金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

出版翻訳

産業翻訳と出版翻訳のバランス

実務翻訳の仕事を1件仕上げたところ。 昨日は久しぶりに本だけで1日。 普段は実務翻訳の締め切りの合間に時間を作り、ないときには夕食後に無理に起きて手がけている書籍翻訳。昨日は本当に久しぶりにゆっくり(と言っても6時間強程度?)書籍だけに取り組み…

「きれいごと」だからこそ成功する

昨日、NHKのプロフェッショナルで知った鎌倉投信の新井さんの『投資はきれいごとで成功する-』が届く。 本を手に取り、書名を改めて見て「あっ!」と思った。『世界でいちばん大切にしたい会社』の書名「きれい事の経営-コンシャス・カンパニー』にしとき…

本の進捗(『ティール組織』の翻訳②、ほか)

某出版社へ「予定より4カ月遅れの目処」とのメールを打つ。毎月経過報告をしており、先方も僕がそこそこ忙しいことを理解しており特に驚きはないとは思う。きちんと報告しているのでご心配なくとも言われているが、そうはいっても心苦しい。仕事に手を抜いた…

『金融英語の基礎と応用~』の裏話(2016年4月)

『金融英語の基礎と応用』をつくっていたほぼ3年間、普通に日本語で書かれ、話されている経済用語の中で「これは!」と思う表現を毎日メモっていました。日本語で自然と目や耳に入ってくる言葉が英語でどう表現されているかを確認(←これは自分の仕事の中か…

本が出版されたとたんにセコくなる(2016年2月17日)

おはようございます。 [昨日の自分] 起床:5時25分体重:78.0kg、体脂肪率22%、体脂肪量17.2kg前日比:-1kg、-1%、-0.5kgピーク:体重は78.6kg(8/24/14)脂肪量は19.9kg(12/7/14)間食:柿ピー一袋。運動: スクワット90回、ウォーキング2.5キロ翻訳…

『金融英語の基礎と応用 すぐに役立つ表現・文例1300』 まえがき

はじめに 本書は金融関連のレポートで見かける典型的な表現や用語を、言い回しや重要用語ごとにまとめた例文集です。一つの例文は英語と日本語の対訳になっています。想定している読者層は、金融翻訳の初級~中級者で、主にファンドの運用報告書や投資レポー…

「気がかりだったこと」(2015年12月2日:『ティール組織』裏話)

実務翻訳に忙殺され、その合間に書籍が出てという大きな波が一応収束したのだが、僕の心にはここ2ヶ月ずっと引っかかっている事があった。 訳書2冊に手が着いていないということである。 「2冊」と言っても1冊は今年1月に校了し、出版社の事情で延び延びにな…

「なにくそコンチクショー」(『金融英語の基礎と応用』の執筆を支えたのは意地)

やっと著者向けの見本本がきた。 本当は23日までには着くはずだったのだが出版社の手違いで最初の2冊が着いたのが25日(ひとまず編集部にあるものを2冊宅配便で送ってもらった)。これは2冊ともそのまま鞄に突っ込んで翻訳祭の前夜祭で1冊進呈、もう1冊も同…

『ティール組織』リーディング依頼⑥

(前書き的な後記:以下の文章の「P社」とは最初に『ティール組織』のリーディングを依頼してきたJ社、「L社」とは英治出版さんのことです:2021年8月21日記) 午後にP出版社のKさんから電話。「鈴木さん、あの本にビッドが入ったとエージェンシーから…

「一粒で何度もおいしい」(金子靖翻訳教室の魅力)

昨日は翻訳教室第6回の復習がようやく終わる。この回は自分の訳と試訳に加え、勉強会でいただいたIさんとOさんの訳とも比較した。Iさんは先生が「空前絶後」と評されていた、おそらく金子教室の中でベストの生徒のお一人。Oさんは経営者だが10期の時に先…

「翻訳について語るとき僕らの語ること ~日本文学のビートとリズム『羅生門』から『1Q84』まで〜」

ジェイ・ルービン×柴田元幸「翻訳について語るとき僕らの語ること ~日本文学のビートとリズム『羅生門』から『1Q84』まで〜」 昨日は、セミナー1時間30分のうちの大半が村上春樹の短編小説と、今回のプロモーションの対象である『日々の光』の日英(日本語…

柴田先生の翻訳原稿は手書き

先日の柴田元幸先生のトークショーで最後に朗読してくれた短編、「先ほど訳し終えたばかり」の翻訳はノートに手書きだった。 僕は前から2番目の席にいたのでよく見えたのだが(というか全体で3列しかなかったので全員がわかったはずだけど)、ページを繰ると…

金子靖先生の翻訳教室についてー講師が「神」ではない教室の魅力(2015年6月18日)

昨日は金子靖先生の翻訳教室、2期目の最後の授業だった。ひいひい言いながら12回の課題を全部出し、出席しました。 川月現大( 風工舎代表)さんに紹介されて特別教室に参加してから1年。毎回何が何だかわからない原文を解読するところから始まり、月末にな…

リーディングを納品する(『ティール組織』リーディング依頼⑤)

先月中旬に無茶振りされた(と思っていた)Reading、結局会議の都合でGW後に延びた昨日納品した。所要時間39時間。A4で9枚。報酬が2万円なので時給511円。この社は翻訳が決まってもReading料が支払われるが、「本になったらReading料は印税に含めます(つま…

実務翻訳者の甘え?

某出版社に電話する。2月に脱稿した原稿がどうなったのだろう?とちらと不安になったから。 僕の所に来る本は期間制限の甘いものが多い。というか「本職が実務翻訳なので半年から1年ぐらい見てもらう必要があります」と出版社の方に言いまくっているせいもあ…

リーディングで悩む(『ティール組織』リーディング依頼④)(2015年4月)

リーディングを頼まれている本を読み終えて悩んでいる(会議が1回ずれたせいで締め切りが伸びて余裕ができた)。 筆者の信念も志も素晴らしく、経営者の目指すべき正しい方向を目指していると思うのだが、やや観念的に過ぎるのではないか?果たしてこれを訳…

地元の書店に直接営業する

証券会社の社員やっていたので飛び込み営業には抵抗はないが、そうは言っても書籍営業の作法はあるだろうとH書房の編集者に2日ほど前に聞いてみた。 「営業の者も付いていった方がよいので今しばらくお待ち下さい」 じぇじぇじぇ、そんな大事(おおごと)じ…

寄贈本を受け取る人の気持ち(2015年4月19日)

今日の日本経済新聞の最終面でフランス文学者の鹿島茂さんが引退した学者にとっての最大の悩みは蔵書の処分だと書いていた。もはや大学にはスペースがないので引き取ってくれず、古本屋に売ろうにも今日日の学生はネット検索オンリーで古本を資料にしないの…

翻訳期間(予定)を引き延ばしてもらう(『ティール組織』リーディング依頼③) 

企画が通ったら私が翻訳を担当する前提でのリーディングの仕事を受ける。仕事を受けるに当たって編集者の方にまず電話。「仮に私が翻訳することになったら何カ月ぐらいを想定されているでしょうか・・・?」「そうですね、3ヵ月ぐらい」。やっぱり 「それは…

「気合い入る」(『ティール組織』リーディング依頼)②

「○○社のOです。ちょっとご相談したいことが・・・」 一昨日私にリーディングの無茶振り(でもちゃんとフォローをしてくれました)をしてきた編集者のOさんだ。ま、まさか来週火曜日の締め切りを日曜日にしてくれというんじゃないだろうか、とおそるおそる電…

スケベ心に負ける(『ティール組織』リーディング依頼を受けた時) ①

どうしようもなく忙しいのに仕事を受けてしまうことがある。(1)断れない先のとき、(2)「どうしても!」と頼まれるとき、(3)こっちにスケベ心があるとき。 昨日は(3)のケースだ。 某社の編集者Oさんから電話。「鈴木さん、お久しぶりです!」「…

下訳について①

妻は絵画教室に通っている、先日、自分が描いていたある絵の仕上げの2段階前ぐらいに先生がかなり手を入れたらしいのだが、「アタシはそれが納得できなかったので」と妻は元のアイデアに戻したとのこと。出来上がりの絵を見た先生はとても誉めてくれ、何かの…

「弟子に下訳させて自分の作品として出すことの意味は・・・」(2015年4月)

僕のFBの壁紙(っていうのかね?)の絵、仕上げの2段階前ぐらいに先生がかなり手を入れたらしいのだが、「アタシはそれを気に入らないので」と妻は元のアイデアに戻したとのこと。出来上がりの絵を見た先生はとても誉めてくれ、何かのコンクールに出しなさい…

「著者謹呈」入りの中古本(2015年4月2日)

先週の「朝まで生テレビ」が実に面白かった、というより出演者のコミュニケーション能力の高さに圧倒されたので、出演者の著書を順番に読もうと思ってある人の本をアマゾンで注文した。10年以上前の本で絶版だったため中古だった(1円)。昨晩到着して本を開…

翻訳スピードの鈍化(2015年2月21日)

ちょうど1年前、某出版社からとてつもなく厚い本のオファーがあった。この時は版権が取れていたので僕がイエスと言えば決まりだったのだが、2週間考えて泣く泣く断った。理由は「15万語を半年」と言われたから(その後20万語近いことがわかった)。その時の…

「得した気分」(印税の不労所得感)(2014年11月)

・・・帰宅するとプレジデント社から封筒が。先月出た『Thinkers 50 ストラテジー』の初版分の印税支払いの案内だった。 「得した気分」というのが肌感覚だ。本の印税はいつもそうです。 なぜ「得した気分」「不労所得」に感じるのかと言えば、これで食って…

経験を積むほど型にはまりやすくなる

(以下引用) - 柴田先生のように、本当に翻訳書をたくさん出している方は、当然翻訳はうまくなると思いますし、英語力もつくと思います。柴田:そう思いたいけどね(笑)。まあ少なくとも翻訳が最初の頃より早くはなりますよね。「こういうときにはこうす…

「金子靖先生の翻訳教室(の感想というか概要、というか)」(2014年10月)

昨日から翻訳教室の復習を少しずつ始める。半年受けて、課題を全部提出したのが唯一の達成感だった情けない生徒だが、一応特徴(概要)と感想をまとめておきます。 (1)テキストが(私には)極端に難しいテキストはほとんどが小説で、書評と演説が1回ずつ…

出版社に電話をして赤っ恥をかいた話(2014年10月)

「え~もしもし、翻訳者の鈴木です。今産休のSさんの代わりのUさんお願いします」「はい、Uです」「こんにちは。あの~、7月に増刷になった分の印税はいつお支払いいただけるのでしょうか?」「は?」(ちょっとこちらムッとして)「ですから、7月に増刷にな…

翻訳以前の問題(金子靖翻訳教室での私へのコメントより)

金子先生の教室、昨日の課題では私の訳文には次の3つの問題があった。 (1) 時制をつい読み過ごす。(2) 他動詞で書いてあるものを原文の最も重要な場面転換であることを意識せずに自動詞的に訳す。(これは辞書を引いた上でこう訳した)(3) 原文の全…