金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「君、やさしいね」(2021年11月)

週に3~4回、ランチの後に散歩がてら近所の公園まで歩いて「鉄棒ぶら下がり」をしています。

今日も気候がよかったので出かけた。帰りにセブンイレブンでコーヒーでも買って帰ろうかと思ってね。

そうしたら公園で中学生ぐらいの男の子が一人でサッカーの練習をしていた。練習といってもドリブルをしながら壁打ちなんだけど、素人目にもかなり上手いと思ったな(そう言えば、学校はどうしたんだろうとは思わなかった)。

ふと気がつくと彼の後ろにインド人の男の子が突然走り寄っていった。幼稚園の年長~小学校低学年ぐらいだろうか。それで何か彼に向かって喋っていた。遠くにいたから声は聞こえなかったが、きっと「僕にもやらせて~!」と言ったのだと思う、インドの言葉で。

するとサッカー少年はボールを軽く男の子の方に転がし、人を案内するように手を伸ばした。「どうぞ、やっていいよ」てな感じじゃないかな。その頃には僕はぶら下がりを降りて彼らの方向に歩き始めていた。セブンイレブンの方向だ。

で男の子がボールを蹴る。跳ね返ってくる。サッカー少年は、もう一度やっていいよという仕草を見せる。男の子はボールを蹴る・・・するとそのまた後ろからその子の妹と思われる。年少ぐらいの女の子が、文字通り飛び跳ねながら近づいてきて、お兄ちゃんに「あたしもやりたいやりたい」と言ったんだろう。様子を窺う男の子。

サッカー少年は、今度はボールを少女の方に転がしてやり、「やっていいよ-」という仕草。

女の子はボールを転がし始めた。

あ~なるほど、言葉がわからない者同士はこうして知り合いになり、仲良くなっていくのかなあと思いながら彼らの近くを通りかかりざま、僕はその少年に

「君、やさしいね」と声をかけた(もちろん日本語で)。それだけ言って通り過ぎた。

ニッコリ笑ったつもりだがマスクをしていたし、僕の人相の悪さではそんなことはわからないだろう。

でもその少年は、どこか泣き笑いのような表情を見せて(ああいうのを「はにかむ」と言うのかしら)、男の子女の子とサッカーボールのパス回し(彼にとってはそれほどのことでもないだろうけど)を始めていた。

何かとてもよい光景を見たなと思ったし、僕も少しは彼の気持ちを後押しできたのではないか、などと一瞬ひとりいい気分にはなったが、待て待て余計な介入をしたのかなと思ってもみたり。