金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

翻訳会社を逆側から見ると・・・(2016年4月)

昨日の件にもう1点補足。

10年ぶりに1円の値上げをしてくれた翻訳会社HB社。僕はこの会社に10年間、お中元とお歳暮を送り続けている(前は毎回5~6社に送っていたが、取引がなくなったり、コンプライアンス上受け取れなかったと言われたりして、今はこの会社ともう1社の2社だけ)。関係は極めて良い。

僕はこの会社に発注したこともある。しかも2度。

いつもお願いしているネイティブ翻訳者が捕まらなくてやむなく和英翻訳をお願いしたのだ。発注すると連絡窓口が営業になるので、営業の体質やらレベルやらもある程度想像できる。当然その会社の和英の単価はわかるし、そこから英和の単価もある程度わかる(英和を発注したことはない)。

ちなみに、この会社に発注した時は、翻訳者としてアメリカ人のネイティブ・スピーカーを指定し、間にチェッカーを入れるのであればネイティブスピーカーに限ることを飲んでもらった。

業務プロセスは、私がネイティブ・スピーカーに直接発注している場合と同じ体制にした。ついでに品質管理は僕がやる(つまりチェッカーは不要だ)から翻訳料を安くしろと交渉したがそれはかなわなかった。結果としてかなり高くついたが、ネイティブ翻訳者→ネイティブチェッカー→僕という体制になったので、チェック体制はふだんより厚かったと思う(もちろんそれだけ僕が顧客にチャージした値段は高かった)。

こういった事情から、僕はこの会社の出せる精一杯の(英和の)単価があの金額(1円アップ)だったということを一応理解できる。この会社が僕の単価を飛躍的に上げるには、この会社の定価、つまり翻訳会社が最終顧客にチャージする料金を上げるしかない。そしてそれを実現するにはこの会社に営業力を強化してもらうしかないのだ。

この会社、一言で言えば品質管理も含め、制作サイドは極めて良心的だが営業力が強いとは言えず、顧客として見た対応力は柔軟性がない。営業に要望を伝えてから反応が返ってくるのに時間がかかるし、対応が洋服の上から背中をかかれているようでどこまでわかっているのかが今ひとつぴんとこない。発注したときも心配になって制作側のトップに直接「今、営業の○○さんに言ったのはこういう意味です」と伝えたぐらいだ(もっとも担当の営業一人で一般化は危険かもしれませんが)。

要するに(悪い意味で)官僚的なわけです。ただ、社員数が50名を超えてくると恐らくどこもある程度そうならざるを得ないのだろう。

この会社性格的には業界標準、商品の質はかなり上位に入るのではないか?この仕事、業界をマスで捉えると(顧客のニーズに対する対応スピードが遅すぎて)厳しいかもしれないが、個人にはまだまだ伸びしろ大きいなあと感じた次第。

単価交渉の成功要因 - 金融翻訳者の日記