金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

同じ原文が複数の参考書(『新訂 英文解釈考』と『英文標準問題精講』)で出題されていた例

今日学んだ『英文解釈考』にあった次の英文

(原文)(第1文)Questions of education are frequently discussed as if they bore no relation to the social system in which and for which the education is carried on. (第2文)This is one of the commonest resasons of the unsatiffaction of the answers.(佐々木高政著『新訂 英文解釈考』(金子書房)p105)

この一文目について、僕は『通訳翻訳ジャーナル』2022年冬号(イカロス出版)、「簡潔な日本語訳を書くためには『英文の正しい理解が必須』」の中で、

「関係代名詞の部分をそのまま訳そうとすると、『教育がその中でそのために行われる社会組織』となって意味が取りにくくなります」と書いて、次の訳文を紹介した。

(訳文)(第1文)教育はある社会組織の中でその社会組織のために行われるのに、その社会組織とはまるで無関係でもあるかのように教育の諸問題が論じられることがしばしばある。(第2文)これが、出された解答が意に満たないものであることの最もありふれた理由の一つである(原仙作著 中原道喜補訂『英文標準問題精講』(旺文社)pp21-22)。

さて、『英文解釈考』で示された「意味(=訳文)」は次の通り。

(意味)(第1文)教育の問題を、教育がその仕組みの中でまたそれに奉仕するために行われている社会制度とはなんら関係をもたないかのように人は論じることがしばしばある。(第2文)これが、その答えがぱっとしない理由の一つだ。(この文の句点は鈴木が入れた)

僕は(第1文)は、『英文解釈考』の訳が日本語としてはやや読みにくく、『英文標準問題精講』の方が分かりやすいと思う。ただし第2文は『英文解釈考』の方がしゃれた日本語ではないかと思う。

なお『英文解釈考』にはなぜか出典がなかったが『英文標準問題精講』にはT.S.ELIOT, Modern Education and the Classicsとありました。

同じ英文が複数の参考書で取り上げられることが時たまあり、比較すると面白い。

自分用のメモのシェアということで(この投稿のためにまとめると復習になるのです)。