金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

えもいわれぬ味(翻訳ストレッチの教材『英文解釈考』から)(2020年7月29日)

(原文)So much do I love money that I feel almost a different person when I have money in my pocket and when I have none.
(意味)わたしは金ってやつが滅法好きで、ポケットに金があるときと、ないときでは人間がちがった、と感ずる程だ。
(筆者の解説) 'I feel almost a different person' のところがえもいわれない味。'I feel almost as if I were a different person'と比べよ。'different'を使っても、'from'を続かせねばなどと堅苦しく考えないで'and'としてあるところもよく味わうこと。
(佐々木高政著『新訂 英文解釈法』(金子書房)P18)
(鈴木の感想) 上の文章にはこれ以外の説明はない。本書には「えも言われぬ」味を味わって欲しい、という表現がたくさん出てくる。「えも言われぬ」って「言葉でいいようもない」という意味(デジタル大辞泉)でして、大学受験生向けの英文解釈の参考書で、英文の解釈について「言葉で説明できない」ってありかよ!と今の受験生なら炎上必至と思われるが、ここが本書の「えも言われぬ」魅力でありまして、筆者は、「そこはたくさんの英文を何度も読んで自分でつかみ取ってくれたまえ、受験生諸君!」と言いたいのだと解釈している。
 先日『英文解釈考』を「人生訓を学ぶための本」と書いたのは、こういう意味でもあります。