほど…

「リーディング」について(2019年3月2日)

*久しぶりにリーディングをやっています。 「翻訳することになったら翻訳者。翻訳しないことになったら2万円。期間は2週間」が当初のオファーでしたが、原書が300ページを超え、しかもコピペもマークもできない出版前PDF。「2週間は無理です」とまず答えた。…

緊張 vs リラックス(2018年12月)

実務翻訳は色々な意味で、まずは「緊張」の要素が強いのだけれど、書籍翻訳は、緊張よりも「リラックス」が先にないとうまくいかない気がする。

出版翻訳雑感

ここ3日ほど、書籍中心の生活を送ってきた(要するに、実務翻訳が暇だったということです)。毎日5~6時間やっていて、なるほどこのペースなら3カ月で1冊は行けるかなと思いました。ただ勝手知ったる(調べ物は確認が多い。調べるポイントも分かっている)実…

コツコツ訳す

「こんなにぶ厚い本(『ティール組織』)どうやって訳したんすか?」 昨日の勉強会に来られたTさん(放送関係者)に献本するとこう尋ねられた。 「え~コツコツと訳しただけなんです」「・・・そうですよね~。コツコツ訳すしかないっすよねー」と感心された…

署名本の行く先

(以下引用)本にサインを求められたときは、表紙を開けると左側にあらわれる見返し(表紙の裏に貼ってある紙の続き)に署名する。 見返しは本文とは別の紙で、この一枚を切り取っても綴(と)じには影響しないから、著者から為書きを添えて謹呈された本でも…

自分(翻訳者)のド勘違いを反省する(2018年5月30日)

昨日知り合いの経営者Kさんにある用向きがあって1年ぶりにメールし、その末尾に『ティール組織』を出したことを添えておいた。すると今朝返事が来て 「『ティール組織』を訳していたの鈴木さんだったのですか!人事組織関連では話題の書で当社でも何人もの役…

出版翻訳幻想その2 ー 出版翻訳の怖さ 

出版翻訳についてあと2点(経験者の方はよくご存知の話だと思います)。 1.今やっている仕事が金になるのは(訳し始めてから、僕の場合早くて)1年後。 1 月に出た『ティール組織』の初版分の印税が支払われたのが3 月。 ここだけ見ると「支払いサイトが2…

出版翻訳幻想その1 ー 出版翻訳の入り口 

「書籍の翻訳って5万ワードから10万ワード(ちなみに『ティール組織』は約13万5000ワード)をお一人に任せるので、どうしても経験者を優先せざるを得ないんです」と先日飲んだOさんは仰っていた。 だから現実問題として、出版翻訳経験ゼロの人がいきなり1…

出版翻訳の入り口(と下訳について)(2018年5月)

「書籍の翻訳って5万ワードから10万ワード(ちなみに『ティール組織』は約14万ワード)をお一人に任せるので、どうしても経験者を優先せざるを得ないんです」と先日飲んだOさんは仰っていた。 だから現実問題として、出版翻訳経験ゼロの人がいきなり1冊を…

出版翻訳の孤独とお金(出版翻訳の入り口②)

出版翻訳についてあと2点(経験者の方はよくご存知の話だと思います)。 1.今やっている仕事が金になるのは(訳し始めてから、僕の場合早くて)1年後。 1 月に出た『ティール組織』の初版分の印税が支払われたのが3 月。 ここだけ見ると「支払いサイトが2…

編集者も翻訳者とおんなじ

出会った言葉:「時間がない」と感じるのはあなたの勘違い。まずは「忙しい」と言うのを完全に止めてしまおう。(『週40時間の自由をつくる 超時間術』メンタリストDaigo著 実務教育出版より) 『ティール組織』を僕に紹介してくれたOさんへのお礼食事会(実は…

出版社はどこまで本気で出版翻訳者を育てる気があるのか?

2018年3月10日付け日本経済新聞読書欄「活字の海で」27面は「非英語圏の翻訳者どう確保 コンクールで新人発掘も」は、視点は面白かったが新味がなかった。 タイトルから想像される内容だが、最後の段落だけ引用する。 (以下引用) こうした中、新たな動きも…

出版翻訳は「趣味」(2018年3月)

先日、実務翻訳者が集まる会合があって、その席で、「鈴木さんは実務翻訳と出版翻訳の(時間)のバランスをどう取っているのですか?」という質問を受けた。 「取っていません」と答えた。 「僕は食うためにまず実務翻訳に時間をかけます。それで余った時間…

書店に置いてもらった本、置かれるようになった本(2018年1月)

以下は、つい2時間ほど前の、今晩の夕食時の会話である。 「ほい、これが見本。おじいちゃんの仏壇にお供えしよう」「わ~、スゴいわねーお父さん、表紙がきれいじゃない!」「だろ?」「しかもとても厚いのね・・・」「ま、まあな。なんたってお前、2年半だ…

出版翻訳と「採算」(2017年12月)

実務翻訳の時は頭の中の3分の1ぐらいは採算を考えている。締め切りが比較的近い(長いものでも一カ月ぐらい)こともあって時間あたりWord数(と売上高)が常に頭の中に残っている。1カ月単位で売り上げも計算します。単価交渉もする。 しかし書籍は別だ。 最…

翻訳業と「採算」②(2017年12月)

思わず担当編集者にメールして印税率と初版部数を確認し、時給1000円を切る事実にめくるめく快感を覚え、「ヒットしてくれい!」と祈りすがる卑しいアタシ。

金子靖翻訳教室(2017年春の公開教室)のノートから

(以下引用)いつもそうですが、翻訳は基本が大事ですが、どういうわけか実際に翻訳の仕事をしている人たちの中にはそれが自分には間違いなくあると強く思い込んでしまっている上に、この講義でわれわれが膨大な時間を捧げて打ち込んでいるようなトレーニン…

本文の訳だけで643時間(2016年11月)

昨年10月から始めて6月末の予定が4カ月と1日延びて本文校了。643時間ですよ、643時間。 本が出るまで一銭にもならず、出たからと言ってヒットするとは限らない(ヒットしない可能性の方が高い)643時間。しかもまだ終わっていない。キツかったー。かなり難解…

「編集者のコメントにホッとする」(『ティール組織』を訳し始めた頃)

昨日も1日中仕事。今日から実務が再び忙しくなるので、1日中遅れている本の翻訳。夜、その担当編集者からメール。 「素読みですので全体的な観点になりますが、さすが、とても素晴らしい文章で訳されていると感じました。事例が活き活きと読みやすく描かれて…

金子靖翻訳教室OBOG翻訳勉強会のレベル

昨日も午後から翻訳勉強会の準備を始め勉強会に参加。 で、昨日司会をしていて(といっても文字通りの進行役なのですが)、この勉強会のスタイルができあがったのだな、と思った。僕以外の皆さんには。 実は、僕のスタンスは金子靖先生の教室に通っている時…

出版翻訳1件あきらめる

午後に某出版社からメール。『Q思考』を見てくれたとのことで、ある金融書の翻訳打診だった。実に面白そうな内容だったのだが、①今の書籍の目処が付くのが10月、したがって着手は11月、②本職が実務翻訳なので出版翻訳専業の人の2~3倍ぐらいかかる。この本で…

翻訳とは、深い読書―村井章子さんの講演会に参加して

8月4日、村井章子さんの講演会に参加した。 3月に朝日カルチャーセンターで行われた講演に続き2回目となったが、講演会、その後の宴会もとても実りのある、濃縮ジュースのような半日だった。昨日改めてメモった内容を簡単に記しておく(重なる部分もあるかも…

地元でベストセラー(?)(2016年8月)

本が出て以来、ツィッターで書名を検索し、コメントや紹介があるとリツイートしてお礼を書くことを続けている。それで今朝も「Q思考」を検索したら、な、なんと B教堂 西葛西店 【週間ランキング】【ビジネス】①サンマーク『どんなに体がかたい人でもベター…

故郷に錦?ー地元の書店に訳書が置かれるということ

hontoって店舗を登録しておくと、特定の書籍の在庫があるかどうかが分かる。 文教堂西葛西支店。『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』の在庫はずっと✕だったんだけど、昨日初めて「在庫〇」になっていたので、散歩がてら行ってみたら確かにあった…

皮算用の季節(2016年6月)

昨日「Q思考」の発行元D社から封筒。な、なんと印税通知。 著作者はどなたでもそうだと思いますが(少なくとも私は)、本を訳したり書いたりしているときは、完全に採算度外視。締め切りギリギリまで、あるいは締め切りを延ばしてもらってでもトコトン納得い…

「目利き」との残念会(『ティール組織』がJ社の企画会議で落ちた頃)

2ヶ月ほど前にリーディングの無茶振りをされて40時間かけて出した話を書いたのだが、それを僕に振ってきたのがOさん。Oさんやる気満々で「企画通します!」と言っていたのが・・・何と社内の企画会議で否決されてしまったのだ。「す、スミマセン」と絞り出し…