金融翻訳者の日記

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「二十年一昔」(9年前に書いた「新人翻訳者の心得」)

 

以下はほぼ9年前に、日本翻訳者協会(JAT)が年に1回刊行している『翻訳者の目線』の第1回に寄稿したエッセイ(そのまま)である(JAT会員は全員寄稿する資格がある)。あれから10年。無我夢中でした。

 

              「十年一昔」

今日(2012年8月31日)で、独立してからちょうど10年となる。正確には前の勤めを辞めたのが10年前の8月末で、準備期間を経て実際に翻訳業を開業したのはその半年後ぐらいなのだが、自分の中ではやはり今日には特別の感慨がある。

この仕事を始めた時に一つだけ決めたことがあった。

それは「知り合いを頼って自ら営業をしない」ということであった。

社会人として20年近くのキャリアがあると言っても翻訳者としては新米にすぎない。そんな人間が最初から「翻訳始めたんでよろしく~」とかつての同僚や上司を回ったら本当の営業力はつかないと思ったし、また翻訳の実力もないのに知り合いの「顔」で仕事を紹介してもらって、もしうまく行かなかったら紹介者の顔をつぶすことになると思ったからだ。

翻訳会社のトライアルを受けては落ち、受けては落ちしているうちに少しずつ合格率が上がっていった。それでも仕事にはなかなかつながらなかったが不思議と悲愴感はなかった。英語を読んだり訳したりすることが面白かったからだ。翻訳の勉強やらトライアルを受けることが楽しくて楽しくて仕方がなかった。朝から晩まで、1日も休むことなく半年間の努力を続けても全く辛くなかったので自分には適性があると思っていた。

そうして1年。2003年の8月中旬に家族で1週間旅行をして帰宅した日に留守電に入っていた翻訳会社2社からの翻訳依頼。

なぜかその日から仕事が途切れなくなった。そして今日に至る。

先日独立して初めてかつての上司に自分を売り込んだ。それは「その上司を頼る」というよりも、「自分を使った方がその会社に貢献する」と確信したからだ。

留守電をくれた会社とは数年つきあった後、なぜか疎遠になってしまったが先日あるきっかけでまた連絡がついた。担当者は変わっていなかった。来月訪ねる予定だ。

10年たって、ほんの少しだけ自信をつけて、次の10年を走ろうと思う。