金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

ChatGPTを使った和文英訳から学んだこと、気づいたこと(2023年8月30日)

僕は普段、ふと思いついたことを推敲も何もせずにフェイスブックに書く。即興で書く文章の練習だと思っています。

その後、記録に残しておこうかなとおもったものをブログに残す。・・・これをここ2~3年続けてきました。

今年の春以降、ブログに書いた記事のうち、外国人に読んでもらえればラッキーみたいな乗りで、その記事をChatGPTに英訳させて仕上げるという作業を始めた(「誰かに読まれるかもしれない」と思うことは、(恥をかきたくないという見栄も含め)文章に対する姿勢に影響してくると思っています)。

もちろん、楽しいからやっているんですが、ChatGPTによる英訳を始めてから確認できたこと、わかったこともある。

①確認できたこと。
ChatGPTの英語はネイティブの英語だ、ということ。つまり、書き起こしの英語は間違いなく、僕があれこれ調べたり検索したりしてつくった英文よりもはるかに優れた自然な英語ですし、冠詞や前置詞を含む細かな英語表現も完璧だと思います。

②あらたに分かったこと。
(a) ChatGPTには誤訳が結構ある、ということ。原文の読み違えはもちろんのこと、訳抜けも散見される。だから翻訳された英文を入念にチェックしないと、情報の正確さはもちろんのこと、文章のメッセージが伝わらなかったり、ぼやけたりすることが多いということだ。

(b) このことはつまり、ChatGPTを使いこなしてネイティブ並みの英語に仕上げるには、訳された英語を評価し、代替案を考える能力がかなり必要だ、ということを意味する。元々の書き手が自分ではなく、他人の書いた日本語を英語に翻訳する場合には、英訳された文章が、原文である日本語の意味をきちんと伝えているかの評価も加わるから、英語力のみならず日本語の読解力も必要だろう。

(c) もう少し踏み込んで言うと、今後の和英翻訳(日本語から英語)でネイティブ並みのパフォーマンスを上げるには、まずは英語ネイティブであるChatGPTに英訳させることが絶対に必要。とは言え任せきりにするのはご法度で、一次翻訳後の工程ではあくまでも翻訳者が主体となって、ChatGPTを優秀なアシスタントとして使い倒すべきだ、というのが今段階の僕の結論(仮説)だ。要するに、英語を自分で書く力よりもむしろ、英語を理解し評価する能力の方が重要だ、ということだ。英語はまずChatGPTが書き起こしてくれるのだ。そこを出発点に、ChatGPTにあれこれ相談しながら、最終的に「自分の英文」を仕上げて行く。これはChatGPT以外の機械翻訳全般に当てはまると思う。「自分のケツは自分で拭かなければならない」のだ。


冒頭にも書いたように、僕は楽しみでブログの英訳をしている、というかChatGPTにさせていますが、週に何回かこれを続けているうちに、ChatGPTとの対話によって文章が磨かれていく経験をできるので、英語力増強に役立つ効果も実感しています。その結果として、僕はもともと和英の翻訳はマーケティングもしていないし、ほとんど受けていないけれども、今後和英翻訳の注文がもし来れば、ChatGPTによる英文の書き起こしとChatGPTとの対話を通じて、下手なネイティブよりもはるかに優れた英文を、かなり短期間で作成する自信はつきました。

翻訳者の皆さんは、優秀なAI翻訳の登場によって自分の仕事が奪われるのではないかといたずらに恐れるの必要はないと思います。あるいは機械翻訳など役に立たん!と忌避し、遠ざけるのももったいない。

「翻訳とは何か」という定義をもう一度考え、「翻訳の業務内容」「翻訳者の役割」を見直したうえで、創意工夫と努力を続ければ当面は生き残れるような気がする。というのがこの半年ChatGPTと「遊んできた」者としての実感です。

*↓はこのChatGPTを利用してこの記事を英訳したものです。

tbest.hatenablog.com

(後記)10月29日(この記事から2か月後)時点でのまとめを書きました。ご参考まで。

tbest.hatenablog.com