金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

翻訳以前の問題(金子靖翻訳教室での私へのコメントより)

金子先生の教室、昨日の課題では私の訳文には次の3つの問題があった。

(1) 時制をつい読み過ごす。
(2) 他動詞で書いてあるものを原文の最も重要な場面転換であることを意識せずに自動詞的に訳す。(これは辞書を引いた上でこう訳した)
(3) 原文の全体の流れをしっかりと把握していないために最後の一文(最も重要な落ち)を理解できなかった。(辞書を引いてもわからなかった、というかそもそもこの小説の主人公の性格を把握していないのでいくら引いてもわかるわけない)

要するに、全然わかっていなかったということであります。以下、金子先生からの私へのコメントを一部書き写す。

1・・・自分で都合良く判断せず、原文から上がる感じをすくい取って・・・
2・・・英語を正確に読み取ることをまず考える。特に助動詞、時制など、基本的な表現に注意する。
3・・・くれぐれも自分の都合のよいように解釈しない。・・・

いずれもいちいちもっともなご指摘で、翻訳(日本語にする)以前の基本中の基本であって、普段自分ではそうしているつもりなのだが、結局昨日の課題をちゃんと訳せなかったということとはその基本ができていないということだ。

くやしいがこれが現実なのだ。

1回目の授業の折にも思ったことだが、私の場合英文を読む前に予断をもっていることが多いと思う。

たとえば金融関係の翻訳をしている方なら、先週末(水~金)は今後の金融政策を考える上で極めて重要な会議が開かれており、そこでFRBアメリカの中央銀行)の総裁が何を話すかが注視の的だったことはご存知だろうと思う。私が先週末から今週末にかけて訳しているマンスリー・レポートは彼女(イエレン議長は女性)がその場で行った演説の内容をどう解釈するかがキモになる。だからまず私は彼女の発言内容を読み、彼女の発言に関する日本語と英語の報道内容を読み、モーニング・サテライトなどのテレビニュースで内容と世の中の把握した上で、それとの対比でマンスリー・レポートを読む。だからその書き手(英語のネイティブ・スピーカーでないことが多い/もちろんネイティブ・チェックは入っているが)の英語(たいていは英語自体は簡単です)が少々間違っていても、時制を書き間違っていても、あるいは事実認定を取り違えていても、事実ありきで「解釈」し、場合によっては原文を「修正して」訳していく(もちろんそうしたことはお客様に報告する)。失業率も就業者数も、GDPも株価も事実ありきから始まる。お客様からもそういう姿勢を期待されている(と思う)。

しかしこういう姿勢は私の英語力を歪める(そうして落とす)大きな要素になっていると思う。そのことを思い知った。

改めて恥を知り、勉強し直そうと思います。