金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

2月にタイム誌に掲載された貴重な記事(2023年4月23日)

タイム誌の2023年2月27日/3月8日号(Feb 27/March 6, 2023)に画期的な記事が掲載された。

time.com

記事は4ページ立てで、生成AIの歴史とIT関連各社(大手とスタートアップ企業)の取り組み、失敗、そこから学んだはずの教訓、現時点で考えられる問題点を2015年まで立ち戻ってわかりやすくまとめている。

当時はチャットGPTが出てまだたった3カ月。すでにさまざまな情報が怒涛のように交錯していたが、資料的価値の非常に高い優れた記事だと僕は思った。

チャットGPTが出現して5カ月。Timeの記事が出てそろそろ2カ月たつが、この記事の価値は全く色あせていないと思う。まだご欄になっていない方にはお読みになることを強くお勧めする。日々流れてくる情報に振り回されないためにも、目の前の事象から一歩引いて、現状を冷静に確認するためのよい材料になると思う。

なお、僕はこの記事を全訳して某団体に所属する会員向けの研究用資料を作成した(非公開です)。以下、その「冒頭」だけを紹介する。

(ここから)
新興企業オープンAI(OpenAI)が「チャットGPT」(ChatGPT)を発表したのが昨年11月30日。以来わずか4カ月しかたっていないのだが、今や各種新聞、雑誌等のメディアにこの言葉を見ない日がないほど。

「チャットGPT」とは「オープンAIによって開発され、提供されている生成(generative)人工知能(AI)モデル」のことで、事前学習に基づいて入力データへの回答を自ら検索・生成し、質問者との対話形式でその結果を出力する。しかし生成AIはオープンAIの専売特許ではない。例えばメタは2月24日に大規模言語モデル「ラマ(LLaMA)」を一般公開すると発表、グーグルも3月21日に、対話人工知能(AI)サービス「バード(Bard)」の試験版の一般公開を米国と英国で始めたと発表した。まさに目が回るような事態の展開に戸惑う読者の方も多いと思う(ほかならぬ私もその一人だ)。そしてついに行政も規制に乗り出した。

(以下引用)米オープンAIの対話型人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」に対し、欧州での締め付けが厳しくなる恐れが出ている。イタリア当局は、そのデータ収集手法を問題視して調査に乗り出し、同国でのサービス停止に発展した。欧州連合EU)全体の個人データ保護ルールが今回の調査の根拠となっているため、今後、EUの各国当局が同様に動く可能性がある。(後略)(引用ここまで)
   (「ChatGPT『欧州で規制広がる恐れ』データ法制専門家」 2023年4月3日付日本経済新聞電子版)*有料記事です。  

www.nikkei.com

そこで本稿ではこの4カ月の報道からは一歩引き、生成AI開発競争の歴史を簡単に振り返っておきたい。取り上げるネタはタイム誌の2023年2月27日/3月8日号(Feb 27/March 6, 2023)の記事。タイトルは

The AI Arms Race Is Changing Everything(AI拡大競争がすべてを変えている)

だ。「チャットGPT」の質問と答えのやりとりが表紙を飾っており、カバーストーリーといってよいだろう。

ウェブ版では削除されているが、紙版にはAre they making the same old mistakes?(巨大ハイテク企業は同じ間違いをしようとしてるのだろうか?)との副題がついている。この記事は紙版では4ページと比較的短いものの、生成AIの歴史や各社の取り組み状況、さらには現在の課題、技術上、著作権法上の問題点、リスク、人間の価値観との整合性の問題点を指摘するなど、よくまとまった記事と言える。(非公開のため以下略)

タイム誌のこの記事をぜひ保存して熟読しておけば、日々の情報に振り回されにくくなると思う。