(以下は、2008年7月のJTFセミナーで公開した、ある翻訳者の方の事例です。15年前なので今もそのままの方法が使えるとは思えませんが、皆さんのマインドセッティング上のご参考になるかと思い、ご本人のご了解を得て公開します)。
当の本人からメールが来て、先週の金曜日にお会いしました。
色々な話をお聞きし、お話する中で感じたこと等を以下にまとめておきます。
(1)現状
翻訳業を始めてほぼ1年。数社の翻訳会社に登録してほぼ土日もなく連日仕事が入っている状況。ただし単価は高くない(お聞きした範囲ではとてもその水準では食べていくことは無理)。直のお客様はいない。
(2)この1年(上のやりとりは今年の1月だった)で彼女が励行したこと。
①現状になるまで履歴書をいくつも出し、トライアルを受け続けた。
②トライアルに合格した会社にはすべて菓子折りを持って出向いて挨拶をした。
①は、翻訳会社への継続的な営業活動(と言っても履歴書を作って、メールを送るだけですけど)を騙されたと思ってやってみたら効果があった。
②は、私も最初の数社までは励行していました(私は菓子折りまでは持っていかなかった)が、現在は怠けてやっておりません。ただ、私の場合もそうだったし、彼女も経験したのだが、わざわざ訪問のアポを取ろうとすると、かなり驚かれて、「そのような翻訳者は前例がない」と言われ、そこを押して訪問すると、「結構感動される」(少なくともそう見える)のは事実。つまり、やろうと思えばできることが実務翻訳者であれば恐らく誰もが眼にする書籍に書いてあるにもかかわらず、そこまでやる人は意外といない、ということを彼女の話を聞いて実感しました。
(3)いつの間にかやらなくなってしまったが改めて励行しようと決めたこと。
①時間管理をすること。
現状は、作業メモを取っているものの、「いつもより時間がかかった」「大変だった」「簡単だった」程度のものであり、自分の行うサービスに関する時間単価と作業スピードを見るための時間管理(○○案件に何時間何分かかったという記録)がなされていない。これは即実行する。
②フィードバックをもらうこと。
トライアルの時にはフィードバックをもらっていたのだが、現状は忙しいこともあり仕事を納品するとそれっきりになっている。フィードバックをもらって反省する努力が完全に頭から抜けている。これも即実行する。
(4)当面の行動目標
①横広がりを続ける。
翻訳時間または自分の得る翻訳料金に占める1社の占める比率を2割以下に抑えるために横広がりの営業を続け、1社依存(付き合っている社数は数社だが、現状は1社からの受注が大半を占めているらしい)をなるべく回避する努力を講じる。
②単価を上げる努力をする。これは同じ会社で単価上昇の交渉をするのは結構エネルギーを使うので、(2)①の営業活動を続けていく中で、履歴書の中に、あるいはトライアルに通ったら、希望単価を「現状より1円プラス」で書き込んでおく。
(5)その他
学究肌のご主人(サラリーマン)が翻訳に興味を示したとのことで夫婦で翻訳者になることについては私はわからないのでコメントは差し控えた。
(結局ご主人も脱サラをされ、お二人でプロの翻訳者をもう10年以上続けておられます。地方にお住まいで、7~8年ぐらい前から、何人かの翻訳者の方もお誘いして毎年夏に東京で食事会をしてきました。コロナ等あってここ2年ほどお会いしていません。再開を楽しみにしています)。