金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

寄贈本を受け取る人の気持ち(2015年4月19日)

今日の日本経済新聞の最終面でフランス文学者の鹿島茂さんが引退した学者にとっての最大の悩みは蔵書の処分だと書いていた。もはや大学にはスペースがないので引き取ってくれず、古本屋に売ろうにも今日日の学生はネット検索オンリーで古本を資料にしないので古本屋も買い取ってくれないのだとか。

「本をもらう方は基本的に迷惑」
「本は贈るべきものではない」というのが妻の持論です。

「だって趣味の押しつけじゃん」

最初の本の翻訳が出たころは自分が興奮しているのでそういう感覚もなく、昔は発売日に20冊近く知り合いや先輩に送ったこともあった。もちろん費用がかかるので経理担当専務の妻に請求書を渡す。最初の頃は黙って処理してくれていたが、何回目かの時に、上の持論を展開された上でこう言われた。

「お金がもったいないって言ってるのじゃないの。自分の本だからあなたが読んでほしいという気持ちもわかるけど、もらった方の気持ちを考えてあげてほしい」なるほどその通りだと思った。

というわけでここ5~6年はやむを得ない場合を除き、①実務翻訳の営業用資料として「箔をつける」ためにお送りするか、②もらっていただけそうな所を慎重に選んで、手紙を添えて贈らせていただくことにした。

余談だが、実は定価1000円だと著者割引は200円なので、アマゾン経由で送った方が安い。1日に20冊を一遍に注文するとアマゾンの順位が一時的に跳ね上がります。そのことに気づいて編集担当者に「あれ僕の自己買いですからぬか喜びしないでね」と電話したこともありました。

とまあそんなわけで仕事の合間に「もらっていただくための」手紙を書きつつ少しずつ贈らせてもらうことにします。