金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「翻訳勉強会始まる」(2016年5月)

昨日は金子靖先生翻訳教室のOBOG勉強会(10-12期)の初回顔合わせと勉強会。登録者17名中10名が参加した。課題は本当は日曜日までにアップロードするはずが、いつも通り私は昨日の午後に取り組み、紙にして持ち込む。自己紹介の後訳文の検討会。今回は金子教室13期がまだ始まっていないので、9-11期の皆さんと同じくアルク翻訳大賞の課題を訳して集まった。

英語が簡単で誰でも意味がわかるのに日本語が思い浮かびにくいことがよくある。みんな状況は分かっているんだけど「あれ、なんて表現すればよいかな~?」短い課題だったのだが昨日にもそういう箇所があって、参加者のTさんがそこを見事に、つまり言われりゃ分かるんだけど、自分からは出てこないその状況をぴたりと表す表現で訳されていた。「どうしてその訳語が出てきました?」と質問する。金子教室との違いは、見事な訳をした本人に直接尋ねられるところだ。「いや~、ウンウンうなっているうちに出てきたんです」「そうですか~、出てきましたかぁ」「はい」

要するに普段の言語活動の賜物(差)なんだろうと思った。勉強させていただきます。食らいついていくぞ。

そんなこんなで2時間。今後の段取りやスケジュールをYoshiさんがまとめられている時にふと気がついた。「ねえYoshiさん、この勉強会って男性はYさんと僕だけ?」「そうですよ。え、鈴木さん今頃気がついたの?」「じぇじぇじぇじぇじぇ!!!!」別にどうってことないですが、そのことに気がついたら突然緊張してしまったウブな私であった。
勉強会の後は懇親会。今日もあるので「暴飲暴食しないように!」と許可が出ましたので、生ビール2杯であとは水を飲みました。

数値が悪くなった本当の原因

おはようございます。
[昨日の自分]
起床:4時10分
体重:78.0kg、体脂肪率23%、体脂肪量17.9kg
前日比:±0g、-1%、-0.8kg
ピーク:体重は79.0kg(3/6/16)脂肪量は19.9kg(12/7/14)
間食: 和菓子1個
運動: ウォーキング2.5キロ、サイクリング6.7キロ、8406歩
翻訳筋トレ:『国家は破綻する』『英語冠詞大講座』『誤訳の構造』学習の計20分。(
翻訳時間:7時間00分
就寝:22時40分


健康診断の速報値で血糖値がやや上昇したことが判明。食事も運動も相当気をつけたのになあ。
「お父さんの問題は間食と宴会です」と断言する妻。
「この前外食に行ったときもお父さんビール2杯目平気で頼むからあたしヒヤヒヤしたもの」「まあ2杯ぐらいいいじゃねーか」
「問題はね・・・あたしと一緒にいる時でさえ、外では気が大きくなってああいう食事をするのよ。宴会とかでガンガン飲んじゃってんでしょう!?」
「んなこたねえよ」
「絶対そう!!だって自宅の食事は何の問題もないのよ!!!あたし考えて考えて考えてつくってるんです」「はい」
「散歩も毎日行ってるよね、あたしと」「へい」
「Mさんに教わった大麦青汁も続けてるじゃない」「まあね」
「それにお父さん、食後にスクワットやっているでしょう」「えっへん」
「つまり、あたしの前ではちゃんとした生活を送っているです。お父さんは」「だろ?」
「でも数値は悪くなった」「はい」
「じゃ、考えられる原因は一つだけじゃん・・・あたしの見ていないところで暴飲暴食してるってことでしょーが!!!(怒)」

というわけで、この文章を読んでいる皆様、今後宴会で私が飲み過ぎてるなと思ったらどうぞご指摘くださいな(そんなむちゃくちゃ飲んでないと思うんだけどなー)。
・・・というわけで、本日も皆さんにとって素晴らしい1日となりますように!!

(後記)今朝の体重は71kgですから、この5年で7年減量したことになります。そして今は新型コロナウイルス感染症による非常事態宣言中で宴会はゼロ。非常に健康的な生活を送っているわけ(2021年5月3日記)

本の進捗(『ティール組織』の翻訳②、ほか)

某出版社へ「予定より4カ月遅れの目処」とのメールを打つ。毎月経過報告をしており、先方も僕がそこそこ忙しいことを理解しており特に驚きはないとは思う。きちんと報告しているのでご心配なくとも言われているが、そうはいっても心苦しい。仕事に手を抜いたつもりはないが遅れているのは事実。コツコツ誠実に進めるしかない。

6月に出る方の編集担当者の方から「鈴木さん、これは面白いです。仕掛けを色々考えます」とのメール。こちらは先方の都合で1年遅れたが、取り上げている企業等が最近日本でも知られてきた会社なので「けがの功名」でうまくいけばいいのだけれど。 

 

産みの苦しみ(『ティール組織』の翻訳) - 金融翻訳者の日記

 

(後記)1段落目が翻訳の遅れていた『ティール組織』について。二段落目が『Q思考』です。(2021年4月28日記)

名訳を暗記する(2016年4月26日)

ここ1カ月ほど取り入れている翻訳ストレッチのプログラムの一つを紹介。1回5~10分。
「日本語訳の暗記」
(1)用意するモノ
① 自分の分野の英語原本
② 自分が尊敬する翻訳者の訳本
(2)すること
①英文を読んで理解する。わからない単語、熟語を調べる。
③ 訳文を読んで英語の理解を確かめる。わからないことがあれば調べて疑問点をつぶす。
④ この訳文は英文を正確に訳した、素晴らしい日本語だなと思う部分の原文と日本語訳を自分の基準で、選ぶ。
⑤ 日本語訳を暗記する。ただし、丸暗記ではなく、英語は見てもよい。
⑥ 1日または2日後に、英語を見ながら覚えたはずの日本語を再現する。再現できなけば
(a) なぜ再現できないのか、自分がどこを間違える(覚えた日本語訳とどう違うのか:「てにをは」も含めて)かを考える。
(b) もう一度暗記し直す。
⑦ また1日または2日に、同じ箇所についてやってみる。
以上です。結構いろいろなことがわかってきます。僕は『国家は破綻する』でこれを始めて1カ月ぐらいたつかな。それまでは原文と訳文を両方音読するだけだったんですが。これを始めて1日に読み進めるスピードが格段に落ちたが、得たものは多いと思う。
お試しあれ。

(後記)「その場暗記」は今でもやることがありますが、「1~2日後に同じ箇所についてやってみる」というのはやっていません。今は原文と訳文を書き写して音読しています。

でも、「学び」に正解はないと思います。皆さんも、試行錯誤しながら自分に合った学びの方法を模索してみては?上はその一例ということで(なお、原文は「翻訳筋トレ」でしたが「翻訳ストレッチ」に書き換えました)(2021年4月26日記)。

 

翻訳会社を逆側から見ると・・・(2016年4月)

昨日の件にもう1点補足。

10年ぶりに1円の値上げをしてくれた翻訳会社HB社。僕はこの会社に10年間、お中元とお歳暮を送り続けている(前は毎回5~6社に送っていたが、取引がなくなったり、コンプライアンス上受け取れなかったと言われたりして、今はこの会社ともう1社の2社だけ)。関係は極めて良い。

僕はこの会社に発注したこともある。しかも2度。

いつもお願いしているネイティブ翻訳者が捕まらなくてやむなく和英翻訳をお願いしたのだ。発注すると連絡窓口が営業になるので、営業の体質やらレベルやらもある程度想像できる。当然その会社の和英の単価はわかるし、そこから英和の単価もある程度わかる(英和を発注したことはない)。

ちなみに、この会社に発注した時は、翻訳者としてアメリカ人のネイティブ・スピーカーを指定し、間にチェッカーを入れるのであればネイティブスピーカーに限ることを飲んでもらった。

業務プロセスは、私がネイティブ・スピーカーに直接発注している場合と同じ体制にした。ついでに品質管理は僕がやる(つまりチェッカーは不要だ)から翻訳料を安くしろと交渉したがそれはかなわなかった。結果としてかなり高くついたが、ネイティブ翻訳者→ネイティブチェッカー→僕という体制になったので、チェック体制はふだんより厚かったと思う(もちろんそれだけ僕が顧客にチャージした値段は高かった)。

こういった事情から、僕はこの会社の出せる精一杯の(英和の)単価があの金額(1円アップ)だったということを一応理解できる。この会社が僕の単価を飛躍的に上げるには、この会社の定価、つまり翻訳会社が最終顧客にチャージする料金を上げるしかない。そしてそれを実現するにはこの会社に営業力を強化してもらうしかないのだ。

この会社、一言で言えば品質管理も含め、制作サイドは極めて良心的だが営業力が強いとは言えず、顧客として見た対応力は柔軟性がない。営業に要望を伝えてから反応が返ってくるのに時間がかかるし、対応が洋服の上から背中をかかれているようでどこまでわかっているのかが今ひとつぴんとこない。発注したときも心配になって制作側のトップに直接「今、営業の○○さんに言ったのはこういう意味です」と伝えたぐらいだ(もっとも担当の営業一人で一般化は危険かもしれませんが)。

要するに(悪い意味で)官僚的なわけです。ただ、社員数が50名を超えてくると恐らくどこもある程度そうならざるを得ないのだろう。

この会社性格的には業界標準、商品の質はかなり上位に入るのではないか?この仕事、業界をマスで捉えると(顧客のニーズに対する対応スピードが遅すぎて)厳しいかもしれないが、個人にはまだまだ伸びしろ大きいなあと感じた次第。

単価交渉の成功要因 - 金融翻訳者の日記

けがの功名(2016年4月)

昨日の朝8時30分。

ソースクライアントSA社からマンスリーレポートの原稿が届くか電話が来る時間なのに来ない。ここからほぼ1週間かなりタイトなスケジュールになるので朝早くから「読み違え」で受けてしまった翻訳会社HA社の仕事をできるだけ進めていた。SA社は先日訪問して8%の単価値上げを受けてくれたところ。ご担当Mさんはまだ変わったばかりなので慣れていないのかな・・・。電話をする。

「おはようございます。あの、マンスリーレポートまだのようですが・・・」
「ああ、鈴木さん、今月は異例ですが、なぜか来週なんですよ。ほら、それでゴールデンウィークのスケジュールお伺いしたじゃないですか」

あ~そうだった。2週間ほど前に「今度のマンスリーはGWにかかりますが鈴木さんのご予定はどうなっていますか?」「関係ありませーん」どこのお客様にも同じ答えをしていたのでおぼえていなかったんだ。

「あ~了解しました。では来週!」

と電話を切って思い浮かんだ言葉は「けがの功名」。2度の読み違い(HA社は来ないと思っていたのが来た。SA社は1週間間違っていた)で一気に形勢逆転である。

つまり、元々はHA社、SA社、本A(訳す方)がこの1週間に集中していたものが、ここから1週間はほぼHA社の仕事と本Aだけに没頭できる。そして来週末からSA社と本B(ゲラチェックの本)に取りかかれる。この仕事の分散はデカい。

ルンルン気分で仕事をしているところに1本の電話。

「Lです。鈴木さんお久しぶりです」「お~!!!おひさしぶりです!!!」。

SA社を2ヶ月前に辞め、ヘッドハンティングで別の金融会社SB社に転職したLさんだ。

「鈴木さん、当社でも是非お願いします。仕事はまだありませんがいつでもお願いできるように守秘義務契約と条件契約だけ結んでおきたいのですが・・・」
「もちろんです」
「それで条件ですが・・・(一瞬緊張)もちろん、先日の鈴木さんからのお申し出の金額で契約させてください」
「あ、ありがとうございます!!」

普通は転職すると環境に慣れたり周りの様子を見たりするのに数ヶ月はかかる。SB社も超大手なのですでにつきあいのある翻訳会社もあるだろう。私に有利な展開になるとしてもそれが実現するのは早くて半年、場合によっては1年ぐらい先になるなと思っていた先から、転職したその月に連絡がくるとは。Lさん、相当高いポジションに三顧の礼で迎えられているのかも。そして「鈴木さんからのお申し出の金額」とはつまり、SA社の20%アップである。あ、ホントにLさん僕を獲りに来てくれたんだ、と思った。

SA社、SB社のレベルになると実は下請けに出せる。3年ぐらい前まで、お客様の了解を取って一人の方に某社のマンスリーレポートの下訳をお願いしていたことがある。その時の条件は投げ前のSA社と同じ。下訳の方にお支払いしていたのはその50%(それでも僕がまだつきあいのある外資系翻訳会社のレートと同じ)だった。もちろんワード単位で全部チェックし、修正記録を残したものを毎回返していた。翻訳会社として規模を拡大する意志は毛頭ないが、SB社の規模、そしてSA社も仕事が増えてくる可能性も考えるとマジで考えてもよいかもしれない。

・・・というわけで、本日も皆さんにとって素晴らしい1日となりますように!!

単価値上げ交渉 - 金融翻訳者の日記

単価交渉の成功要因(2016年4月)

 

今回、(結果として)3社の単価上げに成功した(と思われる)要因は、以下の5つだと思う。

① 相手から見て単価値上げを言ってきても不思議ではないタイミング(SA社は4年ぶり、HB社は10年ぶり)で持ち出したこと
② 言うべきこと、できないことははっきり述べたこと
③ ブラフを一切かけなかったこと。
④ ミスリーディングになるような言い方も含め、「嘘」を一切いわなかったこと。
⑤ 相手からの申し出に再交渉はしなかったこと。

① のうちSA社は(既に書いたとおり)、赴任直後のMさんに20%上げの要求はフェアじゃないと思ったので、最終的な目標は20%上げだが、少なくとも他社並みをお願いしたいと最初から折れた。なお単価交渉をしたのは(新規を含め)3社のみである。その他は時期尚早と考えて一切おこなっていない(例えばHA社は、僕の方でもっと実績をつまなければいけないと思っています)
② については、僕はツール技術がないのでパワポの転記は基本はお断りだと言ってある。
③ と④については、証券会社の業者間交渉ではしょっちゅうやっていたのでブラフは交渉術として否定はしないが、自分個人の営業スタイルとしては嫌いなので「損して元を取る」の精神で臨んでいる。
⑤ については、相手にも立場や事情があるので、「丁々発止」はしないと決めていた。最悪考慮してくれただけで感謝するつもりでした。

もっと時間がたって記憶が整理されればまた異なる感想が出るかもしれないが、とりあえずライブ感の残っているうちに今の肌感覚を書いておこうと思いました。ご参考まで。

(追加)
もう1点、どこまで効いたのかわからないが3社と接する上で意識し、実行したことを付記する。

⑥ 交渉過程で3社とも直接会っている。

まずSB社(Lさんの転職先)については、LさんがSA社を退職するとお聞きしたその日に「慰労会」を提案した(費用はこっち持ち)。そのくつろいだ席で「実はお辞めになっていなければSA社に単価上げの交渉をするつもりだった」と打ち明けた。
SA社は、後任のMさんに挨拶に行った。挨拶の席で単価の話を突然もちだすのはフェアではないと思ったので「ご挨拶方々、実は単価の値上げを交渉しようと思っている」と面談の趣旨を話してあった。

HB社(翻訳会社)は昨年、忘年会の日程が決まった後に、電話で「単価を上げてほしい。いくらとは言わない。誠意を見せてほしい」と話している。ただし忘年会では一切その話をしなかった。費用は向こう持ちだった(こっちは払うつもりでいたら役員が出てきて「どうぞどうぞ・・・」という話になった)。

(後記)

5年前のスタンスは一切変わっていません。

最近ある飜訳会社に対して「この単価ではその追加要求はとうてい受け入れられない」という趣旨の返信をした。

それは僕から言わせると発注側が僕の都合を無視したかのように、あたかも当然の要求のように言ってきたのに反発した「売り言葉に買い言葉」的な物言いではあった。ところが、このメールを「鈴木がいきない単価を倍にしろと言ってきた」と先方には解釈されてしまった。「いや、そういう意味では・・・」と思ったものの、「コミュニケーションの行き違いが生じた時は言った側の責任」との原則に基づいて、私が先方に謝ったという事例がありました。

その後に「今後はこの単価では受けられない」と明確に態度を表明しています(2021年4月23日記)