金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

経験を積むほど型にはまりやすくなる

(以下引用)
 - 柴田先生のように、本当に翻訳書をたくさん出している方は、当然翻訳はうまくなると思いますし、英語力もつくと思います。
柴田:そう思いたいけどね(笑)。まあ少なくとも翻訳が最初の頃より早くはなりますよね。「こういうときにはこうすればいいんだ」と。試行錯誤の段階をある程度省略できるようになるから。でも、逆に何か「壁」のようなものがついてしまってマズいんじゃないかと思うことも時々ありますね。above allと来たら即「何よりもまず」と訳してしまう、とかね。一度「この言葉はこう訳せばいいんだな」と定まってしまうと、もう文脈も考えずに、自動的にそう訳してしまう。これはマズいです。やはり原文のトーンを聞かないといけません。だから、翻訳は数をやればうまくなるかどうかも実はわからない。逆にある種の「型」にはまって仕舞う危険性があるかもしれません。これって人生すべてそうかも(笑)。
(引用終わり)
「君は『自己消去』できるか? ゼロ志向の翻訳ゲーム、最適プレイヤーかく語りき」 柴田元幸 聞き手=金子靖、『ユリイカ』2005年1月号p41。
一見当たり前のことをおっしゃっているのですが、これは特に我々実務翻訳者にとって意味の深い発言ではないかと思った。

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