金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

対比概念を意識する(翻訳ストレッチ教材『例解 和文英訳教本』からの学び)

本日の翻訳ストレッチからもうひとつ。和文英訳の教材から。

(以下引用)
課題文

(1)我々は病気になってはじめて健康のありがたみを知る。
(2)我々は言葉が使えるという点で動物とは違う。
(引用ここまで。ただし(2)は鈴木が若干変更している)。
(小倉弘著『英文表現力を豊かにする 例解 和文英訳教本』(プレイス)p264)

(1)の解説で筆者の小倉さんは、

It is not untill we get ill that we realize how important good health is. (英訳案A) と言う英訳案を(△)とし、「英語でweというときは、they という言葉の対比概念として使っていることを意識しなければならない」と指摘し、(英訳案A)では、

「我々は病気になってはじめて健康のありがたみを知る」が「あいつら(they)は病気になっても健康のありがたみが分からない」という意味が含意されているというのだ。

It is not untill you get ill that you realize how important good health is.(正解)

一方、(2)の課題文は動物という対比概念が意識されている文なのでそのままweを使っても日本語との間にズレが生じないのだ、と。

We are different from animals in tha we can use language.(正解)

このように本書は日本語にも英語にも表面的には現れていない(場合のある)対比概念を意識せよと解く。どういう対立概念があるのか(ないのか)は一つ一つ確認する必要はあるだろうが、何しろ、少なくとも僕は意識したことのない、新鮮な英文(日本文)のとらえ方で非常に感銘した。