金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

大いなる不安(2015年3月)

昨日午前中に某翻訳会社から連絡が入る。数カ月に1回依頼がある程度のいわば「断れる」先。「先日翻訳を依頼した案件、せめてプルーフリーデイングをしていただけると大変助かるのですが」原稿が来るのが26日午前10時。締め切り27日の午前9時とある。

6000ワードの契約書。想定作業時間6時間。すぐに断ろうと思ったが、私が断ると担当者が困るような文面についほだされ「26日は一日予定が入っている。27日の昼まで待ってくれれば・・・」「納品がお昼で・・・」「じゃあ11時に」と受けてジョギングに。
帰宅してから「文体、固有名詞、住所の取り扱い」を尋ねると「クライアントからは特に指示が来ていませんので、通常の契約書翻訳のルールに準じてくださればOKです」。

「その他の表記上の注意点」については「特にありませんが、翻訳文書の際の基本ルール (用語、スタイルの統一、数字、文字に誤りがないこと、など) は順守くださいますようお願いします」

ここで不安になる。そこで、
「やはり心配なので、次の点をお客様に御確認の上翻訳者と私にご指示願えますでしょうか?
(1) 固有名詞と住所の表記
(2) 「だ・である」調か「です・ます」調か
(3) その他表記上の注意はあるか?
とのメールを打つ。
もちろん一般的には(1)は原文で、(2)は「である調」が普通。ところが最近は特定の固有名詞を指定してきたり、「ですます調」にしてくれという指示をされるお客様が増えているのだ。
担当者は真面目な人で先方に確認をしてくれ、夕食後に以前に似た文書を訳したサンプルの英日を送ってくれた。結局私の心配は杞憂ということになったのだがもう一つのもっと大きな不安が頭をもたげる。

 多くの翻訳会社や翻訳者は、こうした基本情報を確認しないで、ただ仕事を受けているのではないだろうか?

(後記)6年前の書き込みですが、つい最近も某翻訳会社との間で似たようなやり取り(翻訳会社が上のような情報を確認していなかった)があって唖然としました(2021年3月24日記)。