金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

スケベ心に負ける(『ティール組織』リーディング依頼を受けた時) ①

どうしようもなく忙しいのに仕事を受けてしまうことがある。(1)断れない先のとき、(2)「どうしても!」と頼まれるとき、(3)こっちにスケベ心があるとき。

昨日は(3)のケースだ。

某社の編集者Oさんから電話。「鈴木さん、お久しぶりです!」「お~!!!」

彼とは何度か飲みに行ってグテングテンに酔っ払ったことがある。

「実はこういう本がありましてね」「なになに?」
「・・・・で、;;;で、・・・とまあ評判なわけですよ。面白そうでしょ!」
「え、それ僕に訳させてくれるの?」
「い、いや、その一歩手前で・・・」

要するに企画会議に通すのでリーディングをしてほしい、との要請だった。期限は1週間。僕はその前に大きな締め切りが1本控えている。

「だけどさあ、そこまで詳しいんだったらあなた自分で書けばいいじゃん」
「いや、時間がなくて・・・」

こっちも時間がないんだけど。

「・・・それと僕は思い入れが強いんですが第三者の目も必要で・・・」

俺から言わせりゃヘコ理屈だが、一応筋は通っている。

「資料いろいろ送りますから、是非」

決まれば僕が訳すことになるらしい。

「で、どれくらいの厚さですか?」「本文300ページ。結構行間詰まってます」

あ、6万~9万ワード、540時間コースか。何で俺の所にくるのはいつもいつも分厚いわけ?とか思いつつ・・・

「訳が始まったらいつまでに?」
「できれば年内・・・、鈴木さんのお知り合いとかに頼んで共同で仕上げるとか・・・」
「それって下訳ってこと?」
「いやですよね~」
「あり得ません!!」

「忙しい!!」って断りゃいいのかもしれないが、こういう時って、売れっ子翻訳者ではない自分の悲哀を感じますなあ。リーディング出したからって企画会議通るかどうかわからないもの。ただK君の思い込み相当強いし。だったら自分で書けよとおもわんでもないが、きっと彼も追い詰められているんだろう。

というわけで受けちゃったわけっすよ。リーディング。

やっぱやりたいんだよねー、本。僕レベルだと全然儲からないんだが。そのスケベ心と弱い立場に負けちゃった自分。

でもいつやろう?

と考える前にまずは今日の2時までの締め切りとその後!QA1本を片付けないと。
リーディングのことはその後に。翻訳時間が13時間を超え、既に体力の限界が近づいている。

・・・というわけで、本日も皆さんにとって素晴らしい1日となりますように!!

(後記)完全に忘れていたのですが、今振り返ると、この本が『ティール組織』でした。スケジュール的にもドンピシャリ。この後の展開は↓をどうぞ。

「気合い入る」(『ティール組織』リーディング依頼)② - 金融翻訳者の日記

これら一連の書き込みのことは完全に忘れていました。フェイスブックの「思い出機能」に感謝。そして関係者の皆様にも(2021年4月15日記)