金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「五感をフル稼働して自分なりの基軸を持て」:チャットGPTにどう対処すべきかに関する3つの記事(2023年6月1日)

チャットGPTにどう対処していくべきか、に関する興味深い記事が3つ立て続けに出たので紹介しておく。

(1)「わが子をチャットGDPを使いこなせる大人にするためには、小さい頃は「サル」として育てる必要があると思います。(中略)鉛筆を使う。消しゴムを使う。物差しをしっかり押さえて線を引く。こうした原始的な体験を積むことが大事、というところに戻るのではないかと思います」
(「チャットGPT 子どもに使わせるべき? 「東ロボくん」開発主導 新井紀子さんに聞く」 2023年5月29日付朝日新聞

「サル」として育てるとはどういうことだろう?同じ記事の中で新井さんはこう言っている。「自分で暑さ寒さを感じるとか、こうすると転ぶんだなとか、昆虫が動く様子をずっと見て「動く」ということの統一的な原理を認識するとか」。そういう体験がないと二次元の世界を自由奔放に動き回れない(=チャットGPTを使いこなせず、振り回されてしまう)とおっしゃっているのだと思う。

www.asahi.com

(2)「つまるところChatGPTは、ネット上の膨大な情報を収集して私たちの質問に「適当に」回答する記号操作にたけた装置だ。「適当に」というのは、要求に合っているという良い意味と、その場を取り繕ってそれらしく見せるという悪い意味の両方である。
この革命的な技術を使いこなすために私たちに必要なのは何か。その「適当さ」を見抜き、だまされないこと。そしてそれを、私たちに必要な、良い意味での「適切さ」に変換する能力を身につけることだ」
佐倉統東京大学教授「生成AIの衝撃と教育(上) 答えの「適当さ」見抜く力を」2023年5月30日付日本経済新聞
とした上で佐倉教授が主張するのは、「さまざまな情報の中から自分たちにとって有用で意義のあるものを、事実と証拠にもとづいて合理的な判断基準で選抜できる力を身につけることである。そしてそれは、本を読んで必要な知識を取捨選択して身につける能力と、根っこの部分では変わりはない」(同記事)。
「事実と証拠にもとづいて」を子どもの教育に当てはめるならば、「『サル』として育てる必要がある」ということなのだろう。昨日の新井和子先生と全く同じことを主張されていると思いました。

www.nikkei.com

(3)「今、世の中はインターネットで情報を得て、AI(人工知能)で瞬時に答えをはじき出す。もちろん、文明の利器はありがたく、将棋界もその恩恵を受けている。だが、この時代だからこそ人が考えることに意味があるのではないか」
(「考え抜く藤井名人、無限の可能性」 寄稿、師匠・杉本昌隆八段 2023年6月2日付朝日新聞

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