金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

AI(機械)翻訳

道具としてのChat GPTに関する仮説

これまで自分がやっていたことをChat GPTに任せたら、その部分の自分の能力は落ちるだろう。でもこれまで他人に任せていたものをChat GPTに任せたら、自分の能力は落ちない。 Chat GPTが他のツールと違う点はここではないか。人間関係のストレスがない分むし…

Prompts for GPT-4 for Translation Checking (As of July 5, 2023)

(Note) The following commentary was was initially composed in Japanese and then translated into English, on translation from English to Japanese. While the discussion is primarily about translation from English to Japanese, the insights co…

翻訳チェック用のGPT-4へのプロンプト(2023年7月5日現在)

今のところ結構効いているGPT-4へのプロンプト(指示文):(ここから)「(一連の英文)の次の訳文について英文の理解は正しいか、日本語の語彙、文法、表現の4つの面からはどうか、について指定した範囲の全体を見た上で一文ごとに、丁寧にコメントせよ。…

チャットGPT(GPT-4)体験記(2023年6月19日更新)

(2023年6月16日)ずっとチャットGPT3.5を半分実験のつもりで使っていたのですが、昨日は混んでいてなかなか結果が出力されなかったので、妻の許しを得てチャットGPT有料版(GPT4)に加入することにしました。 (2023年6月17日)1日使ってみて(オプトアウト…

「ChatGPT(チャットGPT)」は英語教育をどう変えるのか?、という記事を読んで(2)(2023年6月11日)

今日の朝日新聞、「英語教育、チャットGPTで変わる? 誰もが英語“使える”ツール登場――専門家に聞く」という記事に、京都大学の金丸敏幸・京都大学准教授のインタビュー記事が載っていた。 英語教育、チャットGPTで変わる? 誰もが英語“使える”ツール登…

「ChatGPT(チャットGPT)」は英語教育をどう変えるのか?、という記事を読んで(1)

「これまで英語を学ぶために費やしていた時間を、ほかのことを学ぶ時間に回すことが可能になる」(「生成AI、英語学習に見直し迫る 柔軟な教え方が重要に」金丸敏幸・京都大学准教授 2023年6月6日 付日本経済新聞) この記事は、現在の日本では英語教育にか…

チャットGPTの登場で英語の相対的優位性が一気に高まる/The Emergence of ChatGPT: A Surge in the Relative Superiority of English(6/4/2023)

生成AIの登場で英語の相対的優位性が加速度的に高まり、日本語がますます不利になる時代に突入したのかも。 チャットGPTが出たことで翻訳者(通訳者)不要論が出ています。 そういう面も確かにあるのですが、今後は、たとえばこれまではせっかく日本語で立派…

「五感をフル稼働して自分なりの基軸を持て」:チャットGPTにどう対処すべきかに関する3つの記事(2023年6月1日)

チャットGPTにどう対処していくべきか、に関する興味深い記事が3つ立て続けに出たので紹介しておく。 (1)「わが子をチャットGDPを使いこなせる大人にするためには、小さい頃は「サル」として育てる必要があると思います。(中略)鉛筆を使う。消しゴムを…

ChatGPTで英文をつくってわかったこと(2023年5月25日)

昨日、外国人の顧客にあることを主張する英文メールを打つ必要が生じたのでChatGPT(無償版)を使ってみることにした。プロセスは以下の通り。 1.伝えたい内容を、英語に訳すことを念頭に日本語で書いた。1500~2000文字ぐらいだと思う。 2.固有名詞を除…

ChatGPTは英語が圧倒的に有利(2023年5月25日)

The Economistの記事を読んで気になったので、ついさっき(203年5月25日午前10時頃)した質問。すべて日本語である。 (私の問い1)チャットGPTさん、あなたは私が何かについて日本語で質問した時、日本語以外のデータ(例えば英語)まで調べに行った上で回…

What I Learned from Creating English Texts with ChatGPT (5/23/2023)

(The following essay is a translation, with the assistance of ChatGPT, of the Japanese blog linked below on this page, following the process outlined below, into English.) Yesterday, the need arose for me to compose an assertive email in…

AIは「意味」をどこまで「理解」しているか?(4年間での進歩)(2023年5月6日)

2019年のブログで次の日本経済新聞の記事を引用した。 (以下引用)「AIがすべてのことをなすには時間がかかるが、現時点で翻訳力は非常に驚くべきレベルだ。とはいえ、機械はまだものごとの『すべての』意味をわかっているわけではない。『いくつかの』意味…

英日翻訳、日英翻訳のどちらがAIに奪われやすいか(現時点での肌感覚)(2023年5月6日)

まず一言。私は英日(英語→日本語)をメインとする翻訳者です。 自分が業務知識を持っている分野の産業(実務)翻訳と外国語での文章作成について、かなりおおざっぱな言い方をすると、 (1)英日翻訳(英語→日本語)の場合、「英語を読んで理解する」のに8…

英語ができなくても、自分の言いたいことを正確に英語で表現する方法

英語をあまり書けない人が、自分の意図をなるべく正確に伝える見事な英語を書く一方法。1.日本語でしっかりした文章を書く。2.チャットGTPに英語に訳させる。3.その英語をチャットGPTに日本語に訳させる。4.あとは、3.の日本語が1に近づくまで2…

ある生成AIとのやり取りから:ご利用は自己責任で(2023年4月24日)

以下は、ある生成AIとのやり取りのコピペです(2023年4月24日午前6時40分頃です)。 (質問)あなたへの質問の中には業務上の守秘義務が含まれる可能性がある。あなたはそれを守れるのか?(回答)はい、私は人工知能モデルであり、業務上の守秘義務に対する…

2月にタイム誌に掲載された貴重な記事(2023年4月23日)

タイム誌の2023年2月27日/3月8日号(Feb 27/March 6, 2023)に画期的な記事が掲載された。 time.com 記事は4ページ立てで、生成AIの歴史とIT関連各社(大手とスタートアップ企業)の取り組み、失敗、そこから学んだはずの教訓、現時点で考えられる問題点を2…

Chat GPTは直観力を低下させる

翻訳チェックばかりやっていると、自分で訳文を作る能力が低下するのは明らか(だから僕は、翻訳チェッカーからこの業界に入ることを勧めない)。 これは翻訳に限らないと思うのでもう少し一般化して説明する。ある物を作っていくときに一番難しいのは「セロ…

チャットGPTを(産業)翻訳にどう生かすか?

直接訳させて批判的に検討するという考え方を僕は否定しないが、自分の英語力が落ちていくことは間違いない。今後翻訳者として仕事を続けていく中で、今言った意味での「英語力が落ちていく」ことがプラスかマイナスかはわからないが、少なくとも僕はそうな…

「ビジネス法令、AIで英訳加速」(2023年3月27日付日本経済新聞)の記事を読んで

本日(2023年3月27日)の日本経済新聞に次のような記事が載った。 (以下引用)法務省は2023年度から人工知能(AI)による法令の自動英訳を始める。ビジネス関連の法律や政省令を中心に従来の4倍となる年間320本の翻訳をめざす。海外企業が日本で投資や事業…

1本の記事の「ポストエディット」(機械翻訳の結果を用いた翻訳)を経験して思ったこと(2023年3月10日)

今回必要があって(また興味もあったので、自ら申し出て)複数の機械翻訳のお試し版を使いながら1本の記事(雑誌4ページ分程度)を訳しみた。その結果、今後もしこういう作業、つまり「ポストエディット」が仕事の中心になっていくと、おそらく自分の英語力…

機械翻訳が容易な文章、難しい文章

翻訳者と校閲者が随時入れ替わるプロジェクトに参加して6年目になる。 翻訳者と校閲者の間で「どうして著者はこの表現を使ったのか?」「これは市場のどの動きを説明しているのか?」「なぜこのロジックになるのか?」というやり取りが毎月行われる。その上…

機械翻訳(英和翻訳)のレベル(2023年3月8日時点での肌感覚)(2023年3月8日)

語彙力は英検1級クラスで、英検準1級レベルの構文把握力があり、 やや稚拙ながらそこそこ読める(=日本人の読者には理解できる程度の)日本語を書けるものの、 訳抜けも散見され、 そして、何といっても 書かれている原文の意味(含む文脈)をまったく分か…

一つの文書を複数の機械翻訳ソフトに英和翻訳させてみた(あくまでも個人的な感想です)

ちょっと関心があって同じ文書(新聞記事)を実験的に四つの機械翻訳に訳させている(英語の記事の日本語への翻訳:パラグラフ単位)。現段階で、いずれもお試し版をつかってでの個人的感想です(2023年3月2日時点)。 ①チャットGPTは数字を間違えることがあ…

ホームページ翻訳(和文英訳)から見えてくるもの④:ネイティブチェック(2020年12月)

ホームページの翻訳(和文英訳:ただし訳すのはネイティブ翻訳者で、僕はPM)を受注すると、参考資料として別ページの英訳をいただくことがある。 「ネイティブチェック済みです」と言われて見ると、あきらかに「てにをは」的なチェックしかしていない、いや…

2019年7月時点での機械翻訳のレベル

(以下引用)「AIがすべてのことをなすには時間がかかるが、現時点で翻訳力は非常に驚くべきレベルだ。とはいえ、機械はまだものごとの『すべての』意味をわかっているわけではない。『いくつかの』意味を分かっているだけだ」――どんな限界があるのでしょう…

仮説を検証しながら進もう:機械翻訳の得意、不得意(2019年5月27日)

翻訳者の皆さんが既にお気づきのように、用語や言い回しに関するルールが厳しい分野ほど、つまり人間にとってこれまでルールの習得が難しかった分野ほど機械翻訳は得意なはずだ。皮肉な話だけど。 一方、「こういう言い回しはあの時のどこかで使われた」とか…

「機械(ソフトウエア)ができることは機械にさせた」利益は顧客に還元しなくてよいのか?(2018年3月3日)

「機械(ソフトウエア)にできることは機械にさせる」という考え方には僕も反対しない。「てにをは」や誤字脱字のチェック、同じ用語を使わなければならないところにその用語を使う。長い単語の打ち込みを省略する、等々だ。 もちろんそれを機械にさせること…

AIは小説を書けるが小説の解釈はできない(2018年3月3日)

おはようございます。 出会った言葉:「私はあなたが好きです」という文がある場合、AIにとっての「意味」はこの文が真か偽かだけだという。しかし、人間はこの短文にさえ、様々なニュアンスを見いだせる。(「AIVS教科書が読めない子どもたち 新井紀子…

「機械翻訳と人の翻訳」(その2)(2014年1月)

今訳している文章にこういうのがある(ちょっと変えた) In Malaysia, the November CPI increased 2.9%. これは機械翻訳ならどうなるだろう? 「マレーシアでは、11月のCPIは2.9%上昇しました」かな? 実はお客様にはルールがあって略語の場合は最も一般的…

「機械翻訳と人の翻訳」(2014年1月)

(その1) ・・・ちょっと今ある表現にうんうん唸っているうちに思ったこと。 「全体を読んで筆者が何を言いたいのかを理解し、そのテーマに沿った形で訳語や訳文を選択し、場合によっては原文の順序と並べ替え、全体を読み終わったときに筆者が最も言いた…