金融翻訳者の日記/A Translator's Ledger

自営業者として独立して十数年の翻訳者が綴る日々の活動記録と雑感。

夫婦の財布

他のご家庭の経済生活についてこれまでで最もびっくりした話は、

「ウチのかみさん、俺が会社からいくらもらってるかを知らないんだ」
という当時の直属の上司から聞いた話でした。
結婚して確か6~7年目ぐらいだったかなあ。

「いや生活費をね、決まった額を毎月渡しているんだ」

もう腰を抜かすほど驚いて、「え~!!!じゃ、お子さんの学費とか旅行の費用とかは?」「もちろん別に渡す」。

「それで奥さん文句言わないんすか?」と尋ねたら
「そっちの方が楽らしいんだよ。もらったものを全部使えるから」

な~るほどと納得したような、しなかったような。

実は学生時代にこれと似たような話をゼミのI先生から聞いたことはあった。

I先生が自分の恩師のご自宅で忘年会をやったとき、年末賞与の話が出たそう。で、I先生が宴の半ばでトイレに立ったときに恩師の奥様が後をついてきて、「あの~Iさん、国立大学の教授ってボーナスが出るんでしょうか?」と尋ねられたそうです(どう答えたかは聴かなかった)。ただ僕はこの手の話(奥さんが旦那さんの給与やボーナスの話を知らない)というのは、所詮大学など「世間から遠い」方々の話かと思っていました。

だから自分の直属の上司がまさかまさかの「そういう」ご家庭だったって知って心の底からビックリしたわけです。帰宅してその話をすると妻も驚愕して「世の中にはそんなご家庭もあるのね~」と言っていたのだが。

実はその数年後、さらに驚愕の事実が判明する。

私の実の妹(フルタイムの会社員から結婚後に専業主婦へ。ただしパート勤務を続けている)の夫婦も、妻の妹(産休に入るまでフルタイムの仕事を続け、子育てが終わった後にパートで復帰)の夫婦も、夫の給与明細を見たことがない。つまり夫がいくらもらっているかを知らなかったってことだ。

ウチの親戚では、我が家が少数派だったってことっすよ。

その後色々な友人たちに尋ねたら、ウチみたいに給料明細書をそのまま奥さんに渡している(あるいは公開し合っている)夫婦は半々ぐらいだったかなあ。いや、やや少数派だったかも。何しろいろいろなご夫婦がいらっしゃいました。ウチと同じようなご家庭はもちろん、実(義)妹のような夫婦、共働きでそれぞれの口座はもっているのだけれど、共用の「家族口座」を決めて、それぞれ決まった額をそこに入れているご夫婦もいた。
ウチの例を話すと「鈴木さん、それでどうやって夫婦でプライバシーを保てるわけ?」と詰められた(?)こともあります。

よく、ドラマのシーンなんかで「このネックレス、主人に買ってもらったの」な~んてセリフよくあるじゃん。ウチは実感が涌かないのよ。だって財布が一つだから。

大ざっぱにいうと、僕が外で働き(含む翻訳業)、妻が主にウチで働き(主婦業と当社の経理)、という役割分担があって、入ってきたお金は「鈴木家のもの」という感覚でズーッとやってきてるんです。どっちが稼いでいるとかいないとかいう感覚はあまりない。あえて言うと、二人で稼いでいる感じ。

一応会社組織にしてるけど、僕自分の給料覚えていませんもの(相談はされますけど、興味ないんですぐ忘れる)。別にウチが金持ちだからじゃなくて、私と妻の合計で給与をどうする、という相談さえしておけば、後の分配は、ハッキリ言って(僕には)どーでもよい(税金上は何か違いがあるらしいので妻は気にしていますが)。会社の代表者は僕なのでここぞという時には僕が銀行に行かなきゃいけないんだけど、下準備や交渉はぜーんぶウチのがやって、印鑑を押す時に電話で呼ばれて押しに行く感じです(銀行は家から歩いて10分)。

お互いの財布も完全オープンで、「お~い金ないんで(妻の財布から)2万円持ってくぞ」「はーい」(逆もあり)ってな感じです。

ちなみに我が家は、独立した後はウチのが経理をやっているので全部把握しているのは当然として、サラリーマン時代の結婚後16年間の僕の給与明細書を全部保管してあるはず。