金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

翻訳者の履歴書(2018年5月)

去年から今年にかけて、仕事で10通近くの(職務)履歴書に目を通す機会があった。そこで気がついたことを二つ。

1.8割がワード、2割がPDFだった。
2.パスワードをかけてきた人が二人いた(パスワードは別メールで送られてきた)。
3.PDFでパスワードをかけてきた人が一人いた。

以上からわかったこと二つ。

1.(職務)履歴書といういわば個人情報を他人にメールを送るのであれば、今の時代であればパスワード付きのPDF(あるいは後で痕跡を残さずに書き換えられない何かの媒体)で送ることを心がけるべきだろう。僕ならそうする。
2.しかし1は(少なくとも僕がもらった10数通の履歴書から見る限り)翻訳者の間では常識にはなっていない(らしい)。

なお僕は普段こういうことをしているわけではないので常識は知りません。就活学生には常識になっているのではないかな?

(後記)3年前の記事です。平均すると3年に1度ぐらい、翻訳者(翻訳志望者)の履歴書を見てくれと言われることがあります。この時は、トライアルと職務履歴書を見ました。

トライアルか職務履歴書かと言えば?

トライアルの結果を優先します。

その上で、その翻訳力のベースがどこにあるのかを見るために職務履歴書を見る感じ。金融翻訳者の翻訳志望者のものを僕が見るポイントを書いておくと(思いつくママなので優先順位ではありません)。

①最終学歴:偏差値の高い大学(学部)の卒業生が優秀な翻訳者とは限らないし、実際、全く使えない人(この方の場合は翻訳力というより人間性だったが)もいることは確か。ただし「学力のベース」を見る参考にはなります。

②学部:見るけれども、あまり参考にならない。

③翻訳者になる以前の職歴:結構見ます。金融機関の勤務経験は(部署にもよるが)期待高まる。あと営業は職種にかかわらず期待できる。金融以外の場合、どういう仕事の経験をしてきたのか、というよりも「何年社会人をやってきたか」「どれだけ経験に幅があるか」は見る。幅広い方がよいような気がするが、この職種でなければ、というのはないと思う。

④翻訳実績(経験者の場合):もちろん見ます。金融の場合、「某社のマンスリーレポートを〇年続けている」と書いてあれば相当目を引くと思う(こういう職務履歴を見たことはありませんが)。

⑤英検、TOEIC等の点数。英語力のベースとして見る。以前から書いているように、原則としてここが800点台前半だったらそれだけでアウト。その程度の英語力では、金融翻訳の仕事を持続的にできるはずがないから(誤解のないように書いておくと、TOEIC900点はあくまでも必要条件です)。でももしトライアルの結果が良ければ面談でなぜかを確認する。理由によっては採る場合もあり得る。

「英検2級」と書いてあったら?

僕はトライアルの結果を疑って書類で落とすと思う。プロの金融翻訳者への職務履歴書に「2級」と書く方の良識を疑うから。準1級もネガティブ(TOEIC800点前半と同じ)(ただし、僕はそういう例を見たことはありません)。

⑥留学経験:語学学校への1年未満の「お勉強」はアピールしない。

以上をざっと拝見し、トライアルの成績との間にかい離がありすぎる感じがしたら(要するに、トライアルの成績がかなり良いのに職務履歴書が余りアピールするものでなければ)面談してその理由を詰める・・・という段取りになるはずでしたが、この時はトライアルと職務履歴書で終了しました。

なお、職務履歴書の送り方や形式は、今はもっと変わっているのでしょう。昨年就職した次男の様子を聞いていると、会社のホームページ上に直接書き入れていくようです。実は僕もこの半年で1度、職務履歴書をPDFにして電子メールで送りました。「お取り扱い注意でお願いします」とは書きましたがパスワードはかけなかった。反省しています。(2021年5月19日)。

 

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