金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「渥美清は、元気かい」

以下は、2022年9月17日の朝日新聞朝刊に載った山田洋次監督の文章から。寅さんシリーズが7~8作目まで来た時に、まだ続けるかどうかを尋ねた山田監督に渥美清さんがこう答えたそうです。

「5作目を封切った頃、私が東京駅のホームで遅い時間に電車を待っていたら、酔っ払ったサラリーマンが通りかかり、私を見てにこにこ笑いながら『いつも寅さん、見てるよ』と言った。私は『ありがとうございます』と答えたけど、その彼が去り際に『渥美清は元気かい』と言う。『元気ですよ』と答えたら『よろしく言っておいてくれよ』と言って機嫌よく行ってしまった。私は2作目、3作目とこのシリーズが評判になり出した頃は、若い娘なぞが私を見てクスクス笑って『あら寅さんだ』などと言ったりすると、内心、あれは役として演じているのであって、本物の渥美清はあれほど馬鹿じゃない、新聞ぐらいちゃんと読んでますよと思ったりしてたけど、東京駅でそのサラリーマンに会った頃から考えが違ってきた。この役をいい加減に演じていると、田所康夫(鈴木注:渥美清さんの本名)は車寅次郎に追い越されるぞという不安のようなものを感じるのです」

あまりにいい文章で、残しておきたいと思ったので書き写しました。全文は下記をどうぞ。

www.asahi.com