金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「金子靖先生の翻訳教室(の感想というか概要、というか)」(2014年10月)

昨日から翻訳教室の復習を少しずつ始める。
半年受けて、課題を全部提出したのが唯一の達成感だった情けない生徒だが、一応特徴(概要)と感想をまとめておきます。

(1)テキストが(私には)極端に難しい
テキストはほとんどが小説で、書評と演説が1回ずつだったが、一読してわかったものは一つもない(辛うじて演説がわかったかな)。実務翻訳と違ってある分野の専門知識を要求されるわけではない。純粋に英語力と英米文化(小説)に対する好奇心の強さを試されているような気がした。仕事の忙しさにかまけて時間がかけられなかったのが心残りと言えば心残り。もっとも先生曰く「時間がないのは皆同じです」言葉もない。ただ、先日の飲み会で9,10期に参加されたLさんが「1回目ではわからず、2回読んで、3回読んでぼんやりとわかってきて・・・」と仰った時に皆さんうなずかれていたので俺だけじゃなかったんだと思ってほっとした。

(2)添削と解説がとことん詳しい
課題のワード数が700~800ワード。そこに事細かに丁寧な指導が入る。私にとって「懇切丁寧」ということはつまり「お前なにやってんだよコラ~」といちいち言われているのに等しいのである。しかも添削の後に先生ご自身の授業ノートと思われるような解説がつく。私がぼや~っとしかわからなかったところも解説してくれる。授業は後ろの解説を膨らませて、ビビッドに話してくれるという感じ。従って自分の添削と後ろの解説を読めば授業内容がほぼ再現できる。さらにそれ以外に授業では取り上げない(ことになっている:実際には「大事なことがあるので」とその部分が授業で取り上げられることもありました)追加課題が同じくらいあってこれも同じくらい丁寧に添削してくれている(らしい。私は課題しか取り組めなかったのも反省)。

(3)これ以上はわからないという限界を教えてくれる
私が考えても考えてもわからなかったことのうち3分の2ぐらいは先生も「これはわからない」と仰る箇所があったのはちょっと救われたような気が。ただしそういう部分には先生が仕事上お付き合いのあるネイティブの方に質問した答えを紹介してくれる。なお授業でメインに取り上げるのは試訳ではなく、先生が別に依頼した学生さん(大学生だそうです)が提出された訳文を画面上で添削していく形を取る。生徒の回答ではないこともありかなり手厳しい批評(もちろん誉めることもある)で、同じ箇所を間違えた時などは自分が叱られた気分になる。

(4)誉め上手/謙虚
例えて言えば、ノックでボコボコにした後で、「倒れずによく頑張ったね!」と言われるような「救い」がある。さらに数少ないよい点を挙げて「素晴らしい!」「うまい!」と書いていただくこともほんの時たまありました。その上で私向けの適切なアドバイスも書いてくれる。「多く読んで、辞書をよく引きましょう」という基本に立ち返るべきことを改めて反省させてくれる。授業中も優れた回答を示しながら「試訳よりもこちらの方がずっといい」「試訳はここが問題」と客観的に話してくれるのはとても好感が持てた。

(5)飲み会もためになる
授業が終わってからなので9時半ぐらいから飲み会が始まる(任意参加)。小説家や翻訳家とのやり取りに関する「ここだけの話」をたくさん聞かせてくださいます。私はいつも1時間ぐらいで失礼していたが、毎回楽しみだった。ちなみに先生は相当の酒好きであります。

(6)生徒のレベルが極端に高い
授業を進めながら先生は部分部分で優れた答案をスクリーンに写してくれる。筆頭は「こまった時のIさん」で、先生も「私が見てきたあらゆる翻訳者の中でもトップクラス。私が弟子入りしたい」と言われるようなほれぼれするような訳文。この前の飲み会では9期にもすごい人がいたらしく、Iさんは目立たなかったと別の生徒さんがおっしゃていた。先生いわく「彼女は本当に伸びました」とのこと。もちろんIさんだけでなく、毎回多くの方の素晴らしい回答例が示される。「なんなんだこのクラスは?」と本当に思った(ちなみに、6回の授業があって私も1度か2度ほんの一部をご紹介いただいたかなあ)。

(後記)質問がほとんど出ないのはかなり日本的としても、時たま出る質問、時たま先生から生徒に投げ掛けられる質問への受け答えが感心するものが多かった。この手の教室によくある「自分の存在感を誇示したいだけの質問」「質問ではなくて自説の展開」「ちょっと調べればすぐわかる質問」は皆無だった。それだけでも集まっている皆さんのレベルの高さを感じました。

(7)授業料がバカ安い
・・・とこれだけをやってくれて半年の授業料が1万3000円とバカ安。先生曰く「免停1回分」だそうです。普通の翻訳学校であそこまでやったら3倍から4倍は取られるだろうと思う。

とまあこんな感じでした。最高で2期までしか受けられないので毎回半分ぐらいは入れ替わるのかな?今期の反省を元に来期こそは頑張って先生に「伸びましたねえ、鈴木さん」と言われるようになりたいと思います。ファイト湧いてきたぜ。