金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

単価交渉の成功要因(2016年4月)

 

今回、(結果として)3社の単価上げに成功した(と思われる)要因は、以下の5つだと思う。

① 相手から見て単価値上げを言ってきても不思議ではないタイミング(SA社は4年ぶり、HB社は10年ぶり)で持ち出したこと
② 言うべきこと、できないことははっきり述べたこと
③ ブラフを一切かけなかったこと。
④ ミスリーディングになるような言い方も含め、「嘘」を一切いわなかったこと。
⑤ 相手からの申し出に再交渉はしなかったこと。

① のうちSA社は(既に書いたとおり)、赴任直後のMさんに20%上げの要求はフェアじゃないと思ったので、最終的な目標は20%上げだが、少なくとも他社並みをお願いしたいと最初から折れた。なお単価交渉をしたのは(新規を含め)3社のみである。その他は時期尚早と考えて一切おこなっていない(例えばHA社は、僕の方でもっと実績をつまなければいけないと思っています)
② については、僕はツール技術がないのでパワポの転記は基本はお断りだと言ってある。
③ と④については、証券会社の業者間交渉ではしょっちゅうやっていたのでブラフは交渉術として否定はしないが、自分個人の営業スタイルとしては嫌いなので「損して元を取る」の精神で臨んでいる。
⑤ については、相手にも立場や事情があるので、「丁々発止」はしないと決めていた。最悪考慮してくれただけで感謝するつもりでした。

もっと時間がたって記憶が整理されればまた異なる感想が出るかもしれないが、とりあえずライブ感の残っているうちに今の肌感覚を書いておこうと思いました。ご参考まで。

(追加)
もう1点、どこまで効いたのかわからないが3社と接する上で意識し、実行したことを付記する。

⑥ 交渉過程で3社とも直接会っている。

まずSB社(Lさんの転職先)については、LさんがSA社を退職するとお聞きしたその日に「慰労会」を提案した(費用はこっち持ち)。そのくつろいだ席で「実はお辞めになっていなければSA社に単価上げの交渉をするつもりだった」と打ち明けた。
SA社は、後任のMさんに挨拶に行った。挨拶の席で単価の話を突然もちだすのはフェアではないと思ったので「ご挨拶方々、実は単価の値上げを交渉しようと思っている」と面談の趣旨を話してあった。

HB社(翻訳会社)は昨年、忘年会の日程が決まった後に、電話で「単価を上げてほしい。いくらとは言わない。誠意を見せてほしい」と話している。ただし忘年会では一切その話をしなかった。費用は向こう持ちだった(こっちは払うつもりでいたら役員が出てきて「どうぞどうぞ・・・」という話になった)。

(後記)

5年前のスタンスは一切変わっていません。

最近ある飜訳会社に対して「この単価ではその追加要求はとうてい受け入れられない」という趣旨の返信をした。

それは僕から言わせると発注側が僕の都合を無視したかのように、あたかも当然の要求のように言ってきたのに反発した「売り言葉に買い言葉」的な物言いではあった。ところが、このメールを「鈴木がいきない単価を倍にしろと言ってきた」と先方には解釈されてしまった。「いや、そういう意味では・・・」と思ったものの、「コミュニケーションの行き違いが生じた時は言った側の責任」との原則に基づいて、私が先方に謝ったという事例がありました。

その後に「今後はこの単価では受けられない」と明確に態度を表明しています(2021年4月23日記)