偶然だが、昨日たまたま次のような二つのことがあった。
① 翻訳者Nさんがついに生成AIを導入
旧知の翻訳者Nさんが、ついに生成AIの有料プランを契約した。「どれを選べばいいかわからない!」と悩んでおられたので、「なんでもいいんじゃないの?」と軽く答えたところ、ChatGPTを選んだとのこと。ただ、どう活用すればよいのかピンとこないらしく、「経験してみればわかる」と言われても、何から始めればよいのか途方に暮れている様子が、チャットの文面から伝わってきた。
② 「翻訳カフェ」に参加
山田優先生が主催する「翻訳カフェ」に参加した。今回のテーマは「無法地帯だよMTPE:翻訳の新フロンティアか、カオスの温床か」(シーズン8, 第1回, 2025年3月10日)。知り合いの翻訳者マイアットさんが登壇しており、私が生成AI翻訳に関心を持っていることをご存知だったため、山田先生の許可を取って招待してくれた。
無法地帯だよMTPE:翻訳の新フロンティアか、カオスの温床か(シーズン8, 第1回, 2025年3月10日) - Translation Cafe
もちろん聴衆として参加したのだが、議論が「翻訳者は生成AIとどう付き合っていくべきか?」という流れになった際、突然「鈴木さん、どうお考えになります?」と話を振られた。何の準備もしていなかったため、しどろもどろな話になってしまった。終わってから「あれを話せばよかった、これを話せばよかった」と後悔した。
そのことについては別途書くつもりだが、山田先生から「鈴木さんはどういう過程を経て、生成AIに習熟されたのですか?」と質問があった。そのときは「遊びで使っているうちに、だんだん面白くなって…」と答えたと思うが、夜になってから「そういえば、プロンプトのあり方を意識するようになったきっかけがあったな」と思い出した。
私が生成AIを知ってからどう学んでいったかは、このブログに試行錯誤の過程をそのまま(赤裸々に)書いている(上のタイトルの下の「AI(機械)翻訳 」「ChatGPT]をクリックして、2023年の3月から現在まで順にお読みいただければ流れがわかります)。ただし、すでに200本以上の記事を書いたので、すべてを読むのは大変かもしれない。そこで、自分がプロンプトを学ぶのに効果があった(ある)と考えている練習方法を一つ紹介する。今朝Nさんにそのメッセージを送った後、ブログにも書いておこうと思った次第だ。
AI(機械)翻訳 カテゴリーの記事一覧 - 金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger
以下は今朝Nさんに送ったメッセージに若干加筆したもの。今後、「第2稿」「第3稿」とタイトルを変更しながら加筆修正していくつもりだ。
生成AI翻訳に慣れるための訓練方法
(実際に私が今も続けている方法)
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原文を用意する
- 自分の関心のある分野で、「一読するにはかなり難しい」英語の文章を選ぶ。
- ある程度まとまった記事やエッセイがよい。
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ChatGPTに1段落翻訳させる
- プロンプトの例:
鈴木:「今ロードした文書は二つある。一つはエッセイの原文のみ、もう一つは途中まで日本語に翻訳したものだ。原文と日本語訳が含まれていることを確認できるか?」
ChatGPT:「確認しました。アップロードされた文書は以下の二つです。」
鈴木:「次の段落を翻訳してほしい。参考として、先ほどアップロードした原文と、途中まで翻訳された日本語訳がある。一貫性を保った翻訳をお願いする」
- プロンプトの例:
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別の生成AI(例:Claude)に翻訳を評価させる
- 評価だけでなく、修正案も出させる
- プロンプトの例:
鈴木:「次の翻訳を批判的に評価し、必要があれば修正案を提示してほしい。修正部分とその理由を明確に示してほしい」
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Claudeの評価・対案をChatGPTにフィードバック
- ChatGPTに、Claudeの評価を踏まえた再評価を依頼する
- プロンプトの例:
鈴木:「Claudeによるあなたの翻訳の評価と代替案を熟読し、必要に応じて翻訳を修正してほしい。修正部分は理由を明確に示してほしい。ただし、Claudeはこの段落以外の文章を読んでいない(注:この一文を入れることで、Claudeの評価が前後の文脈を考慮していない点をChatGPTが理解し、翻訳の一貫性を保つことを促している。Claudeに全文を読ませない理由は、無償版では使用回数に制限があり、すぐにリミットに達してしまうためである。Claudeの評価を反映したChatGPTの修正訳を、いったん『初稿』とし、ここから訳文の修正を進めていく)
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修正後の翻訳を原文の下に保存する
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一文ずつ見直し、疑問点があればChatGPTに質問する
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翻訳を修正するたびに、ChatGPTに再評価・修正案を依頼する
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作業を段落ごとに繰り返す
- 第1段落が終わったら、第2、第3段落へと進める。
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翻訳の履歴をファイルに残し、翌日はそれをChatGPTに読ませて作業を続ける
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時間を決めて毎日少しずつ進める
- 10分、15分など、上限を決めて作業する。
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ChatGPTの履歴機能を活用し、プロジェクト名をつけて継続的に試行・修正を行う
このような作業を繰り返すことで、読めなかった英語が徐々に読めるようになるだけでなく、
- 自分のプロンプトのどこを修正すべきか
- どのような視点で問えばよいか
- 異なるAIに同じ質問を投げたらどうなるか
といったことも見えてくる。体験しながら理解を深めるには最適な方法だと思う。
ところで、上の2がMT、3以降がMTPEそのものであることにお気づきだろうか?
お試しあれ。
まとめ
仕事とは直接関係なくても、毎日少しずつ試行錯誤を重ね、納得のいくまでプロンプトを書き直して訳し直すことで、翻訳スキルだけでなく、多くの実践的なノウハウや経験が積み上がっていくはずだ。
本日はここまで、また時間ができたら第2稿を書き加えます。
(ご注意)生成AIの回答には、誤答(ハルシネーション)や情報の混乱(コンフュージョン)による不正確な内容が含まれる可能性があります。また、論理の不整合、事実誤認、情報の抜け落ちが発生する場合があります。回答を鵜呑みにせず、あくまで「考えるヒント」としてご活用ください