金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

英日翻訳、日英翻訳のどちらがAIに奪われやすいか(現時点での肌感覚)(2023年5月6日)

まず一言。私は英日(英語→日本語)をメインとする翻訳者です。

自分が業務知識を持っている分野の産業(実務)翻訳と外国語での文章作成について、かなりおおざっぱな言い方をすると、

(1)英日翻訳(英語→日本語)の場合、「英語を読んで理解する」のに8割、「日本語で表現する」のに2割。

(2)日英翻訳の場合、「日本語を読んで理解する」のに0・5割、それを「英語で表現する」のに9・5割

また

(3)自分で書くことの内容が分かっているときに英語で文章を書く時の負荷は、「英語で表現する」のに10割。ただしここではそもそも何を言いたいのか(書きたいのか)が最も重要で、これは機械翻訳とは無関係の世界。

というのが、成果物作成にかかる労力または時間の負荷割合かな。つまり、これまでの翻訳(または文章作成)では(1)では「ソース言語(英語)を読めること」、(2)では「ターゲット言語で表現すること」が最も重要だ(った)。

一方(3)では、日本語で書くことができてしまうと(これが最も大変なのだけれど)、その後の英訳では(2)と同様、「ターゲット言語で表現すること」が非常に大変な作業となる。

以上の理解を踏まえ、さらにいくつかの文章をチャットGPTに訳させ、あるいは訳出後の修正を試みてみて(英日、および日英)の実感を述べてみたいと思う。

日本語が母語で、英語がそこそこできる(TOEIC900程度)僕の場合、現段階での結論は以下の通り。

(2)と(3)はチャットGPTに英訳させてその成果物(英語)を修正していく方が、最初から自分の英語力を頼りに訳すよりもはるかに効率的で、かつ効果的だ。

(1)ではチャットGPTは補助的に使えるが、全面的な依存には無理がある。なぜなら
(2)(3)の場合はソース言語を改めて理解する必要はないが、(1)は主に原文(英語)を自分がきちんと理解しないと翻訳のチェックもままならないからだ。

そして(3)の場合に最も重要なのは、「何を言いたいか」であり、これは機械翻訳とは無関係

だということ。

英語が母語の日英翻訳者の方は逆ではないかな。

あくまでも現段階での肌感覚です0

tbest.hatenablog.com


(なお、僕の日英(日本語→英語)翻訳に関するその他の意見や経験談は、上のタイトルの下側にある「日英翻訳」をクリックしてください。また機械翻訳に関しては同じく「AI(機械)翻訳」をクリックしてください。一番古いのは2014年時点での記事を読めます)。