金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

今のChatGPTと翻訳(2023年10月23日/2024年3月27日更新)

対英語の文脈で言うと、我々にとってのChat-GPT-4(生成AI)は、非ネイティブ部分を補う、つまり英語をネイティブ並みに理解し(英和の場合)、ネイティブ並みの英語を書く(和英の場合)ための最強ツールなのだ。僕はもはやこのことを疑っていない。

たとえて言うと、ChatGPTは、ネイティブ水準への「ラストワンマイル」に到達するまでの最強ツールと言える。しかしラストワンマイルは自力で走り切らなければならない、ということ。では、自力となる英語力とはどの程度か?僕のドタ感ではTOEICで900点ぐらいではないか。

要するに、Chat GPT-4の現在(2024年3月16日時点)の能力を前提にすると、
1.和英翻訳では
Chat GPT-4にまず訳させて(Chat GPT-4はこちらが得意。何しろ世界中のユーザーから鍛えられている英語ネイティブなのだ)、元の日本語の意図(僕たちはこっちが得意)を反映している英語かを見ながら訳文を調整していき、最後の仕上げ(語句の調整)はAIに任せる。

2.英和翻訳では
①まず自分が訳して(僕たち日本人は、母語である日本語を書く方が得意)、その訳文が原文の意味を正確に捉えているか、Chat GPT-4で確認しながら訳文を完成させる。

②日本語表現に迷った場合には、「表現の引き出し役」としてAIに案を出させてその中から原文の意図に最も近いものを選択する(下の「AI翻訳は秋元康さんの作詞に似ている」をご参照ください)、

のが「ネイティブ並みに書き、ネイティブ並みに読む」ためのベストの方法だろう。
なぜなら、Chat GPT-4は、日本語を完全には習得していない英語ネイティブなのだから。

今後、日本人の英和翻訳者にとって、英語のネイティブの優秀な和英翻訳者が英和翻訳における強力な競争相手になる可能性がある。何しろ英語ネイティブなのだから英語の意味の理解については彼らに一日の長がある。彼らはChatGPTで日本語表現部分を補って「日本語ネイティブ」に近い和訳を作り出せるようになるだろう。もっともChat GPTの日本語の能力は英語ほど鍛えられていないので、その実現にはまだ時間がかかるかもしれないが(下の「翻訳方向のグローバルスタンダードが変わるかも」(2024年3月6日)」をご参照ください)。

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English version はこちら(英訳はまだ昨年10月の記事の英訳なので、後程書き直します)。