金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

『英文標準問題精講』と『英文解釈教室』(2020年9月)

『英文標準問題精講』
良い点:英文が標準的な名文。一編一編の文章を人生訓として学ぶこともできる。出典も全部ついている。翻訳も上手いので、模範解答をベースに英作文の教材にできるほど。
難点:英文の構造(読み方)の説明がほとんどない。模範解答と語句説明をよく読めば分かるはずだ、という著者の意図が分かるのだが、英文法をマスターしていない人間にはシンドイ。
(2020年11月10日追記)
『英文標準問題精講』を毎日一問ずつ、半年かかって「中期10日間」の練習問題まで(計160問)終えたところ。現時点で思うのは、これを一問当たり平均一時間以内で読み訳し(辞書使用可)自己添削し10回ずつ音読できた高校生は、英文解釈に関しては予備校が不要だということ。しかしそういう人はほとんどいないかも。
(2021年3月21日追記)↓これです。

『英文標準問題精講』を8カ月で終了 - 金融翻訳者の日記

(2021年5月3日追記)
稀代の名著『英文標準問題精講』には致命的な欠陥が一つある。それは「本の後ろに行くほど説明が簡略/省略される傾向がある」ということだ。だが、それを指摘する声はほとんど聞かない。
なぜか?
最後までたどり着く学習者がほとんどいないからだ。

『英文解釈教室』
良い点:英文の読み方の説明をこれでもかこれでもかとやってくれる。柴田耕太郎さんのノートもURL上で公開されており、英文の読み方がしっかり学べる(僕は、『英文解釈教室』にノートの内容を直接書き込んでいる)。

『英文解釈教室・改訂版』ノート 1 | 研究社 WEB マガジン Lingua リンガ

難点:英文そのものが難しいものが多い。出典がない(受験生には関係ないのかも)。英文の構造を学ばせるために原文を選んでいるせいか、書かれている英文の内容から学べる気はあまりしない。結果として構造が複雑なだけの悪文もあるような気がする。
理想的には、『英文標準問題精講』の原文を、『英文解釈教室』の手法で解説した参考書がよいと思うが、これは無い物ねだり。僕が教師なら『英文標準問題精講』を教材にして文法と読解を教える。レベル差は取り扱う問題数で分けられる(レベルの高いクラスは多く、低いクラスは少なく)と思う。模範解答付きの問題集をテキストにするのだから、取り扱えない問題は宿題にもできる。授業で分からない箇所を質問できる時間をつくってもよいだろう。何しろ超一流の英文の集積なのだから、読書の教材としても十分に使えると思う。先生方、ご検討を。
(余談)『英文解釈教室[改訂版]』の『別冊』は例題の解答(全訳)集なんだけど、実はその最後にIndex(索引)がついていること、そしてその直前に「Indexへの前書き」が書かれていることを知っている人はほとんどいないのではないかな。