金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

「サラリーマンは、普段はイエスマンでいい」:12月22日に出会った言葉

出会った言葉:
「社長になってしばらくたつと知識がついて、いろいろなことに自分の考えを持つようになります。そうなると、自分の考えと同じことを言う人ばかりを評価するようになって、違う意見の人の話を聞かなくなる。それは仕方のないことです。しかし、そうなるということはよく覚えておいてください」。谷井昭雄さん(当時パナソニック相談役)
(澤部肇 私の履歴書「ロシア債 甘かった形だけの処分案 大先輩に社長の心得教わる」 2019年12月21日付日本経済新聞
*サラリーマン時代、僕は比較的自分の思ったことをなるべく誠実に相手に話すことをよしとするタイプで、上司に対しても間違っていると思ったことは間違っていると直言すべきだと信じて行動していたが、課長になりたての頃に別の部署の6年先輩と飲みに行った折、次のように諭された。

「僕は基本イエスマンだね」その言葉を聞いた僕は、それを言った人が人格識見ともにとても尊敬していただけにかなりビックリして、これはこの人に対する意識を改めなければならないと思って恐る恐る尋ねてみた。「ど、どうしてですか?」

「いいか、上司が判断に迷うことの大半ー8割ーはまず正しいと思っていい。ウチの役員だぞ。そこは軽く見ない。仮に僕と意見が異なっている部分があるとしても、たいしたことじゃない。いいじゃないか、どちらでもよい時は。『〇〇専務のおっしゃる通りです』と上司を立ておけばいいんだよ」。

唖然とする僕を前に彼はにやりと笑ってこう続けた。

「そうすれば上司の覚えめでたいから僕の評価も上がるだろう。そこが付け目だ」「えぇ・・・?」

「さっき僕は『8割は正しい』と言ったね。いや、9割かもしれない。しかし残りの1割、君が絶対譲れない、明らかに上司が間違った判断をしていると確信できる重大局面線があるかもしれないじゃないか。そこで毅然と言うんだ。『それは違うと思います』とね」「・・・」

「そこでこそ使うんだ。日ごろのおべんちゃらで培った『信頼』を」。

僕にはこういう機会が訪れることなくサラリーマンを辞めましたが、今でもその時の先輩の顔と口調を覚えている。会社全体の予算を扱う部署の次長さんだったからかなあ、策士ではありましたが、いい人でした。仕事に信念があった。引用句を読んで久しぶりに思い出したので書き留めました。サラリーマンの皆さん、頑張って!

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