金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

I feel almost a different person. の「えもいわれぬ味」:生成AIとの対話から

佐々木高政著『新訂 英文解釈考』には、英文の意味を解説する文章の中で「えもいわれぬ(味)」という表現が頻繁に出てくる。「えもいわれぬ」とは「言葉で言いようもない」という意味。だが、英文解釈書で「言葉で言いようもない」と「解説」されてしまうと身も蓋もなく、かつては諦めざるを得なかった。ところが、二回り目の学習を進めているうちに、生成AIが登場した。そこで、せっかくなので、再び出会った「えもいわれぬ(味)」について、その所以をAIに尋ねてみることにした。該当の英文は、同書の18ページにある。最も説得力のある回答を示したのはClaude 3.5だったので、プロンプトとともにここに紹介する。

プロンプト1:

So much do I love money that I feel almost a different person when I have money in my pocket and when I have none.という英文について質問します。佐々木高政という有名な英語学者は「 I feel almost a different personという表現がえもいわれぬよい味」と言っており、これをI feel amost as if I were a different personと比べよといっています。この二つの文のどこが違うのか。またI feel almost a different personがなぜ「えもいわれぬ味」なのかを説明してください

Caude 3.5: はい、この二つの表現の違いと、佐々木高政先生が指摘する「えもいわれぬ味」について分析していきましょう。

二つの表現を比べてみます:

1."I feel almost a different person"

  • 直接的な表現
  • feelの後に直接名詞(a different person)が来ている
  • お金の有無による自分の変化を、まるで物理的な変身のように表現している

2. "I feel almost as if I were a different person"

  • 間接的な比喩表現
  • 「まるで〜であるかのように」という仮定的な言い方
  • 文法的により整った表現

佐々木先生が「えもいわれぬ味」と評価した理由は、おそらく以下の点にあると考えられます:

1. 文法的な「正しさ」を超えた表現の力:

  • 通常、feelの後には形容詞や「as if」などが来るのが標準的
  • しかし、ここでは直接「a different person」と言い切ることで、変化の劇的さをより強く表現している

2. 表現の直接性:

  • 「まるで〜のようだ」という比喩表現を使わず
  • お金の有無による変化をより直接的に表現している
  • それによって、話者の感覚がより生々しく伝わってくる

3. 心理状態の巧みな表現:

  • お金の有無による自己認識の変化があまりにも大きいため
  • 通常の文法的な枠組みでは収まりきらない
  • その「収まりきらなさ」自体が、変化の大きさを表現している

つまり、"I feel almost a different person" という表現は、文法的な慣習に従わないことで、かえって人間の複雑な心理状態をより適切に表現することに成功しているのです。これは、単なる文法的な正確さを超えた、文学的な表現の妙味であり、それゆえに「えもいわれぬ味」と評価されたのだと考えられます。

プロンプト2:以上を踏まえて先ほどの英文を分かりやすい日本語に訳してください。

Caude 3.5: お金の有無による話者の内面の劇的な変化を表現した文章ですので、その感覚が伝わるように訳してみましょう:

「私はお金が大好きで、懐に入っているときと一銭もないときとでは、まるで別人になってしまうくらいなのだ。」

この訳では以下の点に気を付けました:

  1. "So much do I love money" の強調された語順を「大好きで」という表現で示す
  2. "I feel almost a different person" の直接性を活かすため、「まるで別人になってしまう」という表現を選び、「〜かのように感じる」という間接的な言い方を避けた
  3. 「くらいなのだ」を加えることで、話者の感覚の強さを表現
  4. 「懐」という言葉を使うことで "in my pocket" の具体性を保持
  5. "when I have none" を「一銭もないとき」と訳すことで、対比をより鮮明に

    しました。この対比の効果について:

    「懐に入っているとき」と「一銭もないとき」という対立的な表現
    「一銭も」という強意表現を使用することで、完全な無一文状態を強調
    「入っている」と「ない」という動詞の対比
    これらの対比的表現によって、お金の有無による心理状態の劇的な変化をより鮮明に描き出すことができました。(ここまで)

    参考書や文法書で疑問点にぶつかったときに、生成AIに尋ねるのはかなり有効な方法だと思います。複数の生成AIの見解が異なる場合は、それらを二つまたは三つ間で「対戦」(比較・対照)させることで、多くの学びが得られることを実感します。
    以上ご参考まで。

    (ご注意)上の記事は、私と生成AIとの対話内容をそのままコピーしたものです。生成AIの回答には、誤答(ハルシネーション)や情報の混乱(コンフュージョン)による不正確な内容が含まれる可能性があります。また、論理の不整合、事実誤認、情報の抜け落ちが発生する場合があります。回答を鵜呑みにせず、あくまで「考えるヒント」としてご活用ください。