金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

(H+H)MかH+(H+M)か:共通関係(翻訳ストレッチの教材から)

ある程度の上級者(TOEIC850以上ぐらい?)になると、経験的には知っているが何となくあやふや、という文の要素の共通関係があって、その部分を権威ある書籍(辞書でも文法書でも参考書でも)で明言されるとホッとしたりする。今回はその例。

(以下引用)
useful plants and animals(訳に立つ植物や動物)のusefulはplantsとanimalsの双方にかかると考えられる。・・・(中略)・・・ところが語順が変わってplants and animals useful……となると、これは(H+H)Mと解して「有用な植物や動物」とするか、H(H+M)と介して「植物や有用な動物」にするかが大きな問題になる。英語は語句の平行的な対応関係を重んずる言語であるから、この場合は、

➀まず(H+H)Mという均衡の取れた形で考え、
②この解釈で意味の通らぬ場合に限ってH+(H+M)の解釈をとるべきである。

(例文)Biological science must have begun with observation of plants and animals useful to man.(訳:生物学は、人間に役立つ植物や動物の観察からはじまったにちがいない)

(参考) Her eyes were constantly straying past him to the open window and the lawn beyond. (訳:彼女の定まらぬ視線は、たえず彼の所を過ぎて、開いた窓へ、さらにそのむこうの芝生へと向かっていた)(引用ここまで)
伊藤和夫著『英文解釈教室 改訂版』(研究社)pp274-275)

なお、柴田耕太郎さんは、「英文解釈教室ノート31」で、

「(1) (plants and animals) useful to man
(2) (plants) and (animals useful to man)
どちらをとるかは、文脈・常識・事実依拠」と指摘しておられますが、これは上級者向けの指導。僕は伊藤先生のステップを踏んだ方がよいと思います。

www.kenkyusha.co.jp

ちなみに、この共通関係については、多田正行著『思考訓練の場としての英文解釈(1)』(育文社)では第1章「因数分解型STRUCTURE」全体を使い、極めて難解な英文を用いてこれでもかこれでもかと出てくるので、興味のある方はどうぞ。