金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

今後の展開が実に楽しみな「趙治勲 私の履歴書」

こんなに面白い「私の履歴書」も久々かも。勝負事には関心がなく、囲碁も将棋もしらないウチの妻が夢中になっています。

ポイントは自分の失敗談やつらい話をありのままにさらしているからではないかな。

「練習碁を打っても先輩たちとのハンディは増えるばかり。田舎の天才少年が天狗(てんぐ)の鼻をへし折られ、そこから本気で頑張りだすという物語もあるが、ボクの場合はすっかりやる気を失ってしまった。幼すぎたのだと思う」(第1回「才能とトラウマ」)

「当時、我が家は経済的にも楽ではなかったので、口減らしの意味もあったかもしれない。」(第2回「韓国の『天才児』」)

「考えてみれば、これから小学校という年齢の子供を言葉もわからないところに連れていき、強い人と一緒に囲碁の勉強をしなさいというのだから、むちゃな話だ。しかも、レベルは段違い。例えは古いが、ゴルフのジャンボ軍団の中に幼稚園児が紛れ込むのと一緒で、飛距離が違いすぎて話にもならない」(第3回「公開対局」)

「あらかじめ断っておくと、入門してから4年ほどの間、ボクにはほとんど記憶がない。単に幼かったせいなのか、あるいはつらいことが多すぎて、無意識に記憶から消し去ってしまったのか――。後から聞いた話をつなぎ合わせてたどってみる。」(第4回「弟子スタート」)

「65年の3月、「4歳年上の弟弟子」が木谷道場に入ってきた。後にライバルとなる小林光一さんだ。

囲碁は黒石が格下、白石が格上と決まっているが、彼が入門した時の対戦では、ボクが白番で彼に勝ったらしい。腰におもちゃの拳銃をぶら下げて遊んでいるような小さな子供に負けて彼の負けん気に火が付き、半年でボクを追い抜いたとのことだが、当のボクには勝った記憶すらない。」(第5回 「やんちゃ盛り」)

・・・とまあ、こんな具合。率直で誠実で好感が持てる。でもどんなに失敗したって「私の履歴書」書く人なんだから、謙虚すぎるぐらいがちょうどよいのだと思う。
今月は、実に実に楽しみです。

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