文法書は、さまざまな切り口の文法項目(五文型とか関係代名詞とか、品詞とか・・・)によって章立てされているので、一つの語の役割が一冊の中にばらばらに記述される。
一方、辞書は一つの語の意味や役割がすべて同じ語の元に記述されているが、何しろ(その辞書の編纂者が考えつく)すべてなので、その中の濃淡や意味合いを区別しにくい。
そうした時に最も混乱しがちなのが機能語で、その代表格がasだと思う。
僕の持っている参考書類の中で、asについて最も包括的に説明してくれているのが(僕が重要だと思う順番に紹介すると)、
① 中原道喜著『新英文読解法』(現在の版元は金子書房)「"as"の用法」pp76~79
「”as”は二文字の小さな単語だが、活用度は最も高い。ときには品詞や用法の区別を誤りやすい場合もあり、また英語のプロをもとまどわせる曲者ぶりを示すこともある。そういった注意すべき場合を含め、必要・十分な用法を次にまとめておく」(同書p76)
*各種文法書にバラバラに書かれているasに関する説明を「前置詞」「関係代名詞」「接続詞」に分類し、例文を挙げながら丁寧に説明してくれるので、何度も読めば定着しやすいと思う。
②小倉弘著『難構文のトリセツ』(かんき出版)「3-7 (just))as~, so...」「3-8 対比のas」「3-9 名詞限定のas」「3-10 C(=形容詞)as SV」pp62-69。
「asという語は品詞だけで4つあり、接続詞としての使い方だけでも10個近くありますが、原義は"同じ"(all so)ということです(alsoも同じ語源)。品詞の種分けと判別法は次の通りです。
(1)前置詞:asの直後が名詞化形容詞のみ
(2)副詞:as~as...<原級の一つ目のas>
(3)接続詞:asの直後はSV~(原則的に完全文)
(4)関係代名詞:as節内で不完全分(名詞が欠落している)」
(同署p62)
*文章の読み分け方を懇切丁寧に説明してくれます。非常にわかりやすいけれども4節に別れているので包括感はやや欠けるかも。
③ 柴田耕太郎著『翻訳力錬成テキストブック』(日外アソシエーツ)[課題2-8 研究] 「as it is のいろいろ」pp171~172
「様態の接続詞as=in the waythatまたはin the way in which と書き換えるとわかりやすい・・・itが漠然とした状況下、具体的に指す物があるかで、訳が変わる」(同書p171)
*ポイントをas it isの訳に絞って7つの文例につき(したがってここで説明されるasは様態の接続詞)、まず訳例を示した上で、asは文章のどこにかかるのか。itは何を指すのか、漠然とした状況かを説明してくれる。
④中原道喜著『誤訳の構造』(金子書房)「例文80解説」pp111~112。
「as it is は文脈によってさまざまな意味関係を表す。主な場合を例示:」(同書p111)
*③と同じ例文を使ったas it isに関する中原さんの説明、というより『翻訳力錬成テキストブック』が『誤訳の構造』を出所として同じ例文について説明している、とうのが正確。
僕が辞書や文法書よりも受験参考書の方が参考になることが多いと思うのは、以上のような説明を読んだとき。いずれも書店で手にとって読んでからご判断を。