金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

独立した時に決めたこと(2017年12月3日)

独立した時に決めたことがある。

「当初数年は知り合いの伝手に頼らない」こと。

理由は2つ。
①ゼロから自分で仕事を増やす営業力をつける必要があると思ったから。
②実力もないのに紹介してもらって失敗したら紹介してくれた人の顔をつぶすことになると思ったから。

10年経った時にその封印は解いた。

セールストークは「僕を使うことが御社のためになる」だった。

仮想通貨に関するメモ(2017年11月)

最近、ビットコインに代表される仮想通貨についての新聞報道等がやかましくなってきました。

現段階では・・・

供給が統制されておらず、とりわけ種類が無尽蔵に増えているので需要が引っ込むと必ず暴落する、という話は良く出ています。つまり仮想通貨は今バブルです。素人が手を出してはいけません。

それ以外に、まだ意外に知られていない次のようなポイントがあるようです。

(1)仮想通貨では納税できない。現在あらゆる経済取引の中で最大のシェアを誇る単一取引は納税だそうです。どの国も、ハイパーインフレで困ったジンバブエなどの国を除けば、自国通貨での納税を求めるはず。つまりどの国でも、1年のどこかの段階で、仮想通貨から実物通貨に変換して納税というプロセスになるはずで、そのタイミングで仮想通貨への強烈な下げ圧力がかかる。

(2)仮想通貨には価格変動に伴う課税リスクがある。つまり価値が上昇するとキャピタルゲイン課税が課せられるはず(そのような法整備がなされるはず)。これは円の保有者が対ドルでどんなに円高になっても日本で円を持ち続ける限りキャピタルゲイン課税がかかることはないのと大きく違う。

この追加的な二つは念頭に置いておくとよいかも。

(後記)4年前に書いた記事です。その後仮想通貨に投資して「億り人」と呼ばれるようになった人たちの一部に、課金していなかったばっかりに莫大な課税が課せられ、にっちもさっちも行かなくなったという深刻な事例が出てきたようです(今年になってから関連記事を読みました)。(2021年11月30日記)。

「聞き流すだけ」では英語力は伸びない(同じビデオを600回観て聴いての結論)(2017年11月)

おはようございます。
 [昨日の自分]
起床:4時30分
体重:72.2kg、体脂肪率21%、BMI:24.1
ピーク:体重は77.2kg(3/6/16)脂肪量は19.9kg(12/7/14)
間食:チョコ2枚。
運動:11,666 歩
翻訳ストレッチ:「春秋・天声人語」『世紀の空売り』『第五 折々のうた』『俳句歳時記』『翻訳力錬成テキストブック』TOEIC関連テキスト勉強の計90分(TED590回)
翻訳時間:9時15分
就寝:22時20分

先週ぐらいから、ここ3カ月ほど散歩でずっと聴き続けているTOEIC問題集のテキストを持ち歩いて(現在40回ぐらい聴いています)英語を見ながらの暗記を始めた。
それであらためて気がついたことがあります。
上の「翻訳ストレッチ」で(TED590回)と書いてあるのは、確か昨年の1月ぐらいから聴いているTEDの↓のプログラムを、今日まで590回聞き流した、という意味です。
「人生を幸せにするのは何?最も長期に渡る幸福の研究から」by ロバート・ウィールディンガー

www.ted.com


内容が素晴らしいのでなるべく1日に1回は仕事の合間に聴くようにしていますが、ほぼ1回10分の同じプログラムを600回、つまり100時間近く聞き続けて実感するのは、「勉強としての聞き流しは身につかない」ということです。

むしろTOEICの勉強で同じ本のテキストの音声をシャドウイングしたり、間隔を開けてリピートする方が身についている様な気がします。

あたかも赤ちゃんが言葉を覚えるように・・・という宣伝文句あるじゃないですか。あれは好奇心旺盛な子どもが、1日24時間(というか起きている時間ずっと)飽きもせず、その言語に何年も何年も耳をさらし続けて初めて成り立つ教育法だと思います。
100時間同じYouTubeを聞き流して身につかない僕が言うんだから間違いない!!・・・と思うわけ。

では目に見えない効果は?つまり、もしかしたら同じ放送を600回聴いているために、少なくともここに出てきているちょっとした母音と子音の組み合わせやリズムに慣れたお陰で、ほかの英語を聴くときにいつの間にか聞こえるようになっているかもしれない可能性は?・・・・これは分かりません。

翻訳に活きるTOEICの勉強

(1) 翻訳をする。
(2) 原文と訳文を両方音読しながら見直す。
(3) 読み上げ用ソフトで英語を聴きながら訳文(日本語)を見直す。
(4) 日本語を音読する。

日本語の読み上げ用ソフトが使えなくなってから、ほぼ上のようなプロセスで翻訳を進めて納品していますが、ここに来て英語を聴きながらの訳文チェックが力を発揮しているとの実感は、気のせいではなさそう。

数字や時制もさることながら、英語を聴いていてその訳文がスッと頭に入らない、というか英語と日本語がすんなり頭の中でつながらないと何かが間違っていることが多いのだ。数字は当然としても、それは時制であったり、助動詞の醸し出すニュアンスであったり、場合によっては事実(訳抜け)のことすらある。

これは、僕は今年8月ぐらいからのTOEICの勉強を始めたことが大きいのではないか、という気がしている。TOEICの問題集の中にはかなりよくできたものがあって、スマホにダウンロードできる音声特典には、リスニングテストの音声は当然としても・・・

PART2応答問題の問題と正解だけの応答英文
PART3の対話文の一部台詞抜き(登場人物の台詞がポーズになっていて自分で暗唱または音読する。従って登場人物が三人の場合には、1つの問題でAがポーズの音声、Bがポーズの音声、Cがポーズの音声の3回分が入っている)に加え、
ReadingセクションもPART5とPART6は、穴埋めの正解の入った英文、
PART7(読解問題)は問題文の音声読み上げまで入っている教材まである。

しかも、旺文社とアルク社のリスニング用ソフト(無料)では、ピッチを上げずに1.1~2倍速で英語を聴ける(ただしアルク社は、アンドロイド用アプリではまだ倍速にするとテープの早回し状態になる。すでに申し入れ済みで対応してもられるとの返事をもらっている)。

要するにたった1冊の問題集で何度も、さまざまな角度から学べるような工夫が施されているのだ(ただし、すべての教材がそうだとは限らない。本の説明ページや各社のダウンロード用ページで、どのような内容のものがダウンロードできるかをチェックする必要がありますのでご注意を)。

僕は9月から、ある問題集1冊の音声を、毎日散歩しながら何度も聞いてシャドウイングしています。この問題集は、上に述べた機能がすべてついている『TOEIC(R) L&Rテスト 至高の模試600問』(アルク社)。今、30回目ぐらい。最終的には日本語を見て英語を言えるようになりたいので、一応100回を目安にするつもり。

単なる聞き流しと(聞き流しの問題点については、またの機会に述べる)、真似するつもり、暗記するつもりで聴くのでは天と地ほど効果がことなることを実感しています。

翻訳者はTOEICを受ければ良い、というのは青山ブックセンターで文芸翻訳の教室をされている金子靖先生(研究社編集部)のお勧めで、最初僕はピンとこなかったのだが、たまたま息子に煽られて受ける羽目になり、受けるからにはそこそこ準備はしようと勉強を始めてみると、TOEIC受験を意識した英語の勉強(というか訓練かな?)は、単に英語力を落とさないだけではなく、僕の翻訳業務に活きていると思う。

その一つがリスニングによるチェックの精度が上がる、とうこと。あと2つ、PART 5とPART6にも翻訳に役に立つ効果があるのだが、それはまたの機会に触れます。

 

https://www.amazon.co.jp/%E3%80%90%E6%96%B0%E5%BD%A2%E5%BC%8F%E5%95%8F%E9%A1%8C%E5%AF%BE%E5%BF%9C-CD-ROM%E4%BB%98%E3%80%91-TOEIC-R%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88-%E8%87%B3%E9%AB%98%E3%81%AE%E6%A8%A1%E8%A9%A6600%E5%95%8F/dp/4757428995

訳文から見える違和感(2017年11月)

最近、必要があって同じ原文(マクロ経済の関するレポート)に対するいくつかの訳文を読む機会があった。審査というと偉そうだが、ちょっと見てくれません?と頼まれたわけです。

原文は読めている・・・と言っても私が普段訳している英文の地の部分はTOEICレベルなのでさほど難しくない。そこに何が起きているかもまずまず理解できている。ところが訳語と訳文が今ひとつピンとこない箇所が何カ所かあった。

原文が読めていて、ルールもわかっているのに訳文がずれている・・・というのはどういうことかというと、例えば野球でいえば、ルールは知っているし、原文の意味も分かっている。ところが日本ではいつの頃からかストライクとボールの呼び方の順番が入れ替わっていたことを知らずに、「ツーストライク、スリーボール」と訳してしまうみたいな、ズレ(英語は元々、ボール、ストライクの順番だそうです。だから訳語だけが変わったことになる)。

この例は極端だけど、この仕事の難しさと面白さの一つは、時間とともに変わっていく(市場に関する用語は1~1年半ぐらいのタイムスパンで新しい用語がなじんでいく)言葉にどの程度追いつけるかではないかと思う。金融の、マクロ経済関連のレポートに関しては(ほかの分野もそうだと思うけれども)、日経新聞に日々目を通し、「モーニング・サテライト」をはじめとするテレビ東京系の経済番組の音に聞き耳を立てつつ、朝日新聞などの一般紙でその言葉がどこまで浸透しているか、を確認する、みたいな。こうしたことを日々続けていかないと、間違いなくズレる。

逆に言うと、訳文のちょっとした表現にその変化が見えないということはつまり、この仕事を最近請け負っていないと考えて良いだろう。それは断言できちゃう。

もっとも、ある言葉の変化を知らなかったことが単にそれだけで済む話なのか、氷山の一角なのかはその言葉のレベルにもよるし、ちょっとした違和感だけではわからないので、実際には職務履歴、翻訳履歴を出してもらったり、本人と直接面談したりということになるとは思う。今回の事例では、訳した人たちは実務経験もあるので訳す分野についての土地勘はある。僕の判定は、僕の感じた一部の違和感については「最近この手のものを訳していない」だけであって、慣れれば十分即戦力、というコメントを書いて出した。そこから先は僕の領分ではない。

では、先ほどの野球のたとえで言えば、もし「子どもの頃から野球大好きで・・・」と応募してきた翻訳志望者が「さあ、カウントはツー・スリーです」と訳したら・・・

あなた採用する?

翻訳者の履歴書 - 金融翻訳者の日記

「いい夫婦の日」に (2017年11月)

「お父さん、今日甘い物食べたでしょ」
それはいきなり、予想もしない方向から来た。昨日の夕食時、次男の誕生祝いの食事会の席だった。
「いえ、食べてません」
僕は手を口元に持って行くのをグッとこらえてこう答えた。
(3時間前にセブンイレブンで食べた大福餅の粉がまだついているはずはないじゃないか~)。
「いいえ、きっと食べたわ。間違いない」
「食べてません」
その時の僕は、きっと選挙直前のテレビ番組で野党にモリカケ問題を追及されて「丁寧に説明してきました」と答えていた安倍首相のように目が泳いでいたに違いない。
「でも、どうしてわかるの、お母さん?」と次男が口をはさむ。
本人は場を和らげるための一言だったろうが、私には後方から弾を撃たれたような気分である。(でもなんでバレたんだろう?)
「お父さんのまぶたがちょっと膨らんでいるのよ」
ひぇ~そう来たか~。
「お父さん、甘い物食べたり、お酒飲んだりした後はまぶたがちょっと膨らむのね。・・・見てごらん、膨らんでるでしょ、お父さんのまぶた」
「あ~そうかも・・・」(このボケ!)
私は正面を向いたまま身じろぎもしなかった(できなかった)。
万事休したか、と思った刹那・・・
「でもお父さん、昨日ゼミのOB会だったもんね。そこで飲んだんだよね」「お~、ま、まあな」
実は私は仕事があったので、乾杯時の一口しかビールを飲んでいない。しかもそれは前日の昼だ。
つまり、「今」のまぶたの腫れは’(もしそれが事実なら)、3時間前のイチゴ大福が原因なのである。
「そうよね、ビールよね・・・気をつけてよ、あんた普通の身体じゃないんだから」「は~い」
こうして危機は去ったのである。
おしまい。