昨日、外国人の顧客にあることを主張する英文メールを打つ必要が生じたのでChatGPT(無償版)を使ってみることにした。プロセスは以下の通り。
1.伝えたい内容を、英語に訳すことを念頭に日本語で書いた。1500~2000文字ぐらいだと思う。
2.固有名詞を除いたうえでChatGPT(無償版)に「英語に訳してくれ」と命じた。その際、「これは手紙文である」と注を入れた。瞬時に英語になった。
3.日本語の原文と照らし合わせながら英語をチェックし、自分の意図がなるべく正確に伝わるように英語を修正した。元々私自身が主張したい内容なので、著者の意図を確認する必要はない。
4.日本語を削除して英語のみを読んで、また微調整した(もちろん、英語を修正している過程で、英語そのものに自分の主張を加えた箇所もある)。
5.できあがった英語をChatGPT(無償版)にコピペし、「校正してくれ」と命じた。瞬時に修正された英語ができあがった。
6.念のためできあがった英語を読み直し、自分の元の日本語(つまり僕の主張)と一致しているかを確認した。
7.出来上がった英語をメールにコピペし、固有名詞を入れて先方に発信した。
8.できあがった英語はおよそ700ワード。所要時間は、原文の日本語を書き始めてからメールを出すまでおよそ2時間である。
(感想)
(1)同じことをChatGPTなしでやっていたら、僕の英語力では文案の書き起こしから仕上がりまでおそらく半日(6時間)近くかかったのではないかな、というのが僕の肌感覚。
(2)僕は時々和英(日本語→英語)の翻訳を依頼されることがある。その場合はネイティブ翻訳者にまず翻訳を依頼して自分はPM(プロジェクト・マネジャー)として、顧客と翻訳者との間にたって原文、英文の調整を行う。その際の作業と比較して考えると、(上に紹介した)ChatGPTを使った英文作成の「3」以降は私の翻訳業務とまったく同じプロセスだ。すなわち、ChatGPTの登場によって、私が今後和文英訳の翻訳を請け負った場合には、僕には事実上ネイティブ翻訳者が必要なくなるということだ。そしてそれに伴って、省力化に伴う「相応の割引」をする必要に迫られるだろう。
(3)きちんとした英文を書くには、ChatGPTの訳出した英語に対する深い理解が必要。したがって英語が得意ではないと、(英語の評価ができないので)伝達すべき英語をつくれない可能性があるので要注意。
(4)ChatGPTは英語のデータ量が圧倒的に多いので、英語を訳した日本語よりも、日本語を訳した英語の方が、仕上がりの訳文は「自然な」表現になる(この点は意外と注目されていないかもしれない)。
(5)経験者ならだれでもわかると思うが、何をどう書くか(主張するか)が明確な場合、それを英文で表現するときに最も大きな負荷がかかるのは「英文の書き起こし」、2番目が前置詞と冠詞、定冠詞の扱いだ。ChatGPTにまず訳させることでこの負荷がどちらも事実上なくなるのはかなり大きいと思う。あとは、出来上がった英語を内容面から細かくチェックし、必要に応じて修正し、最後に英語を校正すれば、原文の主張を正確に反映した見事な英文ができあがる。
(6)以上から次の仮説ができる。ChatGPTさえあれば、英語の4技能のうち「書く能力」についてはこれを磨く努力をしなくてよい。もちろん、「何を、どう書くか」が文章を書く場合の最大の難関ではあるが、これは言語とは関係ない。
(7)Chat GPTはおそらく、英語で論文を書かなければならない多くの日本人の研究者にとって最大の難関の一つを解決してくれる。
**今後、修正および感想なり意見なりを追加していく予定。
ご参考まで。
上の日本語を上と同じプロセスで英語にしたものがこちら。