金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「霞を食っては生きられないが夢は見続けたい」(2014年11月5日)

昨日は夕方まで仕事の後、ノンフィクション翻訳者忘年会の幹事会。打ち合わせの後飲みに行くわけですが、出版社の皆さんは「状況がどんどん悪くなっている」のを肌で感じるとのこと。本が売れなくなる中で出版点数が増えており、「仕事が大変になるが儲からない」と。

元々山岡洋一さんは「優秀な実務翻訳者をノンフィクションに呼び込みたい」との思いでこの会を始められたものの、今は環境が厳しすぎてとてもとても「どうぞおやりください」という雰囲気はない。「実務翻訳で食えているのなら、どうぞそれを続けて欲しい」というのが出版界での肌感覚とのこと。

そういえば山岡さんがお亡くなりになる確か1年前、「翻訳通信」100号記念の講演会で山岡さんが「皆さん、お仕事があればそれをきちっとやってください。今徒手空拳で出版に飛び込むことはお薦めしない」とおっしゃっていたことを思い出した。もっと前、5~6年前のJTF翻訳祭の講演で小川高義さん(『さゆり』)が「『さゆり』がベストセラーになったにもかかわらず私が未だに大学教授をやっている。それが出版界の現状です」と半ば自嘲気味に語っておられたことも。

そうは言ってもですよ。だけどだけど、やっぱ夢は持ち続けたい。自分の仕事を残したい。この国の文化に貢献したい!って気持ちは誰でもあるじゃないですか。「そのお気持ちもよーく分かります。我々も使命感でやっているんです」と某社Mさん。

憧れの村井章子さんに「僕なんか出版翻訳にかけられる時間は1日に2~3時間ですよ」と言うと「そりゃ大変よね~。調子が出てきた時に止めなきゃいけないんでしょ」と同情されるがしようがない。これが私の本業なのだ。霞を食っちゃ生きていけないのだ。その一方で出版に関わっていてこそ村井さんともお会いできる。これでヨシとする。納得。