金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「機械翻訳と人の翻訳」(その1)(2014年1月)

(その1)

・・・ちょっと今ある表現にうんうん唸っているうちに思ったこと。

「全体を読んで筆者が何を言いたいのかを理解し、そのテーマに沿った形で訳語や訳文を選択し、場合によっては原文の順序と並べ替え、全体を読み終わったときに筆者が最も言いたかったことが伝わっている」

という行為が翻訳だとするならば(私はそうおもうのだけれど)、

1.全体の内容を読み取ってメッセージ(筆者の言いたいこと)を掴む
2.そこで使われている単語、熟語、文章の背景知識(の重みや意味づけ)を評価する。

例えば経済金融の翻訳者なら経済エッセイ、あるいは市場動向についてのレポートの中でirrational、あるいはexuberanceと言う言葉がそれぞれ単独で出てきたら、96年のあれ(irrational exuberance)と関連があるのではないか、今の流行言葉でいえばtaperingなどが10年後に単独で出てきたときに、2013年にマスコミが騒いだあれだ!と考えながら読む、といった原文の単語とか熟語の位置づけや重みを「評価」する。

さらに1.との関連で同じように各表現を評価する。

3.それが今の日本語の中でどのような表現が1.を最もよく表すかを考え、使う日本語の単語や表現を評価して全体として最もマッチする表現を選ぶ。
と言った頭の働きが必要になってくると思うのではないか。

これを機械(というか翻訳ソフト)にやらせようと思ったら相当のデータベースが必要になってくるよね。
やっぱまだまだ時間がかかるな。
将棋だってようやくソフトが名人クラスになったぐらいだから。

(その2)
表現の評価が「機械」には難しいと思われるもう一つのパターン。

英語のある程度できるノン・ネイティブが書いた文章で、複雑なことを述べている時に、恐らく自分の言語との変換がどこかで混乱し英語が筆者のいいたいことではない(例えば反対の)表現となってしまっている、論理的に考えて正しくない表現となっている、あるいは文法的に誤った文章となっている場合だ。

これはもう文脈と論理で日本語の段階で矯正するしかない(もちろんクライアントにはそれを伝える)。

つい今し方遭遇したので忘れないように。

(後記)今から8年前の今日に書いた文章です。(その1)はその日の朝。(その2)は午後だったかな。将棋はすでに人間が理解できない水準に達していますね。翻訳はどうでしょうか?(2022年1月13日記)

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